テンペラ
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テンペラは水性と油性の成分が混合した乳濁液を媒剤とする絵画技法。テンペラは混ぜ合わせるという意味のラテン語Temperareを語源としている。乳化剤として鶏卵を用いる卵テンペラ、カゼインを使うカゼインテンペラなどの処方がある。西洋の絵画で広く行われてきた卵テンペラには、油彩画のような黄化・暗変を示さないという特徴があり、数百年前に制作された作品が今日でも鮮明な色彩を保っている。
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[編集] 卵テンペラ
代表的なテンペラ技法が卵テンペラである。絵具が乾けばすぐに塗り重ねていくことができ、数日間乾燥すると水に溶けなくなる。板にボローニャ石膏で下塗りをしているものが古典的なテンペラ画技法であるが、近代になって油彩の仕上げに卵を混入させたものもテンペラ画と通称で呼ぶようになった。これは卵黄にレシチンという乳化作用がある物質が含まれているため、水と油を混ぜてもマヨネーズのように分離しないことを応用したものである。
[編集] 卵テンペラの様々な技法
- 卵黄のみ(卵黄+顔料)
- テンペラグラッサ(卵黄+油+顔料)
- 混合技法メディウム(卵黄+油+水+顔料)
[編集] 媒材の処方
14世紀のチェンニーニの技法書には、卵黄1個に対して等量の水という処方が記されている。時代が下ると、油脂や樹脂の添加が行われるようになった。マックス・デルナーが『絵画技術体系』で「水と混ぜられる卵脱脂テンペラ」として示した処方は以下のとおり。
- 全卵
- 卵と等量の油、または油と樹脂ワニス
- 卵と等量から三倍程度の水
[編集] カゼインテンペラ
カゼインは絵の目止めやメディウム、接着剤として用いられ、乳化作用をもつ。乾燥後は耐水性。温度に左右されにくく、液状だとアルカリ性だが、乾くと中性に近くなる。だが加熱したり水に入れても溶けず、アルカリ溶剤(アンモニア水、水酸化ナトリウムなど)に溶かして糊上にして使用する必要がある。膠テンペラに比べ、若干脆いが色は鮮やかである。
[編集] 膠テンペラ
卵やカゼインと同じように、乳化作用を持つものとして膠があげられる。ただ耐水性ではなく、亀裂を生じさせやすいため単体では殆ど用いない。添加物として明礬と水と膠を混ぜて作るドウサ水(戻り止め)や油(亀裂防止)などを加えて使用する。
[編集] テンペラによる絵画作品
イタリアルネサンス早期のジョットからフラ・アンジェリコ、ボッティチェリなどがテンペラによる作品を残している。油彩画の出現以来テンペラ画は絵画技術の表舞台から退いていたが、20世紀に入ると油彩との併用による混合技法を試みるパウル・クレーやカンディンスキーのような画家が現れる。アンドリュー・ワイエスの描いた純然たるテンペラ技法の作品により、テンペラは絵画技術としてさらに注目を集めるようになった。
[編集] 参考文献
- マックス・デルナー著、ハンス・ゲルト・ミューラー改訂、佐藤一郎訳『絵画技術体系』、美術出版社、1980年10月、ISBN 4568300347
- 佐藤一郎著、『絵画技術入門』、美術出版社、1988年11月、ISBN 4568321468