時事通信社
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時事通信社(じじつうしんしゃ、Jiji Press Ltd.)は、日本の通信社の1つ。国内82カ所、海外29カ所の支社や支局を有する。
以前は、略語に、JP(JijiPress)を使用していたが、現在はJijiを使用している。
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[編集] 歴史
戦前の国策通信社である旧同盟通信社は終戦後、戦争責任でGHQに解体されるのを避けるために、1945年11月に2社に分割した。主に経済ニュースなど民間企業向けにニュースを配信する部門と『世界週報』(同盟時代は『同盟世界週報』)をはじめとする出版業務を引き受けたのが時事通信(一般報道部門は共同通信社となる)。共同通信と異なり、当初から株式会社組織である。
分割時から再統合を視野に入れていたため、当初はニュース分野で棲み分けていた。だが、東京オリンピック(1964年)をきっかけに時事がマスメディア向けニュースサービスに進出。両社とも互いの分野を侵食し合う競合関係となって、再統合構想は完全に消滅した。時事通信は、発足の経緯から経済や産業、行政関係のニュースには強みを持つ。
民間の通信社がマスコミから得る収入ははわずかで、大半の社は金融機関向けの情報サービスを稼ぎ頭としている。この収入構造は時事通信も同じだ。だが、60年代に大蔵省(現財務省)の指導のもと、日本経済新聞が金融機関向けに経済情報サービス「QUICK」(クイック)をスタートさせる。これに急速に市場を奪われ、時事は経営が悪化した。大手報道機関の社員待遇が他の業界に比べて恵まれている中で、「産経残酷、時事地獄」と業界で時事通信の社員待遇の悪さを揶揄された。さらに日本経済の国際化が進み、英ロイターや米ブルームバーグなど国際通信社が日本市場に本格参入し、経済通信市場はさらに激化し、時事の経営は一層悪化した。経営再建をかけて90年代にはロイターと提携した。これは「ロイターによる時事買収の布石か」と見られたが、2000年前後にはロイター自身の経営が悪化し、2006年現在は、この提携が効果を上げている状況ではない。また、共同通信との再統合の話もたびたび浮上するものの、実現には至っていない。
時事通信をめぐっては、90年代に「三菱銀行」と「東京銀行」の合併のスクープを日本経済新聞とほぼ同時に流した。両行の合併はこの年の最大のニュースで、時事、日経の両社とも、その年最大のスクープを表彰する「新聞協会賞」の候補として日本新聞協会に申請した。しかし、時事通信の経営陣は、顧客である日経を差し置いて受賞できないと判断し、申請を取り下げた。これに反発した当時の取材チームの1人は退社し、TBSに転職。その後、関西金融機関の再編などをめぐってスクープを放ち、活躍している。別のメンバー、堺祐介は時事に残留するものの、1996年に不整脈により33歳の若さで死亡。堺は当時、日銀クラブの記者として住専問題などを取材して、月100時間以上の残業が続き、東京・中央労働監督基準局は労災と認定した。前後して、大量の社員が退社し、民放や外資系に転職している。相次ぐ経営失策に社内から批判が強まり、2005年に榊原潤社長が任期途中で退任させられた。対外的には「健康悪化」が理由とされた。
[編集] 出版業務
もともと同盟通信社から出版業務を引き継いだこともあり、現在でも出版活動は共同通信社に比べて活発である。経済・産業・行政に強い社全体の特色は出版にも生かされており、ビジネス書、行政研究書、教育書を多く出している。
雑誌は『教員養成セミナー』『世界週報』がある。かつては『週刊時事』や女性誌『エルメディオ』を発行していた。
一般書では千住文子『千住家の教育白書』、上野正彦 『死体は語る』などが話題を呼んだ。毒物劇物取扱責任者資格を扱う資格書、ワインに関する一般書・ソムリエ資格書といった異色の出版物もある。
[編集] その他
- 共同通信社から国内ニュースの配信を受けていない新聞大手3社にも、時事は国内ニュースを配信している。朝日新聞の「asahi.com」では発表モノや発生モノの記事で、自社の記者が原稿を書き上げるまでの間、時事から配信を受けた記事を掲載して間を持たせることもある。
- 大手広告代理店「電通」の最大株主で、役員を派遣している。2001年に電通が東京証券取引所に新規上場したとき、保有していた電通株の一部を売り出した。これが東京・銀座に新本社を建設するための原資になった。