BGM (YMO)
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BGM | ||
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YMO の アルバム | ||
リリース | 1981年 | |
ジャンル | テクノ | |
レーベル | アルファレコード | |
プロデュース | 細野晴臣 | |
レビュー | ||
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YMO 年表 | ||
増殖 (1980年) |
BGM (1981年) |
テクノデリック (1981年) |
BGM(びーじーえむ)は、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)中期にあたる1981年にリリースされたオリジナルアルバム。
初期のヒット曲の並ぶ、派手なイメージの『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』などに比較すると、収録曲全体がおとなしく暗めのイメージを持つため、爆発的セールスこそなかったが、リーダーの細野晴臣自ら「たくさん売れた後だからこそやりたいことができたアルバム」と言わしめた問題作品。
高橋幸宏によるドラムパートに加え、アナログリズムマシン(TR-808)の持つドライな質感と、非常にエフェクティヴな空間処理が目立ち、それらがアルバム全体の印象を特徴づけている。
レコーディング開始は1981年1月15日。リリースが同年3月21日なので非常に短期間かつギリギリまで録音されたため、歌詞が印刷に間に合わなかった(初めて歌詞が明らかになったのは写真集「OMIYAGE」にて)。なお、このアルバムにはミックスダウンは1曲1時間半というルールがあった。技術的にはシーケンサーがMC-8からMC-4に変更され、シンセサイザはプロフェット5が主役となった。坂本龍一はプロフェット5が秘めている可能性を探るべく、相当使いこなした。なお、レコーディングではTR-808で延々とループを回し、それを聞きながらの作業を行っていたという。
アルバムのタイトルは細野が決めた。これは「YMOの曲はまるでBGMのような曲だ」と批評した音楽評論家への意趣返しの意図があったという。
また、レコーディングには開発されたばかりのデジタルMTRが使用されたが、細野は音質に納得せず、一旦リズムパートを民生用MTRに録音し、それをデジタルMTRにコピーするという特殊な録音方法が取られている。これは民生用MTRの狭いダイナミックレンジにより音量のピークで音色が変わるとともに全体の音圧が上がる、のちに”テープコンプ”と名づけられる手法であるが、それを意識的に取り入れた最初期のレコーディングとされている。
10曲中、8曲が4分30秒、及び、2曲が5分20秒と演奏時間が統一された作曲方法や、意味深な歌詞のメッセージ性もファンの話題となった。ジャケットデザインは奥村靫正。
[編集] 曲目
- BALLET/バレエ
(Words by Yukihiro Takahashi,Peter Barakan Music by Yukihiro Takahashi)
このアルバムの方向性を示した曲で、暗い中にも甘い雰囲気を醸し出している。イントロのピアノは坂本による演奏。歌詞はタラマ・ド・レンピッカ(Tamara de Lempicka アール・デコ期の女流画家)について霧の中にあるワルシャワの雰囲気を高橋が表現。SE的な音色は細野による機関車をイメージしたもの。矢野顕子はYMOの中で一番お気に入りの曲としてこの曲を挙げている。 - MUSIC PLANS/音楽の計画
(Words by Ryuichi Sakamoto,Peter Barakan Music by Ryuichi Sakamoto)
このアルバム時にややスランプだった(M-5の「千のナイフ」は締め切りに曲が間に合わなかったために、急遽収録されたらしい)坂本の苛立ちをぶつけるような激しい詞が特徴。 - RAP PHENOMENA/ラップ現象
(Words by Haruomi Hosono,Peter Barakan Music by Haruomi Hosono)
ぼそぼそと「ラップ現象」についてラップ風に語りつづける、というちょっとした洒落をきかせている。歌っているのは細野だが、彼は自分の声が気に入らないらしく、特に特徴のある低音部分は完全にカットしている。これがまた独特な印象を与えている。 - HAPPY END/ハッピー・エンド
(Music by Ryuichi Sakamoto)
坂本のソロシングル「フロントライン」のB面に収められていた曲を再録音。ただしメロディーが省略され、ダブ的に破壊する手法を大胆に取り入れたため、一聴するとわけがわからない。ちなみに1981年のウインターライブではまた違ったアレンジ(原曲に近い)で演奏している。2005年9月28日に発売の坂本のアルバム『/05』にはピアノ4重奏で収録。 - 1000 KNIVES/千のナイフ
(Music by Ryuichi Sakamoto)
坂本のファーストアルバム「千のナイフ」に収録されていた「千のナイフ」のセルフカヴァーで、コンサートでも頻繁に演奏されていた。オリジナルよりも乾いた感じのアレンジとなっている。曲の最後で片方のチャンネルだけ「ビヨョョョ~」と鳴っているのはエンジニアの松武秀樹がプログラミングを誤ったため。しかし坂本が「こっちの方がかっこいい」とそのまま採用された。間奏はギター・ソロの雰囲気をキーボードで実現しており、坂本自身が気に入っている。高音から低音に落ちてくる部分はプロフェット5のポリモード→モノモード切替を使って実現している。 - CUE/キュー
(Words by Yukihiro Takahashi,Haruomi Hosono,Peter Barakan Music by Yukihiro Takahashi,Haruomi Hosono)
ウルトラ・ヴォックスの「パッショネート・リプライ」からインスピレーションを受けた細野と高橋が二人で二日で作り上げた。あまりの出来の良さに、二人で紙に「CUE」と書いて記念写真を撮ったほど。短期間だったため、坂本は作成に一切タッチしていないが、彼は「この曲は、その後のYMOの方向性を決めた点で重要」と評価している。のちにシングルカットされた(B面はM-7のU.T.)。 - U・T/ユーティー
(Music by YMO)
録音当初は8ビートであったが、細野がエコーをかけて現在の曲となった。のちにシングルカットされた。後年、海外(NME(New Musical Express)という英国で最もメジャーな音楽誌)では「ハードコアテクノの元祖」と評された。再生コンサートではクレジットに入っており、パンフレットにも記載があったが、演奏されず。理由は不明(坂本がデータの入ったフロッピーディスクをニューヨークに置き忘れてきたためという説もある)。 - CAMOUFLAGE/カムフラージュ
(Words by Yukihiro Takahashi,Peter Barakan Music by Yukihiro Takahashi)
細野にベストテイクと言わしめた曲。のちにシングルカットされた。 - MASS/マス
(Words by Haruomi Hosono,Peter Barakan Music by Haruomi Hosono)
のちにシングルカットされた(B面はM-8のCAMOUFLAGE/カムフラージュ)。歌詞はロシア語で、ピーター・バラカンが歌って(というよりつぶやいて)いる。 - LOOM/来たるべきもの
(Music by YMO,Hideki Matsutake)
無限音階は松武秀樹がE-mulatorを使って実現。上昇音と下降音が同時に響いている。松武のソロシングル「謎の無限音階」が原型となった曲。水滴の垂れる音はメンバー3人の脈拍の平均値を割り出して作られた。