ジム・クゥエル
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ジム・クゥエル (GM QUEL) は、オリジナルビデオアニメーション『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』、アニメーション映画『機動戦士Ζガンダム』に登場する架空の兵器。ティターンズの量産型モビルスーツ。(型式番号:RGM-79Q)
本項ではガンダムTR-1[ヘイズル]以下各発展機群の詳細も記述する。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
目次 |
[編集] ジム・クゥエル
[編集] 機体解説
ジム・クゥエル | |
型式番号 | RGM-79Q |
所属 | ティターンズ |
建造 | ルナツー |
生産形態 | 量産機 |
頭頂高 | 18.0m |
本体重量 | 39.9t |
全備重量 | 56.3t |
ジェネレーター出力 | 1,420kW (1,720kW説有) |
スラスター総推力 | 61,480kg (73,480kg説有) |
センサー有効半径 | - |
装甲材質 | チタン合金セラミック複合材 |
武装 | ・頭部60mmバルカン砲×2 ・ビーム・サーベル ・ジム・ライフル ・ビーム・ライフル ・シールド |
主な搭乗者 | アルファ・A・ベイト ベルナルド・モンシア チャップ・アデル フォルド・ロムフェロー |
ジム・クゥエルは、スペースコロニー内外における、ジオン公国軍残党を初めとした暴徒鎮圧等の治安維持活動を主任務として開発されたティターンズ初期の主力量産モビルスーツ (MS) である。基本構造はデラーズ紛争期にエースパイロット向けに配備されたジム・カスタムをベースとしているが、開発は戦後接収した公国軍の施設や兵器等から入手したテクノロジーを排除した純粋な連邦軍技術のみによって行われた。これは地球至上主義を掲げるティターンズでの運用が前提とされていたためであり、建造自体も旧ジオニック社の技術者が多く在籍するアナハイム・エレクトロニクス社等民間企業の協力を介さず、ルナツー工廠内で独自に行われた。
機体名称のQuelには「鎮圧する」という意味と共に「地球の法と権限を行使する」 (Qualified and Use of Earthly Law) という意味が込められているとされる。その運用目的から対人制圧戦に重点が置かれており、センサー性能の向上が行われている。頭部センサーの改良に加え、脛部には対地マルチセンサーが追加された。左胸部にも新たにセンサーが設置されている。
また、ジム・カスタムに比べ量産性を向上させると同時に、信頼性を失わない程度の新規技術が投入されている。比較的加重の負担が少ない腕部構造に限定して、後のいわゆるムーバブルフレームの前身的機構が試験的に採用されている。腹部コクピット周辺などの形状から、この機体をベースとしてガンダムMk-IIが完成したと思われる。胸部複合インテーク・ダクトおよびバックパックはジム・カスタムと同じくオーガスタ系ガンダムであるガンダムNT-1に準ずる形状のものが設置されている。
固定武装は頭部60mmバルカン砲2門とバックパックにビームサーベルを1基装備する。コロニー内戦闘を前提として開発されたため、主にマシンガンを携行したが、ビーム・ライフルも使用が可能であった。シールドは前腕部に設けられたラッチに取り付けることができる。
ジムのバリエーション機のほとんどが白系統の塗装であるのに対して、ジム・クゥエルはティターンズカラーである黒系統の塗装が施されている。ティターンズテストチームに配備されたうちの1機はガンダムヘッドを装備され、ガンダムTR-1[ヘイズル]の予備機として用いられたが、改修を受け新たにRX-121-2の型式番号を得てガンダムTR-1[ヘイズル2号機]となった。
[編集] 劇中での活躍
