エンジンの振動
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エンジンの振動とは、レシプロエンジンにおいて主にピストンが上下することによって発生する振動のことである。クランクシャフトの回転数と同じ周波数の振動を一次振動、二倍の振動を二次振動といい、さらに高次の振動もあるが、実際に問題となるのは一次振動、二次振動が主である。
[編集] 主な直列エンジンの振動
直列4気筒エンジンでは二次振動が問題となり、大排気量の直4エンジンではクランクシャフトの回転数の二倍の速度で回転する二本のバランス・シャフトにより振動を低減させることが主流となっている。直列6気筒エンジンでは一次振動、二次振動ともバランスし、元より振動バランスのよいエンジンである。直列3気筒エンジンでは1.5次の振動が問題となり大きな排気量ではバランス・シャフトの使用も検討される。
[編集] V型エンジンの振動
V型2気筒エンジンではバンク角を90°とすることで一次振動が低減される。90°以外のバンク角も用いられるが、本田技研工業のように振動を低減させるためにクランクにウェブをもうけクランクピンに位相を付ける位相クランクを用いている例がある。V型8気筒では振動を低減させるためにクランクシャフトに工夫が見られる。多くの乗用車用V8エンジンで用いられるのはクロスプレーンと呼ばれるクランクシャフトである。これはクランクシャフト末端から見ると十字に見えることからこう呼ばれる。一方、レース用エンジンや一部の市販車用エンジンではフラットプレーンと呼ばれる直4エンジンと同じクランクシャフトが用いられる。これはクロスプレーンで必要な重いカウンターウェイトが必要でないために、レスポンス等に優れるが、直4エンジンと同じ二次振動の問題がある。この問題を解消するために乗用車用のフォルクスワーゲンのW型8気筒エンジンではバランス・シャフトが使用されている。
[編集] その他
直列5気筒エンジンやそれを元にしたV型10気筒エンジンではバランス・シャフトが用いられたこともあったが、今日では用いられない傾向にある。