カイロプラクティック
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カイロプラクティック(Chiropractic)とは、1895年 にアメリカ、アイオワ州ダベンポートのD.D.(ダニエル・デビッド)・パーマーにより創始された療法。日本には1916年、パーマーの設立したパーマー・スクール・オブ・カイロプラクティック卒業の川口三郎が伝えた。
カイロプラクティックはギリシャ語のChiro「手」とPrakticos「技術」の造語で、脊椎矯正療法とも呼ばれる。
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[編集] 概要
脊椎などの椎骨がずれて神経が圧迫され、機能を阻害されるために様々な症状が起こる という考えの元に、レントゲン写真にて角度を精査し、手によって脊椎を整えて身体の機能を回復させようとする療法である。それにより、人間が本来持っている自然治癒力(カイロプラクティックではイネイト・インテリジェンスと呼ぶ)を呼び起こすという。日本の柔術由来の柔道整復(接骨、整骨)や、昭和に創始された野口整体等とは全く異なるものである。
WHOのNGOにWFC(世界カイロプラクティック連合)が加盟し、世界数十カ国(例:アメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランド、香港、南アフリカなど)で法制化されている筋肉や骨といった、筋骨格系の機能と構造的な障害、そしてそれが及ぼす神経系の機能異常、ひいては健康全般への影響を診断、治療、予防する専門職である。脊椎マニピュレーション(アジャストメント)と呼ばれる徒手治療を特徴とし、薬物、外科を使わない自然治癒力を重視したヘルスケアである。
脊椎の変位により起こるサブラクセーション(一つの椎骨が上下の関係において正常な位置より変位して、神経圧迫を起こし、脳からのメンタルインパルス(神経エネルギー)の伝達を妨害している状態)をアジャストメントという手技で取り除き自らの自然治癒力を取り戻させる「代替医療」であり、それゆえ実践する人間は医師ではない(当然だが医師の中にもカイロプラクティック治療専門家がいる)。
アメリカの多くの州ではDoctor of Chiropractic(D.C)の名称で医療資格として認可されており、また欧米を中心とした国でカイロプラクティック専門家という資格として法制化されているが、脊椎治療での医療過誤が多少とも起こりえる為、現在の治療で脊椎矯正は主流で無くなりつつある。殆どの世界各国および日本の医学界では医療として認知されていない。またあはき法による「あん摩、マツサージ、指圧、柔道整復」にも含まれておらず、その他の医業類似行為として分類されている。また1950年ころにはマーティン・ガードナー『奇妙な論理』(ISBN 4150502722)では「疾患の原因をすべて背骨のずれに求めそれ以外の細菌等による罹患を認めていない」と彼の誤認を元に疑似科学として批判されている。日本では厚生労働省で医学的な観点から研究が行われているが、治療効果については有効とも無効とも結論は出されていない。
[編集] 法律上の問題
- 詳細は医業類似行為を参照。
上記にも書かれているが日本では法制化されていないため、法に定められる以外の民間療法行為となる。
[編集] 医業類似行為
あはき法では、「あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復」といった医業類似行為を行うためにはそれぞれの免許を受けること義務付けられており、「あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復」以外の医業類似行為については、「当該医業類似行為の施術が医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となる」とされている(厚生省医務局長通知)。
カイロプラクティックがあん摩・マッサージ・指圧に含まれるか否かについて、厚生省医務局は宮城県の問い合わせに対し、「カイロプラクチック療法は、脊椎の調整を目的とする点において、あん摩、マッサージ又は指圧と区別され、したがって、あん摩、マッサージ又は指圧に含まれないものと解する」と回答した[1]。
[編集] 厚生省の通知
各都道府県衛生担当部(局)長あて厚生省健康政策局医事課長通知(平成3年6月28日 医事第58号)において以下のように指導され、また危険性も指摘されている。
- 禁忌対象疾患の認識
- カイロプラクティック療法の対象とすることが適当でない疾患としては、一般には腫瘍性、出血性、感染性疾患、リュウマチ、筋萎縮性疾患、心疾患等とされているが、このほか徒手調整の手技によって症状を悪化しうる頻度の高い疾患、例えば、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症などと明確な診断がなされているものについては、カイロプラクティック療法の対象とすることは適当ではないこと。
- 一部の危険な手技の禁止
- カイロプラクティック療法の手技には様々なものがあり、中には危険な手技が含まれているが、とりわけ頚椎に対する急激な回転伸展操作を加えるスラスト法は、患者の身体に損傷を加える危険が大きいため、こうした危険の高い行為は禁止する必要があること。
- 適切な医療受療の遅延防止
- 長期間あるいは頻回のカイロプラクティック療法による施術によっても症状が増悪する場合はもとより、腰痛等の症状が軽減、消失しない場合には、滞在的に器質的疾患を有している可能性があるので、施術を中止して速やかに医療機関において精査を受けること。
- 誇大広告の規制
