エルゴード理論
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エルゴード理論(エルゴードりろん)は、ある力学系がエルゴード的(ある物理量に対して、長時間平均と位相平均が等しい)であることを示す、すなわちエルゴード仮説の立証を目的とする理論。現在も、統計力学の基礎を成すエルゴード理論は、一般の場合には証明されておらず、仮説の域を出ていない。また、物理学でのエルゴード性を抽象化した、数学における保測変換の理論をそう呼ぶこともある。
- 長時間平均
- 統計的、事象的、観察結果
- 位相平均
- 計算論的、収束するもの、あるいは一定のサイクルに収めることの出来るもの、全事象等確率的として推察できるもの
上記2つの平均が同じような値(スカラー)を得られるものについて、エルゴード的ということが出来る。
[編集] 保測変換
確率測度Pにおいて保測変換Tは任意の事象Aにおいて P(TA) = P(A) といった具合にAの起こりうる確率を変化させずに別又は同じ事象TAに変換するものをいう。即ち、確率測度という大きさの測り方を指定したときに、大きさを変えずに変化させる操作の総称をいう。ただし、 P(T − 1A) = P(A) であることはmeasure preserving(日本語訳:測度の保測性)という名がついており、可逆性を満たせば保測変換になるという広いクラスとなる。
[編集] エルゴード仮説
エルゴード仮説とは、長い時間尺度(time scale)でみると、微小状態からなる位相空間内で同じエネルギーをもった領域に費やされる時間は位相空間でしめる体積に比例するというもの。すなわち、そのようなすべての実現可能な微小状態は長い目で見ると等しい確率で起こるということ。さらに言いかえれば、時間平均と、統計力学でいうアンサンブル(起こりうる微小状態の数だけある系のレプリカの集まり)内での平均は等しくなるということ。
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