ア・カペラ
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ア・カペラ (イタリア語 : a cappella)とは、無伴奏で合唱・重唱すること、またはそのための楽曲を言う。
- 恒星のカペラとは全く違う。
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[編集] 概要
イタリア語で「チャペルのように」を意味し、教会合唱の様式を意味するものであった。この「チャペル」というのはバチカンにあるシスティーナ礼拝堂のことであり、それ以外の中世の教会では、パイプオルガンによる伴奏が一般的で、無伴奏での合唱は禁じられていた。つまり、「ア・カペラ」とは本来システィーナ礼拝堂で演奏される無伴奏の合唱のみを指していたのである。それが後世になって楽器の伴奏を用いずに宗教曲等を合唱・重唱すること全般をそう呼ぶようになった。なお、現在では更に転じてポピュラー音楽の一スタイルの名前としても用いられている。
[編集] クラシック音楽でのア・カペラ
ア・カペラは教会音楽で古くから頻用される。グレゴリオ聖歌がその好例である。アーミッシュ派、バプテスト教会、キリスト教会をはじめとしたいくつかの教派では、宗教行事において楽器を伴奏に用いないことで知られる。
作曲家たちは中世・ルネサンス時代と対位法的に声部を掛け合わせていく方法でア・カペラの合唱を練り上げてきた(ポリフォニー音楽)。バロック時代、古典派の時代で和声法が徐々に確立する流れと共に、ソプラノ・アルト・テノール・バスの4声からなる合唱の作曲方法が取られ、ア・カペラの合唱は「横の流れ」と「縦のハモり」を得ることになった。
現在でも非常に多くの作例があり、合唱団の重要なレパートリーとなっている。
[編集] ポピュラー音楽の「アカペラ」
以上のようにア・カペラはクラシックな合唱曲のものであった。しかし一部のポピュラーアーティスト達がア・カペラのスタイルに注目するようになり、1980~90年代にかけてミュージックシーンで人気が沸騰することとなった。その火付け役となったのがTAKE6などといったア・カペラグループのヒットである。日本でア・カペラ人気を牽引した立役者にはゴスペラーズが挙げられるだろう。彼らより先にア・カペラを自らの音楽に取り入れたのはチキンガーリックステーキである。
ポピュラー音楽のア・カペラでは、クラシックの和声的、対位的な構成だけでなく、ジャズ・ハーモニーによる構成をともなうことも多い。クラシックの合唱と異なりマイクの使用を前提とするため声でパーカッション効果を出す(ヴォイス・パーカッション、ヒューマンビートボックス)など様々な手法を用いることができる。
なお、ポピュラーにおいてはアカペラという表記が一般的である。
[編集] 演奏上の留意点
ア・カペラを演奏する際には、伴奏のある場合と異なりピッチの調節が大きな課題となる。演奏前にピッチパイプなどで音をあわせるが、それ以降の音高のずれは蓄積していってしまうため、演奏者の音感により正確さが求められるのである。また、伴奏のないぶん和音の美しさで声に厚みを持たせているのでベースを中心にぴったりハモっている必要がある。