胆石
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胆石(たんせき)は、肝臓から分泌される、胆汁の成分が固まって臓器に溜まる物である。胆嚢炎などは、ほとんど、胆石が原因である。胆石の出来る場所によって名前が変わり、胆管に出来る物が胆管結石、胆嚢に出来る物を胆嚢結石、肝臓に出来る物を肝内胆石と呼ばれている。 胆石の成分によって何種類かあり、色も形も多様である。
胆石の名前の由来は、固まった胆汁が結石のような物だったため、胆石と付けられている。胆石は古来の欧州から、非常に流行っていた病気とされ、紀元前1500~1600年頃のミイラから胆石が発見されている。
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[編集] 症状
症状は、主にみぞおちの痛みや右脇腹の痛み、そのほかに背中の痛みや張り、腰痛、肩凝り、大量の汗が主な症状。ほかにも吐き気や嘔吐、胸部の鎮痛を伴う狭心症を起こす。狭心症は心臓病と誤解することがあり、右脇腹の痛みは胃痛と間違えられることが多い。腹部などの痛みは脂肪の多い食事の食後に発作的に痛みを起こすケースが多い。痛みは長時間続くことはなく、その後も全く通常の状態になる。胆嚢や胆管が炎症を起こすと、39度近い高熱を出す。胆管で肝臓から流れ込む胆汁が胆石によって、せき止められてしまったために目や皮膚が黄色になる、黄疸症状を引き起こすことがある。黄疸症状は胆管結石に多く、黄疸によって尿の色が濃くなることもある。
胆石が原因で胆嚢炎を起こすと、アミラーゼが血液中に増加してしまうことや胆石の合併症として、胆管炎、胆嚢炎、膵炎、肝炎などがある。胆石を長年放置しておくと、胆嚢癌等の重い病気をきたす。また、胆石が溜まっている状態でも症状を起こさない場合のことを無症状胆石といい、症状があるときは胆石症と呼ばれる。胆石を持っている人のほとんどは無症状胆石で、人間ドックで見つかることが多く、胆石症状を起こす人は1~3%と言われている。無症状の場合は長い間放置しまうことが多いため、高齢になると2~3%の確率で癌を伴うことがある。
小さな胆石の場合は通常、胆管に残るか、胆管から小腸に送り出され、便となって排出される。だが、大きな胆石は胆管に詰まってしまう場合があり、そのまま胆管に残ってしまう。最初の症状は腹部の激痛や激しい嘔吐を起こす。ついには胆管内に細菌が繁殖し、感染症を引き起こす。更に悪化すると、黄疸症状を起こして菌が血液中に回り、敗血症を起こして、最終的には死に至る。ほかにも大きな胆石によって胆石性イレウスと言う腸閉塞をまれに起こすことがある。この病気は胆嚢が大きな胆石に耐えられず胆嚢壁を突き破り、小腸とつながっている総肝管と膵管の通り道を胆石が塞いでしまう病気である。長年胆石を保持してきた、高齢者に多い。
[編集] 原因
胆石の最大の原因は、肝臓から送り出された胆汁が胆管で固まってしまい、結石になってしまうことである。その固まる原因としては、コレステロールが挙げられる。コレステロールは体内の液に溶けにくいため固まってしまうことが多い。だが、栄養分を吸収し、老廃物を除去するレシチンと胆汁に含まれる胆汁酸がコレステロールの含んでいる胆汁を固まらないようにする作用が起き、十二指腸に液体のまま送られる。しかし、胆汁の中のコレステロールが急上昇すると、レシチンと胆汁酸とのバランスが悪くなり、胆汁が固体の状態で胆管などの臓器に溜まる。また、朝食を抜いた生活を続けていると、胆汁が胆嚢や胆管に留まり、胆汁は固まる場合がある。
日本おいては最近、胆石患者が急激に増え始めている。特に高齢者の胆石の所持者が多く、性別で見ると、女性の方が胆石所持の割合が多い。原因として女性ホルモンのバランスが崩れることによって、胆石が出来やすいとされている。また、糖尿病患者や肥満体質の人にも出来やすいとされる。日本は昔から、穀物や野菜、大豆類を主食としていたため、胆石所持者は少なく、胆石症の人は極少数だった。だが、戦後になると、胆石患者数が大幅に増えはじめ、無症状胆石の人も多くなり始めた。その要因として、食文化が大きく変わり、肉やパンなどの脂肪分の多い食品を主食とした欧米化が最大の原因と言われている。アメリカでは元々、日本に比べて、胆石症の患者が多いことで知られている。ほかの原因として、アルコールの大量摂取や疲労によるものもある。
[編集] 種類
胆石にはそれぞれ種類があり、それは胆石の成分によって違う。まず、現代に一番多い胆石の種類は、コレステロール石である。コレステロール石は成分はコレステロールである。胆管に出来やすく、場合によっては数百個発見されることもある。昔は欧州の人々に多かった。コレステロール石が出来る要因は、脂っこい食品や脂肪分の多い物、カロリーの高い食事などである。日本では、カロリーの少ない食事が主食だったため、コレステロール石の患者はほとんど存在しなかったが、ビリルビンカルシウム石の患者が多かった。ビリルビン石は、胆嚢に出来やすく、胆管の感染症によって出来る胆石である。後に日本人の食事が西洋化していくと、カロリーの高い食事が目立つようになったため、現在ではコレステロール石の患者が8割を占めていると言われている。このコレステロール石も女性の所持者が多い。
ほかに黒色石と言う胆石がある。特にやせ形の人や若い人に発見されやすい。鉄や銀などの金属が含まれ、これもコレステロール石と同様、カロリーが原因であるが、その他の原因として拳げられている物は溶血性貧血と言う貧血症の一つと消化管の手術によるもの、肝硬変が挙げられている。胆石が出来る部分によって種類の割合がある。胆嚢胆石はコレステロール石が70%を占め、黒色石、ビリルビン石ともに15%である。一方、胆管胆石はビリルビン石が70%と大半を占め、コレステロール石は30%と言われている。胆石はコレステロール系と色素系、まれな胆石に分けられる。
[編集] コレステロール系
- コレステロール石
- 混合石
[編集] 色素系
- ビリルビンカルシウム石
- 黒色石
[編集] まれな胆石
- 脂肪酸カルシウム石
- 炭酸カルシウム石
[編集] 検査方法
胆石を発見する方法の一つとして、主に超音波を利用した腹部超音波検査がある。方法は皮膚にジェリ-と言う物質を皮膚に塗りつけ、超音波を放出する探触子で胆石があるかどうかを調べる。胆石を発見する機械の中で、一番用いられる機械であり、発見率が非常に高いのが最大の特徴。胆石だけではなく、胆嚢、胆管、肝臓の腫瘍も検査、発見出来る。だが、胆管内に出来た胆石は、超音波ではうまく発見出来ないことがある。ほかにも胆嚢造影と言う検査方法がある。これは、ヨ-ド剤(または、造影剤とも言う)と言う物が使用され、胆石を映し出すという物である。この検査法で胆石の発見が出来るのは6割ぐらいで、腹部超音波検査に比べて、発見できる確率は低い。胆管に胆石が大量に詰まってしまう場合や黄疸が出ているときは、この方法ではほとんど、効果がない。そのためか、現在はこの方法は、ほとんど検査法の対象になっていない。別の方法として内視鏡を使った、内視鏡的胆道膵管造影(ERCP)と言う検査法もある。利点は胆嚢や胆管の胆石を検査するだけではなく、胆石を除去することもできる、検査方法である。