スナッチャー
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スナッチャー(SNATCHER)は、1988年にコナミから発売されたアドベンチャーゲーム。小島秀夫の初期作品。
架空の近未来を舞台に展開されるサイバーパンクアドベンチャーである。
目次 |
[編集] 概要
当時までのアドベンチャーゲームに見られた「単純なコマンド選択」だけではなく、謎解きとしてキーワード入力を求めたり、ストーリー進行に併せて簡単なガン・シューティングシーンを取り入れるなど、随所にプレイヤーを飽きさせない工夫・演出・表現が施されている。
後にメタルギアソリッドシリーズで有名となる小島秀夫が制作指揮をした初期の作品であり、映画『ブレードランナー』をモチーフとしたサイバーパンク世界が舞台となっている。小島作品としては、映画的演出を導入した最初のゲームであり、そのゲーム設計や表現は後に発売された『ポリスノーツ』の原型ともなった。
アドベンチャーゲーム史上における名作とも言われ、ファンの間では今なお評価が高い作品である。
[編集] 各機種発売日
- 1988年11月 PC-8801MkIISR以降版
- 1988年12月 MSX2版
- 1990年 MSX2版SDスナッチャー
- 1992年8月7日 スナッチャーPilotDisk (下記PCエンジン版の体験版、宣伝)
- 1992年10月23日 PCエンジン版
- (1994年 ヨーロッパでMega CD版が発売)
- (1994年 北米でSega CD(北米版メガCD)版が発売)
- 1996年2月16日 プレイステーション版(PCエンジン版からの移植)
- 1996年3月29日 セガサターン版(PCエンジン版からの移植)
[編集] ストーリー
2042年の神戸(ネオコウベシティー)を舞台に、人間を殺しその人物と入れ替わって潜伏している正体不明のアンドロイド「スナッチャー」と、それを追う捜査官(ジャンカー)である主人公ギリアン・シードとの戦いを描く。
[編集] 寄り道
小島作品の特徴である、ゲームクリアとは直接関係の無い『寄り道』的なイベントはこのゲーム内でも随所に見られる。 主なものに、『うどん屋』『占い師』『ガシャポン』『エロビデオ』『ネオコウベ焼き』『経費で暴飲暴食』等がある。 いずれのイベントも、特定の場所であたりを調べる・見る等のコマンドを繰り返し選択すると、イベント選択のコマンドが新たに出てくる。
また、それらのイベントをクリアすると、それに応じて他の登場人物のリアクションに微妙に変化が置き、それが隠しイベント探しを面白くした。一例を挙げると、最初のミッションで廃工場に入った直後の場面で『ハエ』を敵と誤認するイベントを出すと、それ以後のイベントで『ハエ』に絡んだ台詞が表示されるようになる。
一度ゲームをクリアした者でも、これらのイベントを見つけることを目的に、何度もプレイする面白さを見出せた。
またコマンド選択の際、明らかにゲームクリアとは関係のない『おもしろコマンド』を表示し、プレイヤーにあえてそのコマンドを選択させるよう誘導した。
主なものに 『ヒロインのスリーサイズ入力時に、とんでもない数値を入力』 『男の証明』 『慰み者にする』等(上記の内容はPCエンジン版以降で確認)。
[編集] 登場人物の音声による警告
通常のPCエンジンのCD-ROMは、誤ってCDプレーヤーなどのオーディオ機器にセットした場合、『このCDはゲームソフトです』と音声による警告がされるが、本ゲームのPCエンジン版のCD-ROMには、ギリアンとメタルギアによる漫才風の警告メッセージが収録されている。通常通りCD-ROMを使用している限り、まったくこのメッセージを聞く機会はないので、この事を知らない者が意外に多い。(尚、サターン版にも同じメッセージが収録されている・PS版は未確認)
[編集] 主な登場人物
声優の声が収録されたのはPCエンジン版以降。
[編集] JUNKER所属
- ギリアン・シード (声 : 屋良有作)
- 本作の主人公。スナッチャーの特定、排除を行うランナー。彼がネオコウベシティに配属されたときからストーリーが始まる。
- メタル・ギアmk-II (声 : 小山茉美)
