T-37 (航空機)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
T-37は1950年代アメリカ空軍の訓練課程オールジェット化構想に基づいてセスナが開発した初等ジェット練習機。練習機で一般的な前後に座席を配置するタンデム複座式ではなく、左右に座席を配置する並列複座方式を取っているのが特徴。
目次 |
[編集] 概要
1961年4月から、それまでの初等練習機T-34 メンターを廃止し、全ジェット訓練コース(T-37→T-38)が開始されたが、1964年には訓練効率と経済性の面から飛行適性検査機T-41の導入が始められた。1986年に本気の後継機となるはずのフェアチャイルドT-46計画が頓挫したため、1989年にセイバーライナー社によるT-37B寿命延長改修が始められたが、1999年以降本格的に退役が進められている。
[編集] 派生型
[編集] XT-37
T-37のプロトタイプ機で、は1954年10月12日に初飛行。
[編集] T-37A
[編集] T-37B
T-37Aのエンジンを強化し、航法装置を改良した機体。1968年までに449機生産された。なおA型の大部分は後にB型仕様に改修された。
[編集] T-37C
主翼下に2ヶ所のハードポイントと翼端増槽(緊急時に切り離し可能)を追加し、照準器とガンカメラを装備して軽武装を可能とした機体。198機製造され、全て外国に供与されている。
[編集] A-37ドラゴンフライ
1960年代初期、東南アジアにおいて南ベトナム解放民族戦線やパテート・ラーオ、クメール・ルージュ、新人民軍などの共産系ゲリラの活動が活発化しており、アメリカは対抗策の一つとして、親米国にCOIN機としての運用が可能なA-1スカイレイダー(旧米海軍機)やT-28D練習機(旧米海軍・米空軍機)を供与していたが、A-1、T-28共に1957年に製造終了となっており、将来的に機体や部品の損耗補充が困難になることが予想された。これに対処する形で、T-37の機体を基にしてアメリカ空軍の親米中小国向け新型COIN機開発要求に基づいて設計開発された機体。
[編集] A-37A
実戦評価試験用先行量産型。以下の点をT-37Bより改修して製造。
- エンジンを強力なJ85-GE-5に換装。
- 6ヶ所(後に8ヶ所に増加)のハードポイントを追加。
- 通信・航法機材を更新した。
39機がT-37Bより改修された。同機は1967年8月より4ヶ月間、ベトナム戦争において『コンバット・ドラゴン』の作戦名で近接航空支援を始めとして救難ヘリコプター護衛、前進航空統制(FAC)、夜間阻止攻撃などの実戦評価が行われた。
[編集] A-37B
上記の『コンバット・ドラゴン』作戦の結果から得られた戦訓を元に以下の点を改良した。
- エンジンはより強力なJ85-GE-17Aを搭載。
- 機体構造を強化。
- 機首に空中給油プローブと7.62mmミニガンを固定装備。
同機は557機製造され、南ベトナム空軍にA-1スカイレイダーの後継機として187機が供与されたが、1975年4月30日の南ベトナム敗北によって95機が統一後のベトナム空軍に鹵獲され(残りの92機はタイへ逃亡後アメリカへ返還)、F-5と同様にカンボジア侵攻や中越戦争の頃まで戦力として運用されたが、予備部品の枯渇から一部の機体がポーランド、旧ソ連、旧東ドイツに送られたり、ベトナム国内の軍事博物館に展示されたり、海外の軍用機コレクターに売却された。
アメリカ空軍では第一線部隊からに配備された後、空軍州兵や空軍予備役部隊に配備され、一部の機体はOA-37BとしてFAC(前進航空統制)任務に就けるように通信装置の強化改造を施されたが、現在、A-37Bはより高性能のA-10に更新され、中古のA-37B/OA-37Bは韓国やラテンアメリカ諸国へ輸出・供与された。
[編集] 海外ユーザー
[編集] T-37
- 韓国:24機(T-37B。これとは別にブラジルから30機のT-37Cを導入。)
- タイ:16機(T-37B:10機、T-37C:6機。)
- ビルマ(ミャンマー):12機(T-37C)
- カンボジア:4機(T-37C)
- パキスタン:63機(T-37B:24機、T-37C:39機。)
- ヨルダン:15機(T-37B。旧米空軍機。)
- トルコ:50機(T-37C)
- ギリシャ:32機(T-37B:8機、T-37C:24機。)
- 旧西ドイツ:47機(T-37B。全機米国内で米軍の国籍マークをつけて運用。)
- ポルトガル:30機(T-37C)
- パラグアイ:12機(T-37C。旧ブラジル空軍機。)
- ブラジル:65機(T-37C。後に30機が韓国へ、12機がパラグアイへ売却。)
- チリ:32機(T-37B:20機、T-37C:12機。)
- エクアドル:20機(T-37B:10機、T-37C:10機。)
- コロンビア:14機(T-37B:4機、T-37C:10機。)
- ペルー:32機(T-37B)
[編集] A-37/OA-37
- ペルー:36機
- チリ:34機
- ドミニカ共和国:4機
- コロンビア:14機(後に12機を追加。)
- エクアドル:12機
- ウルグアイ:8機
- ホンジュラス:15機
- グアテマラ:13機
- エルサルバドル:18機
- カンボジア
- タイ
- 南ベトナム:187機(うち95機が北ベトナムに鹵獲)
- 韓国
[編集] スペック(A-37B)
- 要目
- 乗員:2名
- 全長:9.79m
- 全幅:11.71m
- 全高:2.82m
- 翼面積:17.1㎡
- 空虚重量:2,815㎏
- 最大離陸重量:6,800㎏
- エンジン:GE社製J85-GE-17Aターボジェット(12.7kN)×2基
- 性能
- 最高速度:770㎞/h
- 巡航速度:480㎞/h
- 航続距離:1,480㎞
- 実用上昇限度:12,700m
- 武装
- 機銃:GAU-2B/Aミニガン1挺(7.62mm NATO弾618発)
- 爆弾:主翼下8ヶ所のハードポイントに、2,720㎏までの無誘導爆弾、クラスター爆弾、ナパーム弾、ハイドラ70ロケット弾ポッド、5inズーニー・ロケット弾ポッド、機関砲ポッド、ドロップタンクを搭載可能。