エンマコオロギ
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エンマコオロギ | ||||||||||||||||||||
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灯火に飛来したメス |
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分類 | ||||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||||
Teleogryllus emma Ohmachi et Matsuura, 1951 |
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英名 | ||||||||||||||||||||
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エンマコオロギ(閻魔蟋蟀)Teleogryllus emma は、バッタ目(直翅目)・コオロギ上科・コオロギ科に分類されるコオロギの一種。日本に分布するコオロギでは最大種で個体数も多く、身近な昆虫の一つである。日本で「コオロギ」と言えばエンマコオロギかツヅレサセコオロギを指すことが多い。
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[編集] 特徴
成虫の体長は26-32mmほど。背面は一様に黒褐色、腹面は淡褐色だが、体側や前翅は赤みを帯びる。体つきは太短く、頭部から腹部までほぼ同じ幅で、これまた短く頑丈な脚がついている。
頭部はつやのある半球形で、口器がわずかに下向きに突き出る。触角は細く、体よりも長い。複眼の周りに黒い模様があり、その上には眉のように淡褐色の帯が入る。この模様が閻魔の憤怒面を思わせることからこの和名がある。また、日本の昆虫学者である大町文衛と松浦一郎によって、学名の種小名にも"emma"が充てられている。
オスとメスを比べると、メスには長い産卵管があり、前翅の翅脈は単純に前後に直線的に伸びる。一方、オスは産卵管がなく、前翅にやすり状の発音器や共鳴室を備え、翅脈が複雑な模様をなす。なお、終齢幼虫は成虫によく似るが、まだ背中の翅が小さく鱗状なので区別できる。
北海道北部と南西諸島を除く日本全国に広く分布する。草原や田畑、人家の周囲などに生息し、個体数も多い。
成虫は年1回だけ、8-11月頃に発生する。昼間は草木の茂みや枯れ草、資材などの陰に潜む。夜になると周辺を徘徊し、灯火にも飛来する。食性は雑食で、植物の他に小動物の死骸なども食べる。
敵は鳥類、ニホントカゲ、カエル、カマキリ(特に地上性のコカマキリ)などである。敵が近付いた際は太い後脚で大きく跳躍して逃げるが、成虫は長い後翅を羽ばたかせて飛翔することもある。ただし飛翔は跳躍ほど敏捷ではなく、直線的にゆっくり飛ぶ程度である。
オス成虫は前翅を立ててこすり合わせ、「コロコロリー…」とも「キリリリー…」とも聞こえる鳴き声を出す。通常の鳴き声は長く伸ばすが、オス同士が遭遇し争う際は鳴き声が速く、短く切る「キリリリッ」という声になる。また、夏の暑い時期には夜しか鳴かないが、秋が深まり気温が下がると昼に鳴くようになる。
[編集] 生活史
エンマコオロギの寿命は1年で、日本の季節変化に合わせたものとなっている。
オス成虫は鳴き声を発して他個体との接触を図る。メスがやってくると交尾するが、オス同士が遭遇すると争いになる。交尾したメスは長い産卵管を地面に突き立て、長さ3mmほどのソーセージ形をした卵を一粒ずつ産卵する。成虫は冬になると死んでしまうが、卵はそのまま地中で越冬し、周囲の水分を吸収しながら胚発生が進む。
卵は翌年の5-6月頃に孵化する。幼虫は全身黒色で、胸部と腹部の境界に白い横帯模様がある。幼虫も成虫と同様に雑食性で、いろいろなものを食べて成長する。脱皮を繰り返して終齢幼虫になると白い帯が消えて腹側が淡褐色になり、翅が短いこと以外はほとんど成虫と変わらなくなる。
充分に成長した終齢幼虫は物陰で羽化する。背中が割れて淡褐色の成虫が現れ、白く縮んだ翅を伸ばす。成虫は体が黒くなると再び活動を始める。成虫の期間は1-2ヶ月ほどで、この間に繁殖行動を行う。
[編集] 文化
エンマコオロギはかつて食用や民間療法の薬として利用されていたが、20世紀後半以降このような利用は一般的でなくなり、身近な小動物の一つとして飼育の対象となる程度である。なお、童謡「虫の声」にもコオロギが登場するが、これはエンマコオロギではなくカマドコオロギだと云われる。
飼育は脱出できない水槽に土砂を敷き、植木鉢や石などを据えた隠れ家と水場を作っておけば比較的簡単に飼育できる。餌も特に選ばないが、一度に多く飼うと共食いが起こるので、植物質以外に鰹節などの動物質の餌も与えるようにする。産卵した際は飼育容器を日陰に置き、湿気を保つと翌春に幼虫が孵化する。
[編集] 近縁種
- タイワンエンマコオロギ Teleogryllus occipitalis (Serville, 1839)
- 外見はエンマコオロギに似るが、オスの鳴き声は「リッ、リッ、リッ…」とテンポが速い。また、春と秋に年2回発生し、卵ではなく幼虫で越冬する。東南アジアから中国南部、台湾を経て南西諸島、九州、四国、紀伊半島までの温暖な地域に分布する。
- エゾエンマコオロギ T. yezoemma (Ohmachi et Matsuura, 1951)
- 成虫の顔がほとんど黒いことでエンマコオロギと区別する。和名通り北方系の種類で、本州中部以北と北海道に分布する。エンマコオロギと同様、学名の種小名に"yezoemma"が充てられている。
- ムニンエンマコオロギ T. boninensis Matsumura, 1984
- 小笠原諸島・母島の固有種で、エンマコオロギより小型。