香椎線
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香椎線(かしいせん)は、福岡県福岡市東区の西戸崎駅から同県糟屋郡宇美町の宇美駅に至る九州旅客鉄道(JR九州)の鉄道路線(地方交通線)である。全線が福岡近郊区間に含まれる。
西戸崎駅~香椎駅間は、海の中道を通っているため、この区間にはJR公式に海の中道線という愛称がつけられているが、地元住民や利用者からは西戸崎線とも呼ばれている。粕屋炭田の石炭を西戸崎港へ運ぶために建設されたが、現在は福岡市への通勤・通学路線となっている。
北部九州地区の乗車カードであるワイワイカードが奈多駅~長者原駅間の各駅と須恵中央駅、宇美駅で使用できる。なお2009年春以降には、全駅を対象にSuica規格のIC乗車券・定期券が導入される予定である。
1985年の勝田線廃止により宇美駅での接続(それぞれの駅は100m程度離れていた)が消滅したため、以来国鉄/JRで唯一、起終点両方の駅で他路線との連絡がない路線である。それ以前は1985年の部分廃止までの弥彦線が同様の状態であった。
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[編集] 路線データ
- 管轄(事業種別):九州旅客鉄道(第一種鉄道事業者)
- 路線距離(営業キロ):西戸崎~宇美 25.4km
- 軌間:1067mm
- 駅数:16駅(起終点駅含む)
- 複線区間:なし(全線単線)
- 電化区間:なし(全線非電化)
- 閉塞方式:特殊自動閉塞式(電子符号照査式)
- 交換可能駅・信号場:7(中道(信)、雁ノ巣、和白、香椎、土井、酒殿、新原)
[編集] 運行形態
全て普通列車で、西戸崎駅~宇美駅間直通の列車のほか、香椎駅乗り換え列車や、昼間に雁ノ巣駅~宇美駅間の区間運転列車がある。雁ノ巣駅~宇美駅間はほぼ20分間隔運転となっている。ワンマン運転を実施しているが、朝のラッシュ時のみ車掌が乗務している。国鉄時代は本数が少なく、おおよそ1日12往復の運行であった。1980年頃には地元でも廃止が噂されたこともあったが、JR化を目前にした1986年11月のダイヤ改正で16往復に本数増加、さらに和白、中道信号場などに列車交換設備が設けられ、1988年3月改正で列車本数は激増し、ほぼ現在の運行状況が完成した。国鉄時代の1985年3月までは、朝の西戸崎~博多直通列車にキハ58系による急行(九州内は快速)「さんべ」の7両編成が入線していた。なお現在、日中の運行パターンでは交換設備をほぼ全て(中道信・和白・香椎・土井・酒殿・新原)使用しているため、これ以上の増発は不可能である。
一時はキハ200系が使われていたが、2003年春のダイヤ改正で撤退(大分地区に転出)し、この結果、本路線は国鉄型車両の運用に逆戻りすることとなった。
[編集] 臨時列車
- 「サンシャイン号」
- 1983年、国営海の中道海浜公園が開園し、終点・西戸崎が同園の最寄駅となった。公園内に「サンシャイン・プール」という大規模なプールがあるが、このプールの利用客の便を図って、1983年から1986年まで、7~9月に限り、博多~西戸崎間に臨時列車「サンシャイン号」が一日3往復設定された。キハ58系冷房車3連による地味な運行であったが、キハ35や47の非冷房車も多かった当時の旅客サービスレベルを考えれば、全車冷房で博多直通という運行形態は、大きなサービスを提供するものであった。この臨時便は、都市近郊ながら赤字路線として長らく放置されてきた香椎線に、少なからぬ希望を与えるものであったといえる。JR化後には香椎線用のジョイフルトレイン「アクアエクスプレス」が登場したが、「サンシャイン号」の運行実績は、同車に発展的に継承されたといえよう。
[編集] 歴史
香椎線は、粕屋炭田から産出される石炭を西戸崎に輸送するため、博多湾鉄道(後の博多湾鉄道汽船)により建設された鉄道路線で、1904年に西戸崎~須恵間が、翌年に宇美までが全通、さらに1909年には貨物支線が志免に延長され、さらに1915年には旅石に延長された。
1919年には、筑前参宮鉄道(後の西鉄宇美線→国鉄勝田線)が開業し、宇美と貨物線の志免で接続した。1924年には、同じ博多湾鉄道汽船の貝塚線が開業し、和白駅で接続している。
1942年には、陸上交通事業調整法により、博多湾鉄道汽船は九州電気軌道に合併し、西日本鉄道を形成、同社の糟屋線(かすやせん)となった。1944年には、同じく西日本鉄道に合併されていた旧筑前参宮鉄道の宇美線とともに戦時買収され、国鉄香椎線となっている。
