エレメカ
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エレメカとは、エレクトロニクスとメカトロニクスから産み出された造語で、アーケードゲームの中で特にビデオゲームとメダルゲーム、ピンボールを除くものを指す。
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[編集] 概要
エレメカは、ビデオゲームが登場する以前は、遊園地やデパートの屋上などに設置されていたゲームコーナーの主役であった。
モグラたたきやエアホッケーなどがその代表例であり、基本的にはゲームの入出力が機械的に行われるものである。クレーンゲームやルーレットなどのプライズゲーム、占いゲームやパンチ力を測定するパンチングマシンなどといったものがこれに該当する。広義にはゲーム以外の電動遊具、アミューズメント用ロボット、ポップコーンや綿菓子などのベンダーといった、遊技場に設置される機器全般をも含める場合もある。
時代の変遷にしたがって、その地位はビデオゲームに奪われてしまったものの、クレーンゲームのように現役で稼動しているエレメカも多数存在する。ビデオゲームが登場してからは、ブラウン管や液晶の画面に得点や情報を表示するものも次第に登場し、今日ではビデオゲームとの境界線が次第に曖昧になりつつある。動く大型筐体を使用した体感ゲームなどは、エレメカとビデオゲームが融合したものであるとも言える。
その一方で、遊戯装置としてはアーケードゲームには無い全身運動が含まれる事から、熱心な愛好者も見られる他、ルールが単純である事から誰にでも楽しめるものとして、設置スペースに余裕のあるゲームセンターでは、依然としてこれらのコーナーが存在する。
[編集] 構造と歴史
古くこれらの機器は、入力には操作部分に取り付けられたマイクロスイッチを使用し、タイマーやリレーを利用して、アナログコンピュータや機械的な演算装置によって動作していた。スイッチを操作すれば、所定の動作をするという単純な物で、タイミングはタイマー回路で制御され、ランプの点滅によって表示を行ったり、モーターや電磁石によって模型を動かしていた。この時代、ゲームコーナーといえば、これらエレメカが設置されている様式が一般的であった。
このアナログコンピュータやタイマー回路がICに、更にはLSIといった集積回路に取って代わった1960年代頃から、次第に高度化が始まり、次第に今日のアーケードゲームのように複雑な物が登場していった。特にスペースインベーダー発売前後では、光学機器や機械制御による非常に凝った物が作られ、後述のサブマリンのように、潜望鏡から覗いた状態で照準を合わせ、魚雷発射ボタンを押すと、魚雷が焦点をずらしたレンズからの光によって表現された航跡を描き、模型の戦艦に当たると轟沈する(遥か沖合いの原潜に到っては、閃光と共にキノコ雲が上がるという「かなりヤバイ」演出もあった)物も製作された。当時のアーケードゲームは非常に解像度が荒かった事も在り、エレメカの「リアルさ」は1980年代初頭まで優位を保っていた。
エレメカの動作はその多くでは、電磁石やモーターによる部分が多いため、磨耗や潤滑不足・断線などによる機械的トラブルも発生する。この工学上の問題は要所の強化によってある程度は防がれていたが、摩滅による損傷によって、古い機器は1980年代を通して次第に姿を消していった。
その一方で一定の需要が存在しているため、現在でもマイコン制御によるエレメカや、アーケードゲーム同様の高度なコンピュータを内蔵し、得点表示や操作説明をブラウン管で表示、操作部分や動作効果部分を従来のエレメカ同様か更に発展させた物が登場している。
これらはセンサー技術の発達により、更に進歩する動きも見られる。
[編集] 主要なエレメカ
- モグラ叩き
- トーゴ(東洋娯楽機)『モグラ退治』など。穴から出入りするモグラの頭をハンマーで叩いて、制限時間内での得点を競うゲーム。後にワニワニパニック(ナムコ)など、同種のゲームが多数作られたヒット商品だが、近年でも幼児にも判りやすいルールであるため、稼動機種はデパートの遊技場などで一般的に見られる。
- エアホッケー
- 空気圧でプラスチック製のパックを盤面より浮上させ、互いに打ち合って相手のゴールを狙う対戦型のゲーム。各社より多数発売されているが、家庭向けの製品も存在する。現在でも様々な機能を追加した物もあり、大型ゲームセンターやボーリング場などには片隅に大抵見かけられる。
- サブマリン
- 販売元ナムコ。動く模型の軍艦をめがけて潜望鏡で狙いをつけ、定められた数の魚雷で攻撃して、得点を競うゲーム。遠方の船ほど得点が高く、最も遠い場所にある空母を撃破すると、投影機能を駆使した派手な爆発のエフェクトが見られる。
- 射撃
- ナムコのシュータウェイ(1977年登場・続編のIIもリリースされた)やコスモスワット(1984年登場)等の光線銃物が1990年代初頭まで、実際に稼動している物が見られた(一部では、地方のドライブインで稼動機が2000年ごろでも見掛けられたとする情報もある)。スクリーン上に投影された的(シュータウェイではクレー射撃のクレー)を撃つと言うものだが、当たり判定はかなりシビアで標的の動きは極めて速いという、実際のクレー射撃並みの射撃制度(一回のクレー射出で2発しか撃てない)という辺りで、現在の射撃ゲームとは違い、弾を乱射できないストウィックな内容であった。後年同社から登場したコスモスワットでは、子供でも楽しめるよう弾数無制限で、引き金を引きまくって乱射できたが出荷台数が少なく、余り見かけられなかった。どちらも、レンズとランプでスライド投影(スライド映写機をマイコンとモーターで制御して、的の移動を表現していた)された的を撃つという内容だったが、標的に命中させる事で投射されている光点がエフェクト用のスライドに切り替わり、破片が飛び散るという効果が表示された。
- 他にも、1970年代には滑車とワイヤーで台に据え付けられた銃の動きをトレースしていたと推測される、的を撃つと専用のパンチカードに「どの辺りに当たったか」を出力する精巧な物も存在した。
- 現在ではこれらの大半は大型プロジェクションモニターを利用したガンシューティングゲームへと置き換わっている。
[編集] 関連事象
このゲームは、アーケードゲームに見られる緻密さや派手さは少ないが、見て誰でも動作が理解しやすい。特にモグラたたき系の物では、幼児から老人まで誰でも遊べる事もあって、デパートやスーパーマーケット等に併設された遊戯コーナーでは定番の物となっている。
[編集] リハビリ
全身を使って操作するゲームも多い事から、近年ではこれの難易度や反応性を調整した物を、病院等でリハビリテーションに利用し様という動きも在り、メーカーを交えてそのような娯楽リハビリ機器の開発を行っている企業もある。(例・ナムコ・ハッスル倶楽部)
これらの機器では、従来は単調なリハビリ行為が、点数表示などで進歩具合が患者自身にも判り易く成る事から、よりリハビリ効果が上がると考えられており、また患者側もゲーム感覚で娯楽とリハビリが行えると好評であるという。全身を使うダンスゲーム等を試験的に取り入れる所も出てきており、同種機器開発は今後も進むと見られる。
[編集] コンピュータゲーム化
近年では、家庭用ゲーム機の機能向上に伴い、このエレメカをコンピュータゲーム上で再現しようとする物も登場している。勿論本物のエレメカのように筐体のハンドルなどを握り締めて操作出来る訳ではないが、そのノスタルジックな雰囲気や単純なルールが、複雑で自動化されたコンピュータゲーム世代には新鮮に映るようだ。