『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』では新たに結成されたバスク率いるエリート部隊ティターンズの戦力として登場する。また、劇場版『機動戦士Ζガンダム』には警備を行っているシーンが追加されている。いずれも数カットであり、ほとんど動いていない。いずれも所謂ティターンズカラーで塗装されているが、劇場版『機動戦士Ζガンダム』に登場のものは、『0083』版やプラモデルの仕様とは異なり、ガンダムMk-IIに準じている点に注目されたい。『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』においては、下記のTR-1へイズルのベース機体となっている他に、コンペイトウ駐留部隊の機体として通常のジムと同様に白系統のカラーリングが施された機体が登場している。
[編集] その他
機体デザインはカトキハジメ。この機体の設定画は『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の製作が、本来の最終話発売前に劇場版が公開される形だったこともあって、原画が先に描かれた後に設定画を起こされるという特殊な一例といえる(そのためその原画をカトキ自身が書いているのではと言われている)。この関係で原画と設定画で形状の一部相違が見られる(原画ではヒジ関節部のマルイチモールドが存在するが、設定画では存在しないなど)。その為一部ファンからは、原画版は『ジム・クゥエル(初期量産型)』と呼ばれている。
[編集] バリエーション
[編集] ガンダムTR-1[ヘイズル]
ガンダムTR-1[ヘイズル](GUNDAM TR-1[HAZEL])は、雑誌企画『ADVANCE OF Ζ ティターンズの旗のもとに』に登場する架空の兵器。ティターンズの試作型モビルスーツ。(型式番号:RX-121)
[編集] 機体解説
本機は宇宙世紀0084年、ティターンズがモビルスーツ (MS) の最新技術を評価するため、コンペイ島工廠にて作製した実験機である。同時に一年戦争の活躍により伝説的名機となった、ガンダムを模したタイプの頭部を装着することによる友軍および敵軍(特にジオン残党軍)への心理的影響、更にはその存在自体が戦局に与える影響の評価も目的としている。ベース機としては信頼性が高くティターンズ専用機として各部隊に配備されており、メインテナンス時のパーツの互換性の高いことからジム・クゥエルが選ばれた。その結果、開発期間の大幅な短縮にも繋がることとなり、各部に換装された強化パーツによって、ガンダムタイプのMSに匹敵する機体として完成した。ベース機に対して高性能である反面、機体特性、操作性が大きく異なっており、その機体性能を遺憾なく発揮するためには高度な操作技術を要する。また、オプションパーツを装着・換装することにより様々なミッションに対応することが可能である。
頭部ユニットはデュアルセンサーとV字型のマルチブレードアンテナを装備したいわゆるガンダムヘッドに換装されている。特にセンサー能力の向上が図られ、頭頂部には強襲形態時の視界を確保するため全周に渡ってセンサーが設置されている。それらスペースの関係から頭部60mmバルカン砲は廃止されているがガンダムMk-IIと同型のバルカンポッドを装備可能。
胸部は胴体とバックパックを繋ぐ形で補助アクチュエーター・ユニットに換装されている。これは肩関節の動きを補助するものでこれにより肩関節の強度は大幅に増大することとなった。この部分はジム・クゥエルでは複合インテーク・ダクトが設けられていたため、排気性能はやや低下することとなった。内側は多目的スペースとなっており、使用目的に応じて換装が可能である。
脚部には熱核ロケット・エンジンを内蔵した強化パーツに換装されている。一般的なMSでは後部にのみスラスターが設置されることが多いが、本機は高い推力を有するため逆噴射などの機体の制動用にニー・スラスターと呼ばれるスラスターが前部にも設置されている。脚部左右にはプロペラントが内蔵されている。また、オプション兵装時などの重量増加に対応するため足首関節部のアクチュエーターが強化された。それを保護するためアンクル・ジョイントは大型化している。
