必殺からくり人・富嶽百景殺し旅
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必殺からくり人・富嶽百景殺し旅(ひっさつ - にん・ふがくひゃっけいころしたび)とは、必殺シリーズの第13弾として、朝日放送の制作により、1978年8月25日から11月24日にかけてテレビ朝日系列で放映された時代劇。全14話。
全4作続いた「からくり人」シリーズの最終作。
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[編集] 作品内容
前作『新・必殺からくり人・東海道五十三次殺し旅』にて、天保太夫一座が、絵師・安藤広重の依頼を受け、「東海道五十三次殺し旅」を遂行してから、一年の歳月が流れたある日の事。天保太夫一座の座長・泣き節お艶(えん)(山田五十鈴)は、出雲のお艶と名前を変え、一座自体も「出雲太夫一座」と名称を変え、江戸で、小屋掛けの芸人一座を続けていた。
そんな時、出雲太夫一座は、舞台の演目に「淫らで不届き」な物があるとして、お艶たちは、奉行所から「江戸十里四方所払い」を言い渡された。突然の事に