- ランナーをサポートする小型のナビゲーターロボット。
- ミカ・スレイトン (声 : 冨永みーな)
- あらゆる情報の処理を担当するオペレーター。
- ベンソン・カニンガム (声 : 納谷悟朗)
- JUNKERの指揮をとるヘッド(リーダー)。
- ハリー・ベンソン(おやじさん) (声 : 槐柳二)
- 備品の開発、整備を行うメカニック。
- ジャン・ジャック・ギブスン (声 : 井ノ口勲)
- ギリアンの同僚となるランナー。
[編集] その他
- ランダム・ハジル (声 : 塩沢兼人)
- バウンティーハンター(賞金稼ぎ)。
- ジェミー・シード (声 : 井上喜久子)
- 別居中のギリアン・シードの妻。
- カトリーヌ・ギブスン(声 : 富永みーな)
- ジャン・ジャック・ギブスンの娘。
- イザベラ・ベルベット
- ホログラム・ビジョンの人気女優。
- ナポレオン(声 : 納谷悟朗)
- 情報屋。
[編集] 移植版比較
[編集] 移植の背景
昔のゲーム制作は供給対象ハードウェアの機能的制約に縛られることが常であり、スナッチャーの制作もその影響を受けている。そのため同じ作品の移植とは言っても、移植ごとにその作品内容は異なっている。
[編集] 比較
- PC-8800シリーズ、MSX2版
- 開発期間や供給媒体容量の問題から、後半部分を大幅にカットされ、ACT.1とACT.2のみの未完の作品となってしまった。
- SDスナッチャー
- スナッチャーのリメイクであり、オリジナル版では存在しなかった最終章であるACT.3が存在する。しかし、キャラクターを2頭身のSD(スーパーデフォルメ)化し、ロールプレイングゲームという異なる表現形態を採って製作されたため、ファンからは番外編的扱いを受けている。
- PCエンジン版
- CD-ROM²用ソフトとして、ACT.3までを収録した完全版のスナッチャーとなる。(ただし、先行して発売されたSDスナッチャーのACT.3と比較すると大幅にシナリオ内容は削減削減されている。)CD-ROMの特性を活かし声優による音声が追加され、より映画的な演出が可能となった。後の移植作品(下記参照)と比較しても、PCエンジン版がもっとも優れていると評価する声が多い。また単価が安いCD-ROMを生かした販売戦略として本製品完成に先駆けてパイロットディスク(体験版、設定資料などを収録)が制作されたのも特筆する点である。後の小島作品である『ポリスノーツ』でも、3DO版でパイロットディスクが制作された。
- プレイステーション、セガサターン版
- 基本的な内容はPCエンジン版と同じだが、ムービーなどが追加されている。しかし、監督の小島秀夫をはじめとするオリジナルのパソコン版・PCエンジン版のスタッフはこの移植に関わっていないため、PCエンジン版を経験したプレイヤーを中心にCD-ROMからの読み込み時間の長さや変更されたムービーなどを批判された(ただし、PCエンジン版を経験していないユーザーからはそれなりに高評価を得ている)。この時期の家庭用ゲーム機には散見されることであるが、旧世代のコンシューマ機などからの安易な移植作品が多く、完成度が低かったり、移植時に作品のボリュームアップとして上げ底的に要素が追加され、作品のコンセプトやリズムを壊してしまうことが多かった。
- ちなみに、プレイステーション版はハードメーカーによる残酷描写への規制のため一部のシーンにモザイクが掛けられている。
- このモザイクはパソコン版やPCエンジン版を知る本ゲームファンを失望させる結果となったが、それと同時に、当時はテレビゲームへの社会的批判が高まりつつある時代でもあった。モザイクを掛けるという行為は、徐々に高まるテレビゲームへの批判に対し、テレビゲームの社会的地位を向上させるための措置であったと言える。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- KONAMIゲームソフト (スナッチャーについての記述無し)
カテゴリ: コナミのゲームソフト | サイバーパンク | アドベンチャーゲーム | MSX/MSX2用ソフト | PCエンジン用ソフト | プレイステーション用ソフト | セガサターン用ソフト | 1988年のコンピュータゲーム