新たに換装されたバックパックには可動式ブースターポッドが接続されている。アームにより接続されているため、可動することでAMBACユニットとしてもベクタード・スラスターとしても機能する。ハイブリッドタイプの熱核融合炉が搭載されていおり、熱核ジェット・エンジンとしてもジェネレーターとしても使用することができる。大気圏内で熱核ジェット・エンジンを使用するときは前面シャッターが開き、エアインテークとなる。下部のハッチにはサブスラスターを内蔵する。上部にはマウント・ラッチが設置されている。リアアーマーは推進力向上のためガンダムNT-1のチョバムアーマーを改良したものに換装されている。
本機の固定武装はバックパックに設置されたビームサーベル1基のみである。携行武装としてビームライフルを用いる。次世代のビームライフルとしてEパック方式が試験的に採用されている。連射モードでの使用はエネルギー消耗が大きく2つのパックを繋げたものを使用する。本機は近接戦闘での取り回しの良いショートバレルタイプやロングバレルタイプなど様々なタイプの仕様のものをテスト運用していた。これが更に改良され後にガンダムMk-IIで採用されることになる。Eパックはホルダーを介して腰部や前腕部のラッチに接続される。ホルダーはEパック取り外し後も一種の増加装甲としても機能する。前腕部ラッチに装着されるシールド・ブースターは、22,000kgのスラスターとプロペラントタンクを搭載したシールドである。推進剤は被弾時の誘爆の危険性を低減するため低可燃性のものが使用されている。強襲時にブースターとして機能し、そのままシールドとして用いることで重量面での無駄を減らすことができる。これまでの用いられてきたシュツルム・ブースターでは戦闘時に廃棄していたが、廃棄後の回収が困難であった。このシールド・ブースターは製造コストは高くなるものの、被弾による損傷がない限り再利用が可能という利点もある。胸部補助アクチュエーター・ユニットの多目的スペースは主に多目的ランチャーを装備することが多かったようである。これは発射時に折れることで2連装のランチャーとなる。作戦内容によってグレネード弾やスモーク弾などを選択することができる。また、廃止された頭部バルカン砲の代わりとしてバルカン・ポッドをオプションとして装着することができる。その際はクリアランス確保のため多目的スペースには何も設置しない。
[編集] 強襲形態
両前腕部ラッチにシールド・ブースターを装着した形態。ヘイズルのオプション形態の中では最も一般的なものであり、攻守共にバランスが取れた形態である。
[編集] フルアーマー形態
本機には一年戦争のフルアーマー計画と同様の増加装甲システムがオプションとして採用されている。ヘイズル自身がジム・クゥエルをベースとして各部を強化パーツとして既に換装されており、それらのパーツは固定されている。そのためそれまでのフルアーマーと比較して増加装甲として着脱可能なのは胸部および腹部とフロントアーマー部のみである。被弾した装甲を容易に交換できる高いメインテナンス性を実現するため、被弾率の高い機体前面装甲のみを着脱可能となっている。この増加装甲はガンダムNT-1やジム・キャノンIIのものと同タイプのものである。この形態の欠点は機体重量の増加や慣性モーメントの変化、増加装甲による可動範囲の制限のためAMBAC性能の低下などにより本来の機動力が失われてしまうことである。ビーム兵器が一般的となりつつあった時代でありその効果を疑問視する意見もあった。
[編集] 高機動形態
フルアーマー形態に加え、3枚のシールド・ブースターを装着した形態で、最終形態とも呼ばれる。シールドは両前腕部とブースターポッドのラッチに装着され、一方行に推力を集中させることによりモビルアーマー並の高い加速力を得ることができる。胸部補助アクチュエーター・ユニットの多目的スペースにはフォールディング・グリップが設置され、これを展開し握ることで両腕部を固定し肩関節への負荷を低減し安定した巡航を行う。推力方向を一方に揃えるというこの形態のコンセプトは後の可変モビルスーツの開発にも貢献している。
[編集] ガンダムTR-1[ヘイズル改]
ガンダムTR-1[ヘイズル改] | |
型式番号 | RX-121-1 |
