窃盗罪
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窃盗罪(せっとうざい)とは、他人の物を故意に断り無く持っていくことや使用することを禁止する犯罪類型のことである。違反して窃盗を犯した者は刑罰によって処断される。
目次 |
[編集] 窃盗罪一般
[編集] 概説
歴史的に倫理的・道徳的に反社会的行為とされ、何らかの意味で所有の概念をもつ社会においては殺人や強姦と並ぶ典型的な犯罪類型とされている。誰もが犯しがちな犯罪であることから、行為の安易さに比較すると身体刑や長期の自由刑など重い罰をもって臨む処罰例、立法例が多い。
[編集] 近代以前の窃盗罪について
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[編集] 諸外国の立法例
中世欧州においては窃盗は強盗よりも重罪であった。その理由として、強盗は公然と犯罪を行うため撃退できる可能性があるのに対し、窃盗は密かに遂行できるため、卑怯であるというものである。(→自力救済)
[編集] 日本の窃盗罪
[編集] 概説
『窃』も『盗』もそれぞれ他人の物を黙って持っていくこと、すなわち盗むことを意味するが、特に『窃』は『こっそりと、気付かれず』という意味合いが強い語である。しかし日本の刑法においては、他人が占有する財物を、占有者の意思に反し自己又は第三者の占有に移転させる行為をいい、占有移転行為が他人に気付かれることなく行われることは要件ではなく、公然と行われる場合なども含む。たとえば「ひったくり」なども暴行の程度が強盗罪のそれに達しない場合には窃盗罪となる。
[編集] 日本における窃盗処罰の歴史
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[編集] 現行法
窃盗罪を犯した者は、刑法235条により10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。未遂も処罰の対象である(刑法243条)。ただし、親族間における窃盗は刑を免除されたり(刑法244条1項)、告訴がなければ公訴を提起できなかったり(刑法244条2項。親告罪)という特例がある。 また、「盗犯等ノ防止及処分ニ関スル法律」により、窃盗犯を殺傷した場合に正当防衛が認められやすくなったり処罰を免除する規定が設けられている。同時に、常習として窃盗を犯す者についてはより重い刑罰を科す規定も設けられている。 なお、盗品を譲り受けたり、購入・運搬・保管した者も盗品譲受け等の罪により処罰されるが(刑法256条)、これについても親族等の間における特例によって刑が免除される場合がある(刑法257条)(詳しくは盗品等関与罪を参照)。
刑法が改正され、2006年5月28日より罰金刑が加えられた。これは従来窃盗罪が金銭的に苦しい人が犯す犯罪と考えられていたため、罰金刑は意味がないと考えられていたが、近年お金はあるにもかかわらず万引きなどの窃盗行為を犯すものが増えていることに対応したもの(詳しくは外部リンク先のサイトを参照)。
[編集] 保護法益
- 究極的には本権(所有権)であるとする学説もあるが、一般に物に対する占有そのものが保護法益であるといわれている。よって、真の所有者であっても、原則として自救行為は否定される。
- ただし、窃盗や強盗の現場における奪還は、犯人の占有が平穏な占有ではないため、上記の限りではないとされる(平穏占有説)。
- 物とは有体物(固体・液体・気体)を指す(有体物説)。電気は形を持たないが、“感電などで知覚出来る”として、刑法245条により特別に物とみなされている(大審院判例)。電気以外の無体物については、有体物説によれば物には含まれないが、管理可能なものであれば物に含めるという説(管理可能性説)もある。
- 判例によれば、禁制品(麻薬、覚せい剤など)を盗んだ場合も窃盗が成立する。すなわち、所有権が法的に保護されている物でなくとも、窃盗罪の客体になりうる。
[編集] 不法領得の意思
窃盗の構成要件として、財産領得罪一般に共通し「不法領得の意思」も要件(記述されざる構成要件)であるとされる(判例・通説)。 不法領得の意思とは、判例及び通説においては、①権利者を排除して他人の物を自己の所有物として振る舞い、②その経済的用法に従い利用又は処分する意思をいう(なお、学説上の争いあり)。解釈上不可罰とされる使用窃盗や毀棄罪との区別をするため必要とされる。不法領得の意思が要件とされる結果、それが欠ける場合,例えば,路上に停車されていた自転車をほんの短時間だけ乗り回すがすぐに返還するつもりの場合や、いやがらせ目的で他人のパソコンを別の場所に隠すつもりの場合は、窃盗罪は成立しないこととなる。但し、判例において、各々の意思を広範に認める傾向にあるため、結果的として、不法領得の意思が不要であるとの説と大差がなくなっている。
[編集] 窃盗事件の割合
- 2004年現在、2分に1件の窃盗事件が発生している。
- 窃盗犯罪の認知件数が増加しているにも関わらず、総件数に占める未成年窃盗の割合には大きな変化がなく、少子化が進む中で少年犯罪は増加していることを示すものとして問題視されている。
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- 犯罪白書
- 法制審議会刑事法(財産刑関係)部会第3回会議(平成17年12月9日開催)
- 法制審議会刑事法(財産犯等の犯罪収益のはく奪・被害回復関係)部会第3回会議(平成17年9月13日開催)
- 答申(罰金刑の新設等のための刑事法の整備に関する要綱(骨子))
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