電車特定区間
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電車特定区間(でんしゃとくていくかん)とは、 JRの旅客営業規則第78条に規定する区間である。東京附近及び大阪附近の幹線区間のうち利用者が特に多い線区・区間について、この区間内の駅を相互発着する場合、普通旅客運賃の計算において幹線区間よりも割安な対キロ賃率を適用するものと規定されている。国鉄時代は国電区間とも呼ばれていた。
なお電車特定区間の中心部の区間は、環状線としての山手線とその間の中央本線、総武本線及び桜島線及び関西本線天王寺~JR難波駅間を含む大阪環状線内として別に指定され、それぞれの区間内各駅の相互発着については、さらに安い賃率が設定されている。
旧国鉄が1984年4月の営業規則改訂時に設定した。JR化以降は東日本旅客鉄道・西日本旅客鉄道が設定範囲を決定しているが、JR東西線開業に伴う指定以外は基本的には変更がない。
なお、在来線については全区間が大都市近郊区間内にあるため、最も安い経路が電車特定区間内のみ経由の運賃であれば、電車特定区間外を経由する経路を使用した場合でも同様に適用される(ただし、経路を指定している場合、大都市近郊区間外を経由する場合を除く)。逆に、一区間でも電車特定区間外を経由する方が最安である場合には適用されず、通常の幹線運賃が適用される。大都市近郊区間に含まれない新幹線(東京圏の全区間、山陽新幹線新大阪-西明石間)については、電車特定区間内のみを経由する経路である場合のみ適用される(東海道新幹線品川-新横浜間は除く)。
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[編集] 適用線区・区間
以下の記述は、正式線路名称による。
[編集] 東京附近
- 東海道本線:東京 - 大船間(うち東京 - 品川間は、山手線内)、品川 - 新川崎 - 鶴見間
- 東海道新幹線:東京 - 品川間(※品川~新横浜間は含まない)
- 南武線:全線
- 鶴見線:全線
- 武蔵野線:全線
- 横浜線:全線
- 根岸線:全線
- 横須賀線:全線
- 中央本線:神田 - 代々木間(山手線内)、新宿 - 高尾間
- 青梅線:全線
- 五日市線:全線
- 東北本線:東京 - 大宮間(うち東京 - 田端間は、山手線内)、日暮里 - 尾久 - 赤羽間、赤羽 - 武蔵浦和 - 大宮間
- 東北新幹線:東京 - 大宮間
- 山手線:全線(山手線内)
- 赤羽線:全線
- 常磐線:日暮里 - 取手間
- 総武本線:東京 - 千葉間、錦糸町・御茶ノ水間(うち秋葉原 - 御茶ノ水間は、山手線内)
- 京葉線:東京 - 千葉みなと間、市川塩浜 - 西船橋 - 南船橋間
[編集] 大阪附近
- 東海道本線:京都 - 神戸間
- 東海道新幹線:京都 - 新大阪間
- 大阪環状線:全線(大阪環状線内)
- 桜島線:全線(大阪環状線内)
- JR東西線:全線
- 山陽本線:神戸 - 西明石間
- 山陽新幹線:新大阪 - 西明石間
- 関西本線:奈良 - JR難波間(うち、天王寺 - JR難波間は大阪環状線内)
- 片町線:長尾 - 京橋間
- 阪和線:全線
[編集] 運賃
比較上の参考に、2006年6月現在設定されている電車特定区間の普通運賃と、幹線運賃を記す(電車特定区間内で最短経路の設定がある140kmまで)。
営業キロ | 運賃 | 幹線運賃 |
---|---|---|
1~3km | 130/120 | 140 |
4~6km | 150/160 | 180 |
7~10km | 160/170 | 190 |
11~15km | 210(190) | 230 |
16~20km | 290(250) | 320 |
21~25km | 380 | 400 |
26~30km | 450 | 480 |
31~35km | 540 | 570 |
36~40km | 620 | 650 |
41~45km | 690 | 740 |
46~50km | 780 | 820 |
51~60km | 890 | 950 |
61~70km | 1,050 | 1,110 |
71~80km | 1,210 | 1,280 |
81~90km | 1,380 | 1,450 |
91~100km | 1,530 | 1,620 |
101~120km | 1,790 | 1,890 |
121~140km | 2,100 | 2,210 |
- 営業キロは、小数点以下切り上げ。
- 運賃の欄のうち「/」で区切られている部分は左が東京圏、右側が大阪圏。
- 括弧内は東京山手線内・大阪環状線内の運賃(21km以上の設定はない、10km以下は他線と同じ)。
- 幹線運賃は、本州3社間内相互発着の場合。
これ以上の距離については市販の時刻表を参照のこと。
[編集] その他
- 2004年8月、埼玉県知事が、東京都、神奈川県、千葉県に比べ埼玉県内の電車特定区間の範囲が狭いことを不満として、JR東日本に改善を申し入れている。
- 参考までに、青梅線・横須賀線を除けば大船・高尾・武蔵五日市・取手・千葉・千葉みなととも山手線から約40kmであるのに対し、大宮は池袋・田端から25km弱である。ちなみに武蔵野線の埼玉県内区間である東所沢から三郷までは38kmある。
- また、西日本旅客鉄道の阪神地区では福知山線(JR宝塚線)が電車特定運賃区間に組み込まれなかったが、競合他社線並行区間である大阪駅・北新地駅~宝塚駅間の利用に限り特定区間運賃が適用される。但しその他の電車特定運賃区間各駅への利用には通常の幹線運賃が適用されるため、沿線からは不満がある。また、京都府でも片町線(学研都市線)長尾~木津間や関西本線(大和路線)奈良~加茂間、奈良線、山陰本線(嵯峨野線)を電車特定区間に編入をの要望がある。
- 東海旅客鉄道名古屋附近は、競合他社線並行区間である東海道本線名古屋~岐阜間、関西本線名古屋~四日市等には、国鉄分割民営化直前に電車特定区間の賃率より安い特定区間運賃が採用された一方、JR独占で輸送量が比較的多いにもかかわらず中央西線や東海道本線名古屋~大垣間等は通常の幹線運賃である。さらに、電車特定区間の賃率適用による受益者還元がこれらの沿線、特に東海道本線よりも輸送量が多いと思われる中央西線沿線で民営化後に為されていないため、社内間格差を生んでいる。