所属 | ティターンズ |
建造 | コンペイ島 |
生産形態 | 試作実験機 |
頭頂高 | 18.1m |
本体重量 | 41.5t |
全備重量 | 63.0t |
ジェネレーター出力 | 1,420kW (+390kW) |
スラスター総推力 | 114,480kg |
センサー有効半径 | 10,200m |
装甲材質 | チタン合金セラミック複合材 (一部ルナ・チタニウム合金) |
武装 | ・ビーム・サーベル ・多目的ランチャー(選択式) ・ビーム・ライフル ・シールド 他 |
特殊兵装 | ・シールド・ブースター |
主な搭乗者 | ウェス・マーフィー オードリー・エイプリル エリアルド・ハンター |
ガンダムTR-1[ヘイズル改](GUNDAM TR-1[HAZEL CUSTOM])は、ガンダムTR-1[ヘイズル](初代ヘイズル)の改修機。(型式番号:RX-121-1)
[編集] 機体解説
ガンダムTR-1[ヘイズル改]は、ジオン残党軍駆る改造モビルスーツ (MS) 「シュトゥッツァー・シリーズ」との交戦後甚大な損傷を被ったヘイズルを、母艦アスワンに保管されていた予備部品とコンペイ島配備のジム・クゥエルのパーツを用いて修復、強化した機体である。
一部を除き改修前と形状の変化は無いが、これまでの実動データ及び開発ノウハウからのフィードバックを受けて各パーツ間のマッチングが練り直され、実質的な別機体に生まれ変わっている。部材の再構成によって機体は改修前より軽量化され、約10%のスラスター出力強化によって総合的な機動性、運動性は更に向上している。インターフェイス面も大幅に刷新され、コクピットには全天周モニター、リニアシートを本格的に導入。オペレーションシステムもバージョンアップが成され、操作性、反応速度共に格段に向上した。胸部コクピットブロックと腰部センターアーマーは、初代との数少ない外見的差異となっている。腰部センターアーマーは前方にスライドし、そこに様々なオプション兵装の評価試験の為の多目的ラッチが増設される。ヘイズルのオプション兵装は初期プランの実験をほぼ完了していたが、この改修によって実験プランは大幅に見直され、それまで以上の様々な形態をとる事が可能となっている。武装はヘイズルに準ずるが、各種オプション兵装の追加によりこれまで以上に多彩な武装を利用することが可能である。シールドはシールド・ブースターの代わりにジム・コマンドなどが装備する一般的なシールドを装備することもあった。
本機の改修に先立って改装されたヘイズル2号機にRX-121-2の型式番号が付与されたことに伴い、本機の型式番号もRX-121からRX-121-1と移行されることとなった。
なお、改修期間が僅か数日という異例の短期間であった為機体の塗装が間に合わず、一定期間大部分の装甲の地色を晒したライトグレーの状態で運用された。後のグリプス戦役勃発に合わせ本機の実戦配備が決定すると、本格的なティターンズ正規カラーへと塗り変えられている。
[編集] オプション概要
- フレキシブル・ビーム・ライフル・ユニット
腰部ラッチに装備されるビーム・ライフル保持用のターミナル・ユニット。主にシールド・ブースターによって両腕が塞がってしまう高機動形態時に装備されるもので、基部のアームを展開する事でフリーハンドでの発砲を可能としている。
- 姿勢制御ユニット
腰部に装備される機動装備の一種。小型のアポジモーターを多方向に複数基内蔵し、より繊細な姿勢制御を行う。
- 対シュトゥッツァー用ワイヤー・カッター・ユニット
ジオン残党軍の「シュトゥッツァー・シリーズ」が標準装備するウィンチユニットへの対抗手段として考案された胸部の大型V字状カッター。刃はウィンチユニットの特殊鋼ワイヤーをも切断する強度を持ち、例え機体を絡め取られても速やかに脱出する事が出来る。
- サブ・アーム・ユニット
