非常食
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
非常食(ひじょうしょく)とは、災害や紛争等の非常事態において、一時的に用いられる食料のこと。特に非常事態はいつ起こるか予測が難しい事もあるため、非常に保存性に優れた物が望ましい。
目次 |
[編集] 概要
これらの食品は、平時を通して常に備蓄・管理(賞味期限切れの物は、順次新しい物と交換される)されており、ひとたび地震・水害・大規模火災・紛争といった、様々な有事の際には配給され、消費される。このためペットボトル詰めの飲料水のほかに、乾パン・缶詰・レトルト食品・インスタント食品などの保存性に優れた食品が用いられる。災害時には電力やガス、水道などの社会的な供給インフラの機能が停止することも予想されるため、常温で保存が利き、屋外でも特別な器具なしに飲食できる物である必要がある。
特に、今日の市販のミネラルウォーター・缶詰・レトルト食品・インスタント食品といった製品類は、日常的に消費される物でも1~2年程度の賞味期限を持つものも多いため、将来的に大規模震災が予想されている地域では、家庭において普遍的に備蓄されている物も多い。その一方で、防災用品として特別に保存性の高い物も市販されており、これらも市民が日常的に購入・備蓄する事が可能である。
また、住民保護の観点から、国家政府や地方自治体が一定量の保存食を備蓄している場合は多いが、特に地震や水害等の災害発生が予想される地域では、防災倉庫と呼ばれる公共の保管庫に分散・保管されている事もある。
[編集] 非常食の思想
非常食は、災害・社会的混乱が予測される場合に確保される食料であるが、通常の場合に於いて災害などでは国や自治体から食料や飲料水等が災害救助と生活保護のために支給される。
しかしこれらの公的な援助は、概ね災害発生から救援が行き渡るまでは日本国内でも2~3日程度の間があくとされ、更に災害が大規模な場合には、遅延も予想される。この間は、各々の個人や集団などで独自に確保した水と食料が必要である。米国で2005年頃にハリケーンに絡んで発生した水害では、多くの家庭で数日~2週間程度は自力で生活する事が強いられた。これにより食料品店が略奪に遭うなどの混乱も生じている(カトリーナ)。
極論では有るが、人は水さえあれば食料がなくても3週間~1ヶ月程度は餓死しない。しかしそのような状況では体力を消耗し、疾病などの問題を被りやすい。災害発生時には衛生の問題から伝染病の発生も予測されるため、衛生的な水と食料は常に備えておくほうが望ましいだろう。
東海地震の被害が予測される地域では、概ね3日以上の食料と水を各家庭で備えるよう、地方自治体などから住民にアナウンスされている。
[編集] 非常食の配布
各自治体や各家庭などで相応量が備蓄されていることも多いが、実際の災害現場において、運搬や配布などで、その意図とは逆に混乱を引き起こす場合もあるため、有事における対処方法がマニュアル化され、配布方法やその対象に関しても、細やかな規定が成されている場合もある。
一般商店に陳列・保管されている食料品も、緊急時には非常食として周辺住民に供給される事がある。これらは政府・自治体の要請を受けた商店が在庫を放出(代価は政府・自治体が支払う)する場合と、商店側の厚意で無償配布される場合があるが、災害時には往々にして社会的混乱が発生し、暴動や略奪が発生しやすい。このため配布する側の商店も非常に神経質になっており、これらを受け取る側に秩序だった行動が見られない場合は、折角の商品配布が中断されてしまう事もある。
また被災地では地元の自治会(町内会等)組織や民間の救援団体・ボランティア団体などによって、炊き出しが行われる。これらは往々にして被災者自身や、被災状況を知った人々の善意の発露として行われているため、比較的社会秩序が回復していないと、これら活動が行われ得ない事もあり、いずれにせよ受け取る側にも、それ相応の配慮が要求される。
[編集] 関連用品
- レーション(軍用食)
- 軍用の屋外活動時における食料は、災害被災時と良く似た状況でも、的確に栄養補給できるように配慮されている。このため、これら軍用食品(レーション)で開発された技術が、市販の非常食に採用される事も多い。また、レーションを非常用食料として長期・大量保管、利用も出来る。
- これらの保管施設は、大規模な災害発生時においても、内部の非常食や各種自主防災用品を保護するため、堅牢な構造となっている。また平時における盗難や、有事発生時における暴徒による略奪にも、当然ながら堪え得るよう設計されている。
- 保存食
- 非常袋