エラノス会議
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
エラノス会議(えらのすかいぎ、Eranos)は、宗教学、神話学、深層心理学、神秘主義などをめぐり、東西の研究者が参集して開いた学際的会議の名称である。人間の精神性を中心の問題とし、開催地と主題との関係もあって、カール・ユングの思想と学説(分析心理学)が大きな流れを主導した。
目次 |
[編集] 概説
エラノスという名前は古典ギリシア語の晩餐会の由来し、これは幾人かの客達が自前で食べ物を持ってきて、互いに頒ち合い、食卓を囲んで談笑しあう会食を意味する。1933年に Olga Froebe-Kapteyn によってこのグループが設立され、それ以来スイスのアスコナ近くのマッジョーレ湖岸にある彼女が私有する屋敷で毎年会議が開催された。60年以上の間、このイベントは異なる知の領域からなるざまな思想家達が人間の精神に関する様々な事柄を討議するための接点として貢献した。
各々の大会は8日にわたって行われるが、その間、全ての参加者は食事、睡眠、生活を共にすることよって、議論の雰囲気は促進され、相互理解が深まる。毎年、新しいテーマに取り組み、各々の思想家が主題についての2時間の講義を行い、このアイデアの晩餐会への彼(女)の貢献によって、参加している多種多様な思想家は生産的で知的な談話に移っていく。
[編集] エラノス会議の起源
Froebe-Kapteynは、著名なドイツの宗教史研究家ルドルフ・オットーの提案によりこのグループを設立した。Froebe-Kapteynは、円卓会議のオランダの愛好家であり、初期には、スピリチュアリストがこの会議の発足に関係していた。エラノスは精神の起源の問題に関心があった。最初のテーマ『東と西のヨガと瞑想』は、1930年代初期において実際に先駆的なテーマであった。エラノスはその設立初期において本質的にカール・ユングの思想と関連するようになった。ユングはエラノスの正規参加者だったので、彼の神話の元型の概念はエラノスの基礎理論となった。
[編集] 参考文献
- 『時の現象学 1 エラノス叢書 1』
- アンリ・シャルル・ピュエシュ、アンリ・コルバン著 神谷幹夫訳 平凡社(1990.10) ISBN 4-582-73321-2
- 『時の現象学 2 エラノス叢書 2』
- エルンスト・ベンツ〔ほか〕著 山内貞男〔ほか〕訳 平凡社 (1991.6) ISBN 4-582-73322-0
- 『人間のイメージ 1 エラノス叢書 3』
- エルンスト・ベンツ、エーリク・ホルヌング、レオ・ベック〔ほか〕著 薗田坦〔ほか〕訳 平凡社 (1992.1) ISBN 4-582-73323-9
- 『人間のイメージ 2 エラノス叢書 4』
- ジルベール・デュラン、エーリヒ・ノイマン著 久米博、松代洋一訳 平凡社 (1991.10) ISBN 4-582-73324-7
- 『光・形態・色彩 エラノス叢書 5』
- アドルフ・ポルトマン、ミルチャ・エリアーデ、ジャン・ブラン(Jean Brun)、ドミニク・ザーアン〔ほか〕著 谷口茂〔ほか〕訳 平凡社 (1991.2) ISBN 4-582-73325-5
- 『一なるものと多なるもの 1 エラノス叢書 6』
- アドルフ・ポルトマン、 アンリ・コルバン、ゲルショム・ショーレム、〔ほか〕著 桂芳樹〔ほか〕訳 平凡社 (1991.8) ISBN 4-582-73326-3
- 『言葉と語り 1 エラノス叢書 8』
- ヴィクトル・ツカーカンドル、アドルフ・ポルトマン、エルンスト・ベンツ〔ほか〕著 芦津丈夫〔ほか〕訳 平凡社(1991.4) ISBN 4-582-73328-X
- 『言葉と創造 エラノス叢書 9』
- シュムエル・ザンブルスキー、エーリヒ・ノイマン、ゲルショム・ショーレム、アドルフ・ポルトマン 著 村上陽一郎、松代洋一、市川裕、桂芳樹 訳 平凡社(1995.6) ISBN 4-582-73329-8
- 『創造の形態学 1 エラノス叢書 10』
- K・ラインハルト、ミルチャ・エリアーデ、L・ヴァン・デル・ポスト、ゲルショム・ショーレム 〔ほか〕著 辻村誠三〔ほか〕訳 平凡社 (1990.12) ISBN 4-582-73330-1
- 『エラノスへの招待 回想と資料 エラノス叢書 別巻』
- マーチン・グリーン、アドルフ・ポルトマン、R. リッツェマ、井筒俊彦、上田閑照、河合隼雄、高山宏、種村季弘〔ほか〕執筆 桂芳樹〔ほか〕訳 平凡社 :(1995.11) ISBN 4-582-73332-8
- 『相貌と風貌―鈴木大拙写真集』
- 上田閑照、岡村美穂子著 禅文化研究所 (2005.11) ISBN 4-88182-208-X
- 『深層意識への道 グーテンベルクの森』
- 河合隼雄著 岩波書店 (2004.11.25出版) 第4章「深層意識の探求(13.エラノス会議)」 ISBN 4-00-026987-9
[編集] 関連項目
[編集] 関係者
- ジョーゼフ・キャンベル(Joseph Campbell、神話学)
- ルドルフ・オットー(宗教学)
- アンドレアス・シュパイザー(Andreas Speiser、数学)
- アンリ・シャルル・ピュエシュ(Henri-Charles Puech、グノーシス主義研究者→Gospel of Thomas)
- シュムエル・ザンブルスキー(Shmuel Sambursky)
- アンリ・コルバン(Henry Corbin、イスラム神秘主義)
- ゲルショム・ショーレム(Gershom Sholem、ユダヤ神秘主義→カバラ)
- ルイ・マシニョン(Louis Massignon、オリエント学)
- フーゴー・ラーナー(教会史、キリスト教神学)
- ハインリヒ・ツィンマー(Heinrich Zimmer、インド学)
- ミルチャ・エリアーデ(宗教学)
- エーリヒ・ノイマン(Erich Neumann、精神医学・神話学)
- エルンスト・ベンツ(Ernst Benz、東方教会史・神秘主義)
- カール・ケレーニイ(Karl Kerenyi、神話学・古典学)
- ジル・クィスペル(キリスト教教会史家、グノーシス主義研究者)
- アドルフ・ポルトマン(Adolf Portmann、生物学)
- パウル・ティリッヒ(Paul Tillich、組織神学)
- ファン・デル・レーウ(Gerardus van der Leeuw、宗教現象学 Phenomenology of religion)
- マルティン・ブーバー(宗教哲学)
- カール・レーヴィット(哲学)
- 鈴木大拙(禅研究・東洋思想家)
- 上田閑照(エックハルト研究)
- 井筒俊彦(イスラーム思想研究)
- 河合隼雄(分析心理学)
- 大橋良介(哲学、美学、宗教学)
- 花岡永子(西田幾多郎、ホワイトヘッドの哲学、宗教学)
[編集] 関連事項
[編集] 外部リンク
- エラノス会議のサイト 英語
- エラノス会議出席者一覧 ドイツ語
- エラノス財団 英語
- Eranos Yearbooks 英語
- 塾統~慶應義塾の伝統④井筒俊彦