腰部オプションの1つ。通常は無骨な増加装甲といった容貌だが、フロント・アーマーに干渉しないように左右が展開する事で第3、第4の腕として機能する(使用する際はメインアームと切り替えて操作するため、その間メインアームは使用不可となる)。基本コンセプトはフレキシブル・ビーム・ライフル・ユニットと同様のもので、3本指の簡易的なマニピュレーターではあるがビーム・ライフル、ビーム・サーベル等各種武装の携行、使用の他、Eパックの換装までこなす。また、TR-4[ダンディライアン]搭乗時はこのアームにより機体を保持し安定化させる。火器管制が複雑になることからパイロットに負担がかかり、広く用いられることはなかった。ジ・Oに搭載された隠し腕との技術的関与については不明である。
- イカロス・ユニット
可変機のMS形態の滞空時間が十分ではなかったことから「サブ・フライト・システムや可変機構に頼る事の無いMS単体での飛行」を検証すべく開発された装備。変形が不要なためMS形態のまま携帯する武装で戦闘に移行することができる。機体前面ユニット、肩部増加ユニット、リア・スラスター・ユニットから構成される。腰部前面には高出力のハイブリッド型ジェネレーター、両肩のユニットにはコ・ジェネレーターを内蔵し、それらを利用した大推力によって無理やり機体を飛行させている。リア・スラスター・ユニットはメイン・スラスターとして機能し前面のジェネレーターと動力パイプで接続されている。胸部左右にはジェットノズルが設けられ、機体制御に用いる。飛行を安定するためのスタビライザーが設置された両肩にはジェネレーターに直結する形でロケットエンジン、更にオプションラッチが設けられている。ここにはシールド・ブースター、ミサイル・ポッド、シールド、サブ・アーム・ユニットなど様々な装備が接続可能である。また胸部にはビーム・リフレクターが装備され、使用時に展開する。
初期設計プランは胸部ラッチに接続される巨大な飛行ユニットと腰部および足部のユニットから構成されるものであった。滑空時に水平展開する可変翼で発生する揚力と推進力を併用するものであったが、MS形態のままでは空力性能が著しく低く、十分な機動性が得られないと判断され廃案となっている。しかしこの装備で得られたデータを元にバイアランが開発されている。
[編集] ガンダムTR-1[ヘイズル2号機]
ガンダムTR-1[ヘイズル2号機] | |
型式番号 | RX-121-2 |
所属 | ティターンズ |
建造 | コンペイ島 |
生産形態 | 試作実験機 |
頭頂高 | 18.1m |
本体重量 | 42.7t |
全備重量 | 65.4t |
ジェネレーター出力 | 1,420kW |
スラスター総推力 | -kg |
センサー有効半径 | -m |
装甲材質 | チタン合金セラミック複合材 (一部ルナ・チタニウム合金) |
武装 | ・ビーム・サーベル ・多目的ランチャー ・ジム・ライフル ・ビーム・ライフル ・シールド |
主な搭乗者 | エリアルド・ハンター |
ガンダムTR-1[ヘイズル2号機](GUNDAM TR-1[HAZEL II])は、「ガンダムTR-1[ヘイズル]」の2号機。(型式番号:RX-121-2)
[編集] 機体解説
元々本機は母艦アスワンにストックされたヘイズルの補修、交換用パーツを組み立てて造り上げられた予備機で、頭部前面をデュアル・アイ・センサー式のガンダムフェイスに変更している以外は普通のジム・クゥエルと全く同一の機体だった。後にT3部隊パイロット、エリアルド・ハンター中尉の搭乗機ジム改高機動型の中破を機に、新たに彼の乗機として改修が施された。これに伴い軍のデータベースに再登録が行われ、RX-121-2の型式番号が与えられた。
改修点はまず頭頂部全面を1号機と同一の多面形センサーに換装。なお後頭部はジム・クゥエルそのものである為、左後部のロッドアンテナはそのまま残されている。肩部にも1号機と同じ補助アクチュエーター・ユニットが増設さた。背部にはかねてより試験予定であった試作型バックパック「トライ・ブースター・ユニット」が装着されている。
