葛の葉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
葛の葉(くずのは)は、伝説上のキツネの名前。葛の葉狐(くずのはぎつね)、信太妻、信田妻(しのだづま)とも。また、葛の葉を主人公とする人形浄瑠璃『蘆屋道満大内鑑(あしやどうまんおおうちかがみ)』、および翻案による同題の歌舞伎も通称「葛の葉」と呼ばれる。
目次 |
[編集] 伝説の概要
伝説の内容は伝承によって多少異なるが、おおむね以下のとおりである。
注意 : 以降に、作品の結末など核心部分が記述されています。
摂津国東生郡の安倍野(現在の大阪府大阪市阿倍野区)に住んでいた安倍保名(伝説上の人物とされる)が和泉国和泉郡の信太の森(現在の大阪府和泉市)を訪れた際、狩人に追われていた白狐を助けてやるが、その際にけがをしてしまう。そこに葛の葉という女性がやってきて、保名を介抱して家まで送りとどける。葛の葉が保名を見舞っているうち、いつしか二人は恋仲となり、結婚して童子丸という子供をもうける。しかし童子丸が5歳のとき、葛の葉の正体が保名に助けられた白狐であることが知れてしまう。次の一首を残して、葛の葉は信太の森へと帰ってゆく。
- 恋しくば尋ね来て見よ 和泉なる信太の森のうらみ葛の葉
[編集] 葛の葉を題材とする作品
- 説経節「信太妻」(「信田妻」とも)
- 地唄「狐会(こんかい)」1690年(元禄元年)頃 ― 男女が入れ替わっているために立役のために作られた芝居唄と考えられている
- 紀海音 浄瑠璃『信田森女占』 1703年(元禄16年)
- 初世竹田出雲 浄瑠璃『蘆屋道満大内鑑』 1734年(享保19年)
- 歌舞伎『蘆屋道満大内鑑』 1735年(享保20年) ― 同題の浄瑠璃を翻案
- 法橋玉山 『阿也可之譚(あやかしものがたり)』 1806年(文化3年)
- 曲亭馬琴 『敵討裏見葛葉(かたきうち うらみくずのは)』 1807年(文化4年)
- 瞽女唄「葛の葉子別れ」
- 小松左京 「女狐」 1967年
- 辻井喬 「狐の嫁入り」 1976年
- 小松左京、高橋桐矢 『安倍晴明 天人相関の巻』 2002年
安倍晴明を主人公とする作品には、葛の葉に触れているものもある。安倍晴明が登場する作品を参照。
[編集] 参考文献
- 折口信夫 「信田妻の話」 『折口信夫全集』第二巻、中央公論社、1965年 ISBN 4-1240-0712-4 / ISBN 4-1220-0267-2〈中公文庫〉
- 高木元 『江戸読本の研究 -十九世紀小説様式攷-』 ぺりかん社、1995年 ISBN 4-8315-0677-X
- ともえ 「越後の瞽女さん」 ともえのお部屋、2002年
- 「説経とその枝葉」(十四) 『邦楽ニュース』VOL.190、日本の伝統音楽を守る会、2001年
[編集] 関連エピソード
- きつねうどん(そば)のことを葛の葉の生誕の地とされる信太(信田)に由来し、しのだうどん(そば)と言う。
- 関西方面(特に近畿地方)の年配者には稲荷寿司を「しのだ」と呼ぶ人もいる。
- 明治時代の曲芸に「信田妻」と言う、両手での同時筆記、筆を口に加えての筆記などを売り物にした演目がある。
- 南海本線高石駅と阪和線北信太駅は開業時、それぞれ「葛葉」と「阪和葛葉」という駅名であった。
- てなもんや三度笠の主人公・あんかけの時次郎は「泉州・信太の生まれ」という設定。