なお、博多~香椎~(香椎線)~酒殿~(貨物支線)~志免~(勝田線)~吉塚でデルタ線を形成しており、後年、特急列車の方向転換に利用された。
- 1904年1月1日 【開業】博多湾鉄道 西戸崎~須恵 【駅新設】西戸崎、奈多(初代)、香椎(既設)、土井、長者原(初代)、酒殿、須恵
- 1905年1月24日 【簡易停車場新設】和白
- 1905年6月1日 【延伸開業】須恵~新原 【駅新設】新原
- 1905年7月21日 【駅閉鎖】酒殿
- 1905年12月29日 【延伸開業・全通】新原~宇美 【駅新設】宇美
- 1908年10月1日 【駅名改称】長者原(初代)→伊賀
- 1909年8月1日 【貨物支線開業】 酒殿~志免 【駅再開】酒殿
- 1915年3月11日 【貨物支線延伸開業】 志免~旅石
- 1920年3月25日 【社名変更】博多湾鉄道→博多湾鉄道汽船
- 1924年7月3日 【仮停留場新設】香椎宮前
- 1935年2月1日 【停留場新設】奈多東口
- 1935年2月5日 【停留場新設】唐原、長者原(2代)、本合、下須恵 【仮停留場→停留場】香椎宮前
- 1935年6月21日 【信号場新設】白浜
- 1935年7月1日 【臨時停留場新設】海ノ中道
- 1940年7月10日 【仮停留場新設】航空隊前
- 1941年1月1日 【仮停留場廃止】航空隊前
- 1941年2月1日 【臨時停留場→仮停留場】海ノ中道
- 1941年7月15日 【仮停留場→駅】海ノ中道
- 1941年9月1日 【仮停車場新設】(貨)上唐原
- 1941年11月20日 【停留場廃止】唐原、本合
- 1942年7月1日 【仮停車場廃止】(貨)上唐原
- 1942年9月19日 【合併】博多湾鉄道汽船→西日本鉄道糟屋線
- 1942年?月?日 【停留場廃止】奈多東口、香椎宮前、長者原(2代)、下須恵
- 1944年5月1日 【買収・国有化】西日本鉄道糟屋線→国有鉄道香椎線 【駅名改称】奈多(初代)→雁ノ巣 【簡易停車場→駅】和白
- 1946年11月21日 【信号場廃止】白浜
- 1960年8月1日 【駅新設】奈多(2代)
- 1960年12月15日 【貨物支線廃止】 志免~旅石 【駅廃止】(貨)旅石
- 1981年7月30日 【貨物営業廃止】酒殿~宇美
- 1984年2月1日 【貨物営業廃止】西戸崎~香椎
- 1985年1月1日 【貨物支線廃止】酒殿~志免 【貨物営業廃止】香椎~酒殿
- 1987年4月1日 【承継】九州旅客鉄道(国鉄分割民営化により)
- 1988年3月13日 【駅新設】香椎神宮、長者原(3代)
- 1988年7月14日 【信号場新設】中道
- 1989年3月11日 【駅新設】須恵中央
- 1994年3月1日 【駅新設】舞松原
[編集] 駅一覧
- ●:停車、▲:列車・時間帯により停車、|:通過
- 全列車普通列車で全ての駅に停車。
- 中道信号場での行き違いは下り列車が停止し、上り列車が停止せず通過する。
- 太字は交換設備のある駅・信号場。
駅名 | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|
西戸崎駅 | 0.0 | 福岡県 | 福岡市東区 | |
海ノ中道駅 | 2.1 | |||
中道信号場 | (3.0) | |||
雁ノ巣駅 | 6.5 | |||
奈多駅 | 7.4 | |||
和白駅 | 9.2 | 西日本鉄道:宮地岳線 | ||
香椎駅 | 12.9 | 九州旅客鉄道:鹿児島本線 西日本鉄道:宮地岳線(西鉄香椎駅) |
||
香椎神宮駅 | 14.2 | |||
舞松原駅 | 14.8 | |||
土井駅 | 16.4 | |||
伊賀駅 | 18.2 | 糟屋郡粕屋町 | ||
長者原駅 | 19.2 | 九州旅客鉄道:篠栗線(福北ゆたか線) | ||
酒殿駅 | 20.6 | |||
須恵駅 | 21.9 | 糟屋郡須恵町 | ||
須恵中央駅 | 23.1 | |||
新原駅 | 24.1 | |||
宇美駅 | 25.4 | 糟屋郡宇美町 |
[編集] 貨物支線(廃止)
- (貨)は貨物駅であることを示す。事業者名等は廃止直前当時のもの。
駅名 | 営業キロ | 接続路線 | 所在地 | |
---|---|---|---|---|
酒殿駅 | 0.0 | 日本国有鉄道:香椎線 | 福岡県 | 糟屋郡粕屋町 |
志免駅 | 1.6 | 日本国有鉄道:勝田線 | 糟屋郡志免町 | |
(貨)旅石駅 | 3.1 | 糟屋郡須恵町 |