トライ・ブースターはシールド・ブースター以外のもう一つの機動力強化オプションの一つとして設計された強襲戦用ユニットで、バックパック左右に配置された2基の可動式ユニバーサル・スラスター・ポッドと、後部の大容量プロペラントタンクを兼ねたテール状シュツルム・ブースターで構成される高機動型装備である。ユニバーサル・ポッドはバックパックと接続される可動フレームによって自在に推力方向を変化させる事が可能で、ポッド自体の質量移動を活かしたAMBACシステムとしての機能も有する。その鋭角的且つトリッキーな挙動は、模擬戦、実戦を問わず良好な性能を示したが、同時に数々の欠点も表面化させていた。特にシュツルム・ブースターは、その長大さ故ユニット重心と機体重心が大きくかけ離れてしまっており、特に横移動の際に発生する余剰モーメントの存在が問題視された。また、本来この装備は1号機でのテストを目的に調整されていた為、ほとんど急造同然の2号機の相性はいいとは言えず、操縦難度の高いピーキーな機体となってしまった。これらの事情もあって、稼働データの収集、解析を以ってトライ・ブースターのテストは終了したが、ポッド可動フレームのノウハウ等得られたデータの多くは装甲やその他構造物と独立したより自由度の高い躯体の研究開発に大きく寄与し、後のムーバブルフレームの原初の一つとなる。
武装やその他オプションは1号機とほぼ共用で、同様に胴体前面に増加装甲を装着する事でフルアーマー形態となる事も可能である。但しマルチ・コネクター・ポッドの試験が開始されるまでシールド・ブースターの使用は想定しておらず、それに合わせ補助アクチュエーター多目的スペース内には保持用ロールバーではなくオプションのグレネードランチャーを標準装備する。携行装備には一般のジム・クゥエル等が装備する曲面形シールドとジム・ライフルが多く用いられている。
[編集] ガンダムTR-1[アドバンスド・ヘイズル]
ガンダムTR-1[アドバンスド・ヘイズル] | |
型式番号 | RX-121-2A |
所属 | ティターンズ |
建造 | コンペイ島工廠 |
生産形態 | 試作実験機 |
頭頂高 | 18.8m |
本体重量 | 39.5t |
全備重量 | 78.6t |
ジェネレーター出力 | 1,420kW |
スラスター総推力 | -kg |
センサー有効半径 | -m |
装甲材質 | チタン合金セラミック複合材 (一部ルナ・チタニウム合金) |
武装 | ・ビーム・サーベル ・多目的ランチャー(選択式) ・ビーム・ライフル ・シールド |
特殊兵装 | ・シールド・ブースター ・強化型シールド・ブースター ・サブ・アーム・ユニット |
主な搭乗者 | エリアルド・ハンター オードリー・エイプリル カール・マツバラ |
ガンダムTR-1[アドバンスド・ヘイズル](GUNDAM TR-1[ADVANCED HAZEL])は、ガンダムTR-1[ヘイズル2号機]を全面改修し、各種強化パーツを装着した機体。(型式番号:RX-121-2A)
[編集] 機体解説
アドバンスド・ヘイズルは、グリプス戦役勃発後T3部隊の本格的実戦部隊への再編成に合わせ、TR-1ヘイズル2号機を1号機と同等の強化パーツへと換装し、更にサブ・アーム・ユニットや別途テスト中であった新規ユニットを追加した姿である。その機動性、汎用性、運用効率とあらゆる要素、機能を高次元に融合させた本機は、ヘイズルの、いや新世代の機動兵器としての理想系の1つを体現した集大成と言うべき存在と言えるだろう。一部の装備は改良され、バーザムに採用された。
- 高性能光学センサー・ユニット
ヘイズル本来のアンテナは折り畳まれ、そこに頭部前面を覆うようにバイザー型複合センサーユニットが配置される。光学センサー、サイトセンサー等、内装される各種デバイスはジム・スナイパーIIIの頭部に採用されたものと同等のユニットで、明暗、熱、速度、形状、相対距離等、敵機及び戦場のあらゆる情報を捉える重要な“目”である。下部には高精度のモノアイセンサーが内蔵され、これを展開する事で長距離狙撃任務に特化したスナイパーモードへと変化する。
- マルチ・コネクター・ポッド
可動式ブースター・ポッドに変わり設置されたバックパックのマルチ・オプショナル・ポッド。同じくT3部隊に配備されていたガルバルディβに装着されたテスト装備を流用したもので、両側ハードポイントにシールド・ブースターを計2基装着可能。これによって通常装備のまま強襲形態に匹敵する機動性能を発揮する。このラッチはブースターの推力に耐えうる様に強化されている。更に後部にも2基のラッチを持ち、それぞれゼク・アインも使用する汎用プロペラントタンクやその他強化パーツを接続可能。
