キューバ系アメリカ人財団

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キューバ系アメリカ人財団（Cuban American National Foundation, CANF）は、キューバのカストロ社会主義政権の打倒に専念しているNPOの反体制組織。ホルヘ・マス・カノーサ（Jorge Mas Canosa）らが、1981年にアメリカのフロリダ州で設立した。日本語では、全米キューバ系アメリカ（米国）人財団、或いはキューバ・アメリカ財団とも称される。CANFは、亡命キューバ人組織としては、人員・資金ともに最大の規模を有し、アメリカなどで数千人の構成員を抱えている。長年、強硬的な反カストロ政権団体として知られていたが、1997年に設立者であるカノーサが死去してからは、伝統的な強硬路線を修正しつつある。なお、CNAFは、強硬路線の修正開始以降、共和党と同盟関係にある。

[編集] 概要

CANFは、フロリダ州のマイアミに本部を、ワシントンD.C.に支部を有している。また、タンパ、サンファン（プエルトリコ）、ウェストニューヨーク（ニュージャージー州）、ニューオーリンズ、ロサンゼルス、ジャクソンビル、シカゴの各都市には、CANFの代表者が常駐している。

1981年の設立以来、CANFはアメリカにおける主要な亡命キューバ人組織として、ワシントンD.C.におけるキューバ系アメリカ人のためのロビー活動を行なってきた。そして、CANFは過去20年にわたり、現キューバ政府（カストロ政権）へ対抗すべく、アメリカ政府が対キューバ政策を決定する際に、共和党と民主党の意見が一致するように働きかけを行なってきた。また、CANFは1990年から1992年にかけて、アメリカ政府が出資する非政府組織であるアメリカ民主主義基金から、25万ドルの支援金を受け取った。この支援金が、1997年のハバナにおける連続爆弾テロ（本項目『テロ活動』欄にて記述）の資金に使用されたと指摘する声もある資料1。

CANFは、対カストロ政権強硬派の筆頭組織として、マイアミの経済的裕福層の中に数多く存在する、反カストロ強硬派の支持を永らく受けてきた。しかし、CANF設立者のホルヘ・マス・カノーサが1997年に死亡したことで、カノーサが規定したCANFのイデオロギーに基づく組織的結合力が失われ始めた。

カノーサの死亡後、彼の息子であるホルヘ・マス・サントス（Jorge Mas Santos）が組織指導者の後任となった。しかし、彼は2003年に行なったロイター通信とのインタビューで、将来のキューバ国家像を巡り、カストロ兄弟（フィデル及びラウル）以外の現カストロ政権関係者とも、対話を実施したい旨を述べた。この発言は、キューバへの軍事侵攻も含め、対カストロ政権強硬政策を長らく実施しようとしてきた強硬派CANF支持者から強い批判を受けた資料2。そして2001年、カノーサが提唱したイデオロギーの信念を曲げない人々は、CANFから離別して「キューバ自由協議会」（Cuban Liberty Council）という組織を結成し、CANFは政策の方針対立による分裂に見舞われた。

最も、CANFが亡命キューバ人組織としては最大の組織であることに変わりはなく、CANFの方針転換は対キューバ政策に関する亡命キューバ人の考え方に変化が起きていることを示していると言える。そして、カストロの健康問題を契機に「ポスト・カストロ」政権に対する動きが活発化する中、CANFの活動にも注目が集まっている。

[編集] テロ活動

CANFは、キューバ政府や一般キューバ市民、対キューバビジネスへの反発によるテロ行為との関連性が指摘されている。すなわち、1997年7月から9月にかけて立て続けに発生し、一名の外国人犠牲者を出した、ハバナにある三軒のホテルを標的とする連続爆弾テロ資料3について、キューバ内務省は「CANFによって立案・実行された行為」と主張している資料4。CANFはキューバ内務省の主張を否定している資料5が、連続爆弾テロの主謀者とされるルイス・ポサダ・カリレス補足は、1998年に受けたニューヨーク・タイムズ誌とのインタビューにおいて、「キューバにおける観光産業の成長に冷や水をあびせるべく、一連のホテル爆破事件を引き起こした際に、CANFから財政支援を受けた」と供述した資料6。CANFがポサダの供述を強く否定したためか、インタビュー後にポサダは件の発言を撤回している。しかし、彼は自叙伝でCANF人士との長期に亘る交友関係について言及しており、ポサダとCANFに深い繋がりが存在することは確実な模様である。なお、CANFの元高官はマイアミの新聞に対し、1990年代に幾人かの指導者達が、キューバに対する攻撃を計画していたと述べている資料7。

[編集] 補足

ルイス・ポサダ・カリレス（Luis Posada Carriles、1928年-）：1997年のハバナにおける連続爆弾テロの実行主導者。シエンフエーゴス出身のキューバ人。1961年にアメリカへ移住し、1年間アメリカ陸軍に勤務する傍ら、フロリダ州で他の反カストロキューバ人人士と軍事教育を受ける。1976年10月にバルバドスのブリッジタウン沖合でキューバ航空455便が墜落した際に、墜落の原因となった爆発を引き起こした容疑者の一員として逮捕されたが、そのときは証拠不充分で釈放された。しかし、機密指定が解除された米国CIAおよびFBIの公文書において、ポサダはキューバ航空455便を爆破した実行犯「エンジニアS」の一員であると断言されている資料8。なお、ポサダは1997年のハバナにおける連続爆弾テロ以降、ベネズエラに滞在していたが、2005年4月にアメリカへの政治亡命を申請した。そしてその際に、彼の顧問弁護士はポサダがアメリカ政府に保護される要件として、彼が約40年にわたってCIAに協力してきた点を強調した。