罪数
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罪数(ざいすう)は、刑法用語のひとつであり、犯罪の個数を表す概念である。当該行為における犯罪の数が1個であるときを一罪といい、それ以上であるときを数罪という。
目次 |
[編集] 一罪と数罪の区分
ある犯罪行為を、一罪とするか数罪とするかの基準については以下のような学説がある。
- 行為標準説 - 犯罪行為の個数を基準とする。(旧派からの主張。)
- 意思標準説 - 行為者の意思を基準とする。(新派からの主張。)
- 法益標準説 - 侵害された法益の数を基準とする。(客観主義からの主張。)
- 構成要件標準説 - 構成要件充足の数を基準とする。(戦後の通説的見解。)
[編集] 罪数の細分
罪数は、その態様によって、以下のように細分することができる。上に掲げたものほど一罪の色が強く、下に掲げたものほど数罪の色が強いと言える。
[編集] 単純一罪
構成要件に該当する犯罪事実が1回だけ発生すること。認識上一罪とも言う。
構成要件が本来的に複数の行為の存在を予定している結合犯(例としては、暴行脅迫(暴行罪、脅迫罪の構成要件に該当)と奪取(窃盗罪の構成要件に該当)の結合による強盗罪が挙げられる。)や、常習犯(例としては、常習賭博罪などが挙げられる。)や営業犯(例としては、無免許医業罪などが挙げられる。)のように連続した複数の行為を1つの犯罪の構成要件とする集合犯もこれに含まれる。(学説によっては、これらを包括一罪や数罪とする見解もある。)
[編集] 法条競合
条文の文面上は数個の構成要件に該当するように見えるが、それらの関係上、そのうち1つの構成要件にしか該当しないもの。以下のような類型が挙げられる。
- 特別関係
- 数個の構成要件が一般法と特別法の関係にあたるもの(例としては、横領罪と業務上横領罪が挙げられる。)。特別法にあたる構成要件に該当する場合、一般法にあたる構成要件には該当しない。
- 補充関係
- 数個の構成要件が補充・被補充関係にあたるもの。(例としては、未遂罪と既遂罪が挙げられる。)被補充的な構成要件に該当する場合、補充的な構成要件には該当しない。
- 択一関係
- 1つの行為に適用可能なな構成要件が複数存在するが、それらが両立しないもの(例としては、横領罪と背任罪が挙げられる。)。そのうちの1つの構成要件のみに該当する。
[編集] 包括一罪
法条競合に該当しないが、一罪と評価されるもの。以下のような類型が挙げられる。
- 1つの行為で同一構成要件内の数個の結果が発生したが、それが実質的に1つの法益侵害であると評価される場合
- 例としては、1つの放火とその延焼の関係が挙げられる(放火罪一罪のみが成立)。
- 1つの行為で複数の構成要件にまたがる数個の結果が発生したが、1つの構成要件のみを成立させることで他の構成要件についても評価されつくしていると評価しうる場合(附随犯)
- 同一構成要件内の数個の結果を発生させるために複数の行為が行われたが、それが実質的に1つの法益侵害であると評価される場合(狭義の包括一罪、接続犯)
- 例としては、殺人のために複数の銃弾を発射した場合が挙げられる(殺人罪一罪のみが成立)。
- 複数の構成要件にまたがる数個の結果を発生させるために複数の行為が行われたが、1つの構成要件のみを成立させることで他の構成要件についても評価されつくしていると評価しうる場合
- 例としては、盗んだ財物を捨てた場合が挙げられる(毀棄罪は成立せず、窃盗罪一罪のみが成立)。
[編集] 科刑上一罪
実質的には数罪だが、科刑上、一罪として扱うもの。刑法第54条第1項に規定がある。観念的競合と牽連犯がある。
[編集] 併合罪
実質的にも科刑的にも数罪だが、政策上、複数の罪をまとめて処断すること。刑法第45条に規定がある。併合罪を参照。
[編集] 参考文献
- 前田雅英 『刑法総論講義 第3版 』 東京大学出版会、1998年、468-482頁。