榴弾
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
榴弾 (りゅうだん / HE(High Explosive))とは、内部に炸薬を充填し弾殻を破砕することで広範囲への破片の散布を目的とする、砲弾の一種である。
[編集] 構造
形状は、一般的な銃弾を巨大化させた流線形の弾丸である。翼を有するものは、後端部が絞り込まれた涙滴型であることもあり、迫撃砲用の榴弾にこの形状が多い。 火器に合わせて、後部が薬莢に挿入されているものもある。
弾殻は堅く厚い金属製で、すべて一体の中空成型か、または弾底部が別の部品となっており弾殻部と接合され一体化している。弾種によっては弾殻の内側に細かい格子場の溝が刻まれており、炸裂時にこの溝に沿ってより細かな生成破片を飛散させ、破片効果による威力を高める構造のものもある。 弾殻の表面には、弾帯と呼ばれる軟金属または樹脂製の、弾丸口径より僅かに大きい径のリングが備え付けられている。これは砲内のライフリングに噛み合って弾丸に回転を与え弾道特性を向上させる装置である。また発射ガスが前方に漏れるのを防ぐ効果もある。 弾丸の先端は信管が取り付けられているか、または信管をとりつけるためのネジ穴があいている。穴の場合は、異物などの侵入を防ぐ楊弾栓と呼ばれる蓋がねじ込まれている。楊弾栓という名は、クレーンなどでの吊り上げるための輪が蓋についていることに由来する。
内部には、通常一種類の炸薬が充填される。炸薬は、威力の面からは爆速が速く反応生成ガス量の多い爆薬ほど適しているが、生産性の面からTNTが内蔵されることが多い。TNTの融点は80.1℃、発火点は475℃で、湯煎による流し込みが可能で安全に製造できるためである。 榴弾は爆風効果を期待する兵器ではないので、重量あたりの比率では、炸薬を増やすよりも弾殻を多くした方が散布される破片の量が多くなり、威力は高くなる。
[編集] 対応火器
砲と名のつく物なら大抵この砲弾を発射することが可能である。 主に榴弾砲、野戦砲、艦砲、臼砲、迫撃砲等の曲射砲から発射されるが、対空砲、無反動砲、カノン砲等の直射砲(直接照準砲)でも使用される。