アルゴナウタイ
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アルゴナウタイ(古典ギリシア語:Ἀργοναύται Argonautai)は、ギリシア神話の長編叙事詩に登場する英雄たちの総称。イアソンに率いられて巨大なアルゴ船で数々の航海をする。「アルゴの船員」を意味する古典ギリシア語のἈργοναύτης Argonautes(アルゴナウテース)の複数形がアルゴナウタイである。
時代設定はトロイア戦争の前。テッサリアのイオルコスの王子イアソンは、父から王位を奪ったペリアスに王位の返還を求めるが、黄金の羊の毛皮を要求される。そこでイアソンは黄金の毛皮を求めて黒海東端のコルキス王国(現在のグルジア西部)への航海を計画し、ギリシア中から勇者を募って船員を集め、プリコスの子で船大工のアルゴスに造らせた巨船を彼の名から「アルゴ」と命名し、イオルコスからコルキスへ向けて出航した。船員(アルゴナウタイ)となった英雄の数は約50名(40~55)であったといわれる。イアソンおよび後に乗船するコルキス王女メデイアは、アルゴナウタイとして数えないことが多い。
一行は、レムノス島などを経てコルキスに達し、黄金の毛皮を獲得する。イアソンと恋に落ちた王女メデイアを乗せ、さらに数々の冒険の後に帰国した。アルゴナウタイの物語としては、アポロニウス著『アルゴナウティカ』が非常によく知られている。
[編集] アルゴナウタイの英雄たち
- アウトリュクス(Autolycus)
- アエタリデス(Aethalides)
- アカストゥス(Acastus):ペリアスの子
- アスカラプス(Ascalaphus)
- アスクレピオス(Asclepius):アポロンの息子で医術の天才。
- アタランタ(Atalanta):世界一の俊足の女狩人
- アムピオン(Amphion)
- イオラス(Iolas)
- イダス(Idas)
- イドモン(Idmon)
- エウペムス(Euphemus)
- エウリャルス(Euryalus)
- エキオン(Echion)
- オイレウス(Oileus)
- オルフェウス(Orpheus):アポロンの息子で竪琴の名手。
- カストル(Castor):ポルックスの双子の兄
- カライス(Calais):ハルピュイアの子で虹の女神イリスの甥。ゼテスとは兄弟。
- カントス(Canthus)
- ゼテス(Zetes):カライスとは兄弟。二人とも空中を飛ぶ能力の持ち主。
- ティピス(Tiphys)
- テセウス(Theseus):アテナイの王子。ミノタウロスを倒した英雄。
- テラモン(Telamon):大アイアス、テウクロスの父
- ヒュラス(Hylas):ヘラクレスの息子
- ピロクテテス(Philoctetes):ヘラクレスの親友で弓の名手。
- ブテス(Butes):アテナイの養蜂家
- ヘラクレス(Heracles):ゼウスの息子で古今無双の英雄。
- ペレウス(Peleus):アキレウスの父
- ポエアス(Poeas)
- ポリクリュメムス(Poriclymenus)
- ポリュペムス(Polyphemus)
- ポルックス(Polydeuces):カストルの双子の弟
- メレアゲル(Meleager):カリュドンの王子でヘラクレスの義兄。
- ラエルテス(Laertes)
- リュンケウス(Lynceus)
アルゴナウタイのメンバー構成にはさまざまな説がある。例えば、アテナイの英雄テセウスもアルゴナウタイの一人に数えられることがあるが、これには異論がある。神話では、若きテセウスが父に会うためにアテナイに到着し、このとき父アイゲウス王の後妻メデイアに毒殺されそうになるが、罠から逃れてメデイアを追放する。メデイアはアルゴナウタイの冒険時にコルキスの王女であり、アイゲウス王に嫁いだのはその後であるから、さらにその後にアテナイ王となったテセウスがアルゴナウタイに参加したとする話と矛盾する。
[編集] アルゴナウタイを描いた現代の作品
- アルゴ探検隊の大冒険(Jason and the Argonauts):アルゴナウタイの冒険を描いた特撮映画(1963年、イギリス・アメリカ)
- アルゴノーツ(Jason and the Argonauts):同じくアルゴナウタイの冒険を描いたテレビドラマ(2000年、アメリカ)