- 強化型シールドブースター
より防御装備としての機能を追及したシールド・ブースターのバリエーションモデル。 表面に計10基の拡散ビーム砲を内蔵し、これを一斉発射する事でミサイル等の実体弾兵器を着弾前に撃墜し身を守る。但しサイズそのものは通常のシールド・ブースターと変わらない上、拡散ビーム砲の搭載スペース分内蔵プロペラント量を削減している為、航続能力では通常タイプに劣る。
- 脚底部補助スラスター・ユニット
カカト部に姿勢制御用サブスラスター・ユニットを内蔵する両足部の増加装備。 純粋な機動装備としての機能は元より、着艦、着地時における減速用のリバース・スラスターとしての役目を持つ。
[編集] ガンダムTR-1[ヘイズル・ラー]
ガンダムTR-1[ヘイズル・ラー](GUNDAM TR-1[HAZEL-RAH])は、ヘイズル改、及びアドバンスド・ヘイズルにGパーツ[フルドド](G-Parts [Hrdudu])を装着した形態。(型式番号:RX-121-1(RX-121-2)+FF-X29A )
[編集] ヘイズル・ラー
各種オプションパーツ、支援ユニットによるMSの性能強化。それは初めてMSが兵器として表舞台に台頭した一年戦争の頃より既に行われてきた手法であった。当時最強のMSとして雷名を轟かせたRX-78-2ガンダムもまた、専用の分離合体型支援戦闘機Gファイターとの連携によってあらゆる戦術、状況に順応して見せ、数々の武勲を打ち立ててきた。同様に様々な追加装備によって各々の環境に応じ性能を特化するヘイズルに、同コンセプトのユニットが作り出されても何ら不思議は無いのかもしれない。
ヘイズル・ラーは、ヘイズルのパワーアップメカとして開発されたGパーツ、FF-X29A[フルドド]と合体した戦闘形態を指す。これによってヘイズルの火力、機動性、防御力は大幅に向上し、ムーバブルフレーム標準採用の第2世代MSにも比肩し得るスペックを獲得した。フルドドは通常背部の可動式ブースター・ポッド、もしくはマルチ・コネクター・ポッドのジョイントに接続されるが、更に腰部マルチウエポンラッチ及び両サイド部ハードポイントへの装着も可能となっている。その為2機のフルドドを同時合体させる事も可能で、通称第2形態と呼ばれる運用効率を最大限に高めた姿へと進化する。
[編集] フルドド
フルドド(型式番号:FF-X29A)は他の追加パーツと異なり、それ自体がコクピットを有する独立した航宙戦闘機として運用される。だが一年戦争期のGファイターと異なり、高い危険度を伴う戦闘中の合体機能は設計当初より除外されていた。この為発進前より単独及びドッキング状態での出撃か選択するか、MS自身が自力で換装作業を行う必要がある。但し合体状態からの分離は可能で、その際双方のコクピットにパイロットが搭乗した状態であればそのまま戦闘を継続する事が出来る。更にフルドドは同じ2機を前後に接続する事も可能で、その形態ではモビルアーマー(MA)にも匹敵する火力、加速性能を発揮する。フルドドの各構成パーツを繋ぐジョイント部は、洗練されつつあったムーバブルフレームの技術が反映され、各部は徹底したユニット化が行われていた。この機構はフルアーマー・システムに近い運用法も想定されていたとされ、破壊されたユニットを切り離す事で被害を最小限に防ぐダメージコントロールシステムとしての側面もあったと言われる。
- スラスター・ウイング・ユニット
フルドドの左右ウイングバインダーは推進器を内蔵した独立モジュールであり、更にユニットの能動的可動によるAMBAC効果を生み出す重要な機動装備である。 スラスター・ユニットは純粋な推進装置としての機能を持ち、ヘイズル・ラー第2形態時は主に同ユニットを両側に装着したフルドド(Gトップ)が接続される。
- クロー・ウイング・ユニット
