グンナー・ミュルダール
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カール・グンナー・ミュルダール(Karl Gunnar Myrdal, 1898年12月6日 - 1987年5月17日)は、1974年にフリードリヒ・ハイエクとともにアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞を受賞したスウェーデンの経済学者であり、クヌート・ヴィクセルをはじめとするストックホルム学派の代表的論客である。
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[編集] 生涯
ミュルダールは1898年にスウェーデンのダーラルナ県ガグネフで生まれた。ミュルダールは1933年から1947年までストックホルム経済大学で経済学の教授として教壇に立ち、さらに1945年から1947年までは通商大臣としても活躍した。
ミュルダールは1944年に刊行した著書『An American Dilemma: The Negro Problem and Modern Democracy(アメリカのジレンマ:黒人問題と近代民主主義)』において「アメリカのジレンマ」という言葉を生み出したことでも有名である。
1960年から1967年まではストックホルム大学で国際経済学の教授として教鞭を執った。ミュルダールは1987年にスウェーデンのストックホルム県ダンデリードで没した。
なお、ミュルダールの妻は1982年にノーベル平和賞を受賞したアルバ・ミュルダールであり、1924年に結婚した。
[編集] 業績
ミュルダールの最も大きな業績として挙げられるのは、静学理論の動学化である。これは「期間分析」あるいは「継起分析」と呼ばれ、時間とともに変動する経済過程を一連の期間に区切り、経済主体の事前の計画と事後の結果を逐次的に追跡する手法である。これに関してミュルダールは経済主体の期待・予測を決定的に重視し、事前の予測値と事後の結果の値を区別して、事後の結果が再び時期の予測値の出発点となり、事前と事後が矛盾する動態的な経済過程として説明した。ミュルダールのこの考え方は、価格変動は期間と期間の移行時点において撹乱的に生ずる短期均衡の連続であると主張したエリック・リンダールの考え方とともにストックホルム学派の伝統となる事前・事後の概念を築き上げた。こうした理論的貢献は後にジョン・ヒックスによって吸収され、現代のマクロ的動態理論の重要な要素となった。またミュルダールはこの研究に関連して、「貨幣理論および経済変動理論に関する先駆的業績と、経済現象・社会現象・組織現象の相互依存関係に関する鋭い分析」が称えられ、1974年にフリードリヒ・ハイエクとともにアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン銀行賞を受賞した。
これ以外にもミュルダールの活動は多彩であり、不況期に景気を刺激するための財政赤字を好況期に黒字で相殺していくという反循環政策を理論的に初めて支持した1933年の財政法案の付属文を執筆した。これはジョン・ケインズ以前のケインズ政策とも呼ばれている。理論的には1939年に発表した代表的著作『Monetary Equilibrium(貨幣的均衡論)』において、ストックホルム学派の伝統である事前・事後の概念を用いて期待の概念をマクロ経済学に導入した。またミュルダールは新古典派経済学を強く批判し、1960年の『Beyond the Welfare State(福祉国家を越えて)』で福祉国家思想を展開した。さらに開発問題に対しても関心を示し、1968年には『Asian Drama(アジアのドラマ)』を発表した。
ミュルダールは、経済学が価値判断からは不可分であること、およびそこでそのような価値判断を前提としているかを明らかにすべきであるという立場を終生維持した。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- ノーベル財団の公式ホームページ(英語)
カテゴリ: スウェーデンの経済学者 | ノーベル経済学賞受賞者 | 1898年生 | 1987年没