サン・マイクロシステムズ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
サン・マイクロシステムズ(Sun Microsystems)は、「Solaris」OS及び「SPARC」CPUを用いたサーバ並びにワークステーションを製造販売する企業である。米国法人である Sun Microsystems, Inc. はカリフォルニア州サンタクララに、日本法人であるサン・マイクロシステムズ株式会社は東京都世田谷区に所在する。
目次 |
[編集] 概要
サンの名前は、Stanford University Networkの頭文字 SUN から来ており、スタンフォード大学で校内のネットワーク用のワークステーションを独自に開発したアンディ・ベクトルシャイムが、スコット・マクネリ、ビノッド・コースラらとともに会社を創立したのが始まり。創立に際してカルフォルニア大学バークレー校でBSD UNIXを開発していたビル・ジョイを創立メンバーに招いた。創立した1982年から数年で世界企業へと成長した。
当初ワークステーションのOSは、BSD UNIXを採用しSunOSと呼ばれていたが、後に当時UNIXを所有しUNIX System VをライセンスしていたAT&Tと共同して、BSD UNIXとSystem V を一部合流しSolarisとして販売を開始した。Solarisは、System Vとしての性格が強い。
CPUアーキテクチャとしては、当初 モトローラの68000系を使っていたが、後に自社独自のCPUアーキテクチャSPARCを開発した。SPARC は RISCアーキテクチャを採用している。
自社の技術を公開したりライセンスしたりする事が多く、オープンな戦略を特徴としている。SPARCのCPUアーキテクチャは外部にライセンスされている。Solaris単体での販売もしている。PC向けのSolarisもある。近年 Linux をその戦略の一部に取り込んだ。
Javaをビル・ジョイを中心としたチームにより開発した。
J2EE (Java 2 Platform, Enterprise Edition) などでは、マイクロソフトの .NET 構想と同等の機能のほとんどが実現されているにも関わらず一般向けの宣伝が少ないため、一般には知られていない。
JXTAは、JavaのP2Pアーキテクチャである。一般のコンピュータに留まらずPDAや携帯電話での使用が当初から考えられている。
[編集] SUNの過去と将来
[編集] UNIXでの一人勝ちの状況
UNIX戦争に伴う各ベンダとの競合状態において、ビル・ジョイなどのUNIX神話に名を残したスーパーエンジニアの功績やいち早いインターネットに向けたサーバ群の取り組みによりアメリカを中心とする世界市場において、1990年代前半、SUNは一人勝ちの様相を示していた。
日本市場においても、通信系や企業基幹系に浸透しつつあったUNIX市場において、遥かに価格性能比が高く、知名度のあったSUNは国産UNIXベンダのパークを次々と取り込んでいった。
結果、日本市場においてもSUNはIBMを含むUNIX系ベンダの唯一の勝ち組企業となっていた。
[編集] 市場の変化とSUNの動き
90年代後半までの一人勝ちの状況以降、元々の企業規模がそれほど大きくなく、先進性で売り上げを上げるにも研究開発費の大規模な調達ができない点、 Javaなどの別技術への投資を集中した点などもあり、その後のUNIXによるエンタープライズ系への対応や処理速度改善において、幾つか決定的な遅れを取ってしまう。
[編集] CPU開発競争での遅れ
Intel製CPUのクロックアップや開発資源への大規模な投資により高性能化したPCにUNIX陣営は追い込まれつつあった。特に、RISC陣営でもMIPSテクノロジーと同様に自社でのCPU製造を行わないSUNは、急速な開発期間の短縮や新規テクノロジーの適用において、遅れを取り始める。
その結果、UltraSPARC IIが主力であった頃、IBMやHP、DECといったRISC陣営の競合CPUと比較して、UltraSPARC IIが著しく遅く、他社のメインストリームサーバとの比較による受注の大量減少をさけるため、業界標準ベンチマークとなっていたTCPベンチマーク値の公開を取りやめている。
また、基本比較値として残さざるを得なかったSPECといった基本ベンチマークにおいても、IntelのXeonと比較された際に同等レベルを維持するのがやっとの状態にまで追い込まれていた。
[編集] エンタープライズ分野での足踏みとLinux対応
UNIXのエンタープライズ分野においては、唯一対応の早かったサーバの仮想化技術の延長線上にある論理区分による同一筐体内複数パーティションの機能も、HPやIBMは1年もせずに同等以上の機能を提供してきたため、基幹系における導入シェアを大きく上げる要因にはならかった。
これにより、大規模なエンタープライズ市場において、当初はHPに、近年はIBMに巻き返され、他商用UNIXとの横並び若しくはそれ以下となっている(参照:CIRCUS, Solaris, 論理ボリュームマネージャ)。
また、オープンソースOSであるGNU/Linuxによるネットワーク系サーバの置き換え及び、比較的安価な基幹用サーバの置き換え需要にさらされ、商用UNIXで最もダメージを受けたOSと評されており、火急の対処が必要とされていた。
