くしゃみ講釈
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くしゃみ講釈(くしゃみこうしゃく)は、落語の演目の一つ。覗きからくりや講釈の素養が求められる難解な噺で、東京では現在やっているのは柳家権太楼など少数であるが、上方落語では一門を問わずいずれもが演じ、題名を「くっしゃみ講釈」とする場合が多い。戦前では5代目笑福亭松鶴の十八番であった。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
[編集] あらすじ
デートの現場を、突然乱入してきた男にメチャクチャにされた主人公。数日後、兄貴分にその話をすると、相手の正体は一龍斎貞山の弟子で「一龍斎貞能」という講釈師だという事が判明した。頭にきた主人公は復讐を決意、「殴り倒してやる」と息巻く彼に、兄貴分は「もっといい手がある」とある方法をアドバイスした。(上方では講釈師の名は後藤一山。)
その方法とは、講釈場の最前列に陣取り、講釈師が語り始めたら胡椒を火鉢でいぶしてその煙を浴びせかけてやると言うもの。そして、講釈が始まる夜までに角の乾物屋で胡椒を買ってくるよう指示を出したのだ。ところが、男がいざ買いに行こうとすると、まず「何を買うのか」を忘れ、それを教えると今度は「何処で売っているのか」、それを教えると「何時行くのか」、そして、揚句の果てには「誰が行くのか」とさっきの話を全部忘れてしまった。
呆れた兄貴分が咎めるが、男は「医者に望遠鏡(健忘症の間違い)の気があるって言われた」と何処吹く風。ますます困った兄貴分は、男が趣味でやっている覗きからくりの物真似から、「覗きからくりの演目」→「八百屋お七」→「お七の恋人は?」→「小姓の吉三」→「胡椒」と連想ゲーム方式で胡椒を思い出すようアドバイスをしたのだ。
「さっきのは冗談だった」と、笑いながら乾物屋へ向かった男。ところが、店につく頃には冗談に気を入れすぎたせいで本当に何を買うのか忘れてしまっていた。困った男は、兄貴分のアドバイスを参考に店先で本当に「覗きからくりの物真似」をやり、何とか胡椒を思い出した。 ところが胡椒は売り切れ、仕方なく店主が勧めた唐辛子の粉を買った。
そして講釈場。講釈師が登場し、『三方ヶ原軍記』(『難波戦記』の場合も)を語りだした。計画通り煙でいぶしてやると、講釈師の語りはラップのように一所を行ったり来たりとメチャクチャになってしまう。手はずどおり講釈師にケチを付けると、講釈師が「何か故障(文句)があるのですか?」と聞いてきた。男はすかさず「胡椒が無いから唐辛子だよ」(「胡椒が無いんでとんがらしをくすべた」)
[編集] 歌
全編にわたって笑いがちりばめられている。極め付きは、終わり近くで主人公がうれしさの余り歌う場面。その歌詞は以下のとおり。
- おけら けむし げじ かにぼうふり
- せみ かわず やんま ちょうちょに きりぎりすにはったはた
- ぶんぶの背中はピーカピカ
虫尽くしの戯れ歌だが、ストーリーに関係ないナンセンスさがある。昭和40年代のラジオ中継にて、当時売りだし中で、歌のレコードを何枚も出したことのある笑福亭仁鶴が歌うと、会場中大爆笑であった。