- カイロプラクティック療法に関して行われている誇大広告、とりわけがんの治癒等医学的有効性をうたった広告については、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律第十二条の二第二項において準用する第七条第一項又は医療法(昭和二十三年法律第二百五号)第六十九条第一項に基づく規制の対象となるものであること。
[編集] その他の問題点
法制化されていないために誰もがカイロプラクターを名乗ることができることによって、3ヶ月講義のみから2年間の短期養成学校まで民間資格を得た未熟な施術者が増え、過度の頚椎アジャストメントによる事故が報告された。それにより、前述の通り厚生省はカイロプラクテック各団体に「医業類似行為に対する取り扱いについて」を通知し、その中に禁忌対象疾患の認識や一部の危険な手技の禁止を指摘した。これにより各団体(ただし全団体ではない)により自主規制が設けられることになった。
しかし、未だに玉石混交のカイロプラクティック業界には、統一した資格制度と法制化が望まれている。国際基準のカイロプラクティック教育はCCE(Council on Chiropractic Education カイロプラクティック教育評議会)という第三者教育認定機関が定めた、最低全日4年制4200時間以上の教育であり、それ以下のものはWFCおよびWHOは正式なカイロプラクティック教育とみなさず、卒業生も「ドクター・オブ・カイロプラクティック」や「カイロプラクター」と呼ばれないのが現状である。そのため、法制化された国だけに関わらず、法制化されていない国々でもCCE基準の「国際基準カイロプラクティック教育」を遵守する教育機関が多くある。
業団体の意思の統一が図られることが急務ではあるが、現状ではかなり難しいと思われる。現在でも、厚生労働省はカイロプラクティックの法制化には全く動いておらず、資格化の実現にはそれ相応の時間がかかると思われる。平成16年度 保健所行政の施策及び予算に関する要望書(全国保健所長会)においては、「整体術(カイロプラクテック)やエステティック等の施術類似行為に対し早急に法的規制、管理指導を引き続き強化されたい」との要望が出されている。
今現在、ほとんどの学校が短期で卒業生を排出している事実は変わらず、カイロプラクティックを業となすものの社会的地位の低下を生んでいる最大の要因である。教育状況も数ヶ月のものから2年制パートタイムのものまで他所多様の教育機関が存在し、一言にカイロプラクターといっても知識、実力とも雲泥の差があるのは否めない。現状の法解釈を再度述べるなら、あくまでも人体に害をなさないことが前提である。そのような状態で人間の健康の回復を業とすることが如何に困難なことか容易に想像が出来る。リスクをともなうものに法制度が伴っていないことにたいする危機意識を持つべきである。
しかし最近の動きとしては、世界80カ国からなるカイロプラクティックの国際団体、WFC(世界カイロプラクティック連合)が1988年に設立され、1997年には国連の一機関であるWHO(世界保健機関)のNGO(非政府組織)に正式に承認されることとなった。WFCは団体加盟制であり、その代表団体の会員資格を有するのは一般に D.C. といわれる国際基準のカイロプラクターもしくはそれに準じた教育を受けた(例えばChiropractic Standardization Program修了)者である。WFCの日本代表団体はJAC(日本カイロプラクターズ協会)であり、1999年に加盟している。
日本国内でも国際基準の教育機関が次々と開校している。1995年には初の国際基準校として東京にオーストラリア公立大学であるRMIT大学日本校カイロプラクティック学科が開校し、アジア初の学校としてCCE認定を受けている。2006年には大阪の国際カイロプラクティックカレッジが開校した。
- この資格保持者の呼び名は「ドクター・オブ・カイロプラクティック」(略してDC)もしくは「カイロプラクター」ともいう。
- 2006年、WHOはカイロプラクティックに関するガイドライン「WHO guidelines on basic training and safety in chiropractic」を発行した。これによりWHOが定めるカイロプラクティックの国際基準というものがより明確になった。
[編集] 関連項目
- en:Chiropractic - 英語版の疑似科学例から
[編集] 外部リンク
- カイロプラクティック取扱いに関する質問主意書
- 参議院議員堀利和君提出カイロプラクティック取扱いに関する質問に対する答弁書
- 無資格マッサージ等取り締まり関係資料 - あはき等法推進協議会
- あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師等に関する法律ならびに関係法令の遵守と違法者取締りの徹底強化に関する請願書 - 愛媛県あはき推進協議会
- 日本カイロプラクターズ協会(WHO加盟WFC日本代表団体)
- 世界カイロプラクティック連合(WHOに加盟するカイロの世界団体)
- ChiroWatch (英文)
- RMIT大学日本校(日本のchiropractic大学)
- 国際カイロプラクティックカレッジ(chiropractic教育機関)
- CCEI 国際カイロプラクティック教育審議会 (英文)
- WHO guidelines on basic training and safety in chiropractic (WHOのカイロプラクティックに関するガイドライン 英文)
- WHOのカイロプラクティックに関するガイドライン 日本語翻訳版
- ↑ 法令適用上の疑義について - 厚生省医務局長あて宮城県衛生部長照会
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