[編集] 巻き返しと評価、そして今後
一旦、遅れを取ったCPUの高性能化やエンタープライズ分野への新たな訴求としてSolaris自体のオープンソース化が進められ、エンジニアからは好評を得ている。また、CPUに関しても、NiagaraというSPARC III相当のCoreを複数搭載したCPUが登場してきている。
この2点において、現状、以下のように評価されている。
- Solarisのオープンソース化がサーバ販売台数(SUNの利益源泉)の増加に結びつくのか不明
- マルチコアCPUによる性能強化/消費電力低減がどの程度企業に訴求するのか不明
- コアの設計がUltraSPARC IIIでキャッシュが32K程度と非常に小さく、SolarisのSMP化時のロック粒度を含め、キャッシュに載り切るサイズではない点を考慮すると、非常に疑わしいという見方が多く、結論は出ていない。
- この方式のCPUであれば、小さい制御に向くが、大きなアプリケーションにはほとんど有効性が発揮できないため、ネットワーク制御に特化したものにならざるを得ないという報告もある。
このようにな状況の上、新規CPUのUltraSPARC Vの開発を中止し、多くのエンジニアをレイオフしており、英語版WikipediaにおけるSUNの項目の記載にあるように、ITバブル崩壊後の動きにおいて非常に曖昧模糊とした状態と言える。
この状態を抜け出すため、NECからSI・HPC分野のアライアンスを取り付け、富士通との関係もさらに深めようとしている。
しかし、グリッドに対するスタンスの違いや汎用京速計算機など国内プロジェクトへの国産ベンダの方向性は明らかにSUNと袂を別つ方向に向けられており、SUNへの風当たりは非常に厳しい。
なお、追い討ちをかける様な形で2006年第3四半期の業績不振による社長交代と2006年5月の10~15%のリストラに伴う社員解雇が決定した。
[編集] フリーソフトウェアとの関係
SunOSは、BSD版UNIXを基にしたもので、このBSD版UNIXのライセンスはGPLの基になったフリーソフトウェアライセンスであった。
当初のBSD UNIXはAT&Tのライセンスと必要としたが、独自のコードと実装を進め、その後のAT&Tとのライセンス交渉において、AT&TのUNIXライセンスに縛られないものとなった。その際のカリフォルニア大学バークレー校での拡張互換UNIX開発チームの書いたコードは、多くのUNIXの実装に影響を与えている。
この開発チームにて実装やソースのレビューとレベルチェックやリポジトリ管理をしていたのが、Cshの開発やUNIXの実装に大きな影響を与え、スーパーエンジニアとしても有名なビル・ジョイであった。
つまり、フリーソフトウェアを中心としたLinuxやGNUの思想は、SUNの遺伝子を色濃く残したもので、SUNとフリーソフトウェアの親和性の高さは、こういった歴史的な経緯からきている。
また、NFSはサンにより作られたネットワーク・ファイルシステムの規格であるが、サンからNFSのライセンスを受けるとSunOSのソースコードがやって来ていた。現在のLinuxなどで使われているNFSは独自のフリーな実装が使われている。
NISもサンにより開発され、アカウントなどの集中管理用として他社UNIXやLinuxにも採用されている。
Solarisのデスクトップ環境として 以前から利用していたCDEからGNUプロジェクトのフリーソフトウェアであるGNOMEに変更するなど、既存のオープンソースソフトウェアと連携した動きも多い。GNOMEの開発の中心にいる企業Ximianに出資している。また、以前はLinuxに対して非協力的であったが、最近は自社製品にLinuxを搭載している。
OpenOffice.orgを、フリーソフトウェアかつコピーレフトのGNU LGPLで公開している。OpenOffice.orgは豊富な機能を持ったオフィススイートで、多くのプラットフォーム (OS) をサポートしオープンソース運動を加速している。サンはOpenOffice.orgの成果をもとに、ソース非公開の StarOffice を開発し販売している。なお、StarOffice は教育機関などに向けての無料ライセンスもある。
OpenOffice.orgのベースとなったStarOfficeは当初、ドイツのソフトウェア会社StarDivisionで開発されていたソフトウェアで、サンは同社を買収した後すぐにオープンソースプロジェクトとして公開し注目を集めた。当初はSun業界基準使用許諾(SISSL)と呼ばれるサン独自のオープンソースライセンスとGNU LGPLとのデュアルライセンスであったが、2005年9月2日にSISSLを廃止し、GNU LGPLに一本化した。
コバルトシステム:インテル系のCPUとLinuxの組合せのサーバーを販売していたコバルトシステムを買収し、インテル系のCPUとLinuxを組み合わせたサーバーがサンから販売されている。
Sun ONE - One : Open Network Environment[1]
[編集] 外部リンク
カテゴリ: サン・マイクロシステムズ | コンピュータ企業 | アメリカ合衆国の企業 | 多国籍企業 | 東京都の企業 | NASDAQ上場企業 | S&P 500