クロー・ユニットは、サブ・アーム・ユニット同様各種武装の保持、使用を目的としたもう1つの腕と言うべきユニットである。使用時は蛇腹状のアーム部が展開し、鋏状のクローに武装を挟み込んで使用する。ヘイズル・ラー第2形態時は主に腰部にクローユニット装備型のフルドド(Gベース)が合体し、各兵装の管制を担当する。
- ブレードライフル
機首下部にマウントされる長大なビーム兵器。前後に分離しヘイズルのライフルに合体する事で、長射程用スナイパーライフルとなる。下部には銃剣としてヒートブレードが設置され、射撃装備のまま格闘戦に対応する事が出来る。クロー・ウイング・ユニットによる保持、使用も可能であり、不使用時はクロー後部に格納する事も出来る。なお、それ単体では武装としての機能は無い。
- ノーズ・センサー・ユニット
ビーム砲を固定装備する本機の機首部。ヘイズル・ラー時は本体と一体で背部に接続されるか、腕部ラッチにマウントされる。両側にオプション用のラッチを1基ずつ持ち、片手で2基のシールド・ブースターを装着する事が出来る。
- 胸部装甲ユニット
コクピット内蔵の本体と言うべき部位で、ヘイズル・ラーの胸部前面を覆う追加装甲。両側にプレート状のリフレクター板を持ち、肩部補助アクチュエーターユニット内のロールバーを介して固定される。
- 増加ブースター・ユニット
フルドドは後部にギャプランと同型の増加ブースターを装着する事が出来る。これはヘイズル・ラーも同様で、第2形態に両腕シールド・ブースターを装備した巡航形態を“Gクルーザー”と呼称する。4基のウイングユニット、2基のシールドブースター、そして増加ブースターと全ての推進器を加速の為だけに後方一点に向けたその超推力は、敵拠点へ超々長距離単独侵攻や、迎撃の暇も与えず敵を撃滅する一撃離脱戦闘能力をこの機体に与えている。
[編集] ガンダムTR-1[ヘイズル・アウスラ]
ガンダムTR-1[へイズル・アウスラ](GUNDAM TR-1[HAZEL OWSLA])は、ヘイズル2号機の胴体ブロックを緊急脱出ポッド[プリムローズ](EMARGENCY ESCAPE POD[PRIMROSE])に換装した形態。
[編集] プリムローズ
[プリムローズ]は、ジオン残党軍MS「シュトゥッツアーシリーズ」との交戦後大破したヘイズル1号機の経験を踏まえ、パイロットの生還率向上を目的に開発された緊急脱出用ポッドである。
その基本理念は一年戦争期のRXシリーズに採用されたコア・ブロック・システムに倣ったものであるが、プリムローズではいわゆる戦闘中の分離合体機構はオミットされ、純粋な脱出システムとして設計されている。また、機関砲やミサイル等、一定の自衛戦力を有していたコア・ブロックと違い一切の火器が内蔵されておらず、単体での戦力は皆無に等しい。この点から、ある意味グリプス戦争期のMSに標準採用されていた「イジェクション・ポッド」の近縁種的なシステムとも言えるが、ドッキング時の可変機構やある程度の自立航行能力は維持されている。ヘイズルに限らずTRシリーズでは、各種オプションパーツの共用化が徹底されており、それはプリムローズとて例外ではない。その汎用性、拡張性は他のTRシリーズと比較しても全く遜色は無く、パーツの組み合わせ次第では充分に一線級足る戦力となり得る。例を挙げれば、フルドド、加えて発展型であるフルドドIIとのドッキングによる航宙MA形態を始め、バックパック等一部MSのパーツを接合した芸当も可能で、開発元であるコンペイトウ技術本部では様々なバリエーションが考案、検討されていたようだ。
[編集] ヘイズル・アウスラ
[ヘイズル・アウスラ]では、上半身側の胴体がほぼ丸ごとプリムローズに換装される。元々優れた拡張性を有したプリムローズを内包する事で、ヘイズル自身の汎用性も大幅に向上し、オプション選択の枠が更に多彩化した。新規の武装として、右腕にウィンチワイヤー内蔵の新型ビームキャノン、両肩に連装型のミサイルポッドを追加。ビームキャノンはギャプランTR-5のウィンチシールドの発展させたもので、基部をワイヤー射出する事でインコム的な遠隔射撃も可能。ユニットは専用の可動アームで胴体側に直接接続されている為、フリーハンドでの発砲も行える。なお、これらの追加装備に合わせ機体肩部アーマーは小型化され、新たにウエポンラッチが増設されている。