過失
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日常用語としての過失(かしつ)とは、あやまりや失敗のこと。
法律用語としての過失とは、伝統的には、何らかの事実を認識・予見可能性があったにも関わらず、注意を怠って認識・予見しなかった心理状態をいう(刑法における旧過失論、民法における心理状態説)。この説によれば、結果予見義務違反(具体的予見可能性を前提とする)が過失の本質であると説明される。
刑法においては,これをそのままの形で主張する説と,客観面で修正する説がある(新旧過失論)。
民法では,もはや支持する学説はないが,民法以外の領域においては今もなお(民法ではなお支持されているとの誤解の元に)支持されていることがある。
これに対し、結果予見義務違反(具体的予見可能性を前提とする。)に加えて,結果の発生を回避するための一定の行為を怠ったこと(結果回避義務違反(結果回避可能性を前提とする))を重視する説がある(刑法における新過失論、民法における通説・実務)。
さらに、刑法においては、結果予見義務違反を軽視し、上述の2説(具体的予見可能性説)が共に要求する具体的予見可能性を不要とし、危惧感(不安感)のみで足るとする説(危惧感説(新々過失論)。なお、民法における新受忍限度論を参照。)までも登場した。もっとも、この説はあまり大きな支持は得られなかった。
目次 |
[編集] 過失犯
日本の刑法 |
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刑事法 |
刑法 |
刑法学 · 犯罪 · 刑罰 罪刑法定主義 |
犯罪論 |
構成要件 · 実行行為 · 不作為犯 間接正犯 · 未遂 · 既遂 · 中止犯 不能犯 · 相当因果関係 違法性 · 違法性阻却事由 正当行為 · 正当防衛 · 緊急避難 責任 · 責任主義 責任能力 · 心神喪失 · 心神耗弱 故意 · 故意犯 · 過失 · 過失犯 期待可能性 誤想防衛 · 過剰防衛 共犯 · 正犯 · 共同正犯 共謀共同正犯 · 教唆犯 · 幇助犯 |
罪数 |
観念的競合 · 牽連犯 · 併合罪 |
刑罰論 |
死刑 · 懲役 · 禁錮 罰金 · 拘留 · 科料 · 没収 法定刑 · 処断刑 · 宣告刑 自首 · 酌量減軽 · 執行猶予 |
刑事訴訟法 · 刑事政策 |
日本の刑法では「罪を犯す意思がない行為は、罰しない。ただし、法律に特別の規定がある場合は、この限りでない。」(刑法第38条1項)として、過失犯(過失を成立要件とする犯罪)の処罰は法律に規定があるときにのみ例外的に行うとされている。
現行の刑法典で規定されている過失犯の類型としては、次のものがある。
- 過失傷害罪(209条)・過失致死罪(210条) - 注意を怠り人を死傷させた者。
- 業務上過失傷害罪・業務上過失致死罪(211条) - 業務上必要な注意を怠り人を死傷させた者。ただし、過失傷害罪は親告罪であり、被害者などの告訴権者の告訴が無ければ公訴を提起できず処罰されない。
- 失火罪(116条)
- 過失激発物破裂罪(117条2項)
- 業務上失火等罪(117条の2)
- 過失建造物等浸害罪(122条)
- 過失往来危険罪・業務上過失往来危険罪(129条)
刑法典以外にも過失犯処罰規定をおく法律は多いが、中でも道路交通法に多く見られる。
[編集] 民法の過失責任主義
刑法では過失犯処罰は例外的に行われるが、民法の不法行為責任では「故意又は過失によって」他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。」(b:民法第709条)として、過失があれば損害賠償責任を負い、逆に過失がなければ(これを無過失という。)その責任は負わないとしている。これを「過失責任主義」という。
[編集] 重過失
過失は単に言う「不注意」の意味であり、重過失とは、容易に結果が予見できるにもかかわらず、著しく注意を欠く「重大な不注意」をいう。過失から重過失を除いたものを軽過失という。ただし、重過失と過失の別は一概に定めることはできず、具体的事例、例えば、責任主体の職業・地位、事故の発生状況等に照らして判断する必要がある。
[編集] 認識ある過失
認識ある過失とは、通説では、違法・有害な結果発生の可能性を予測しているが、その結果が発生してもかまわないまたはやむを得ないと認容しないことをいう。つまり、犯罪事実発生の可能性の表象(認識・予見)はあるが、認容はないことをいう。例えば、「自動車運転中、道路脇を走行中の自転車に接触するかもしれないと思いつつも、充分な道路幅があるので、自転車に接触することはない。」と思うような場合である。ここで、違法・有害な結果発生の可能性の予測すらない場合は、「認識なき過失」とされる。いずれも、故意は認定されず、過失が認定されるに過ぎない。 認識ある過失に似て非なるものとして、違法・有害な結果発生の可能性を予測しつつ、その結果発生を容認してしまうことを「未必の故意」という。例えば、「自動車運転中、道路脇を走行中の自転車に接触するかもしれないと思いつつ、接触しても仕方がない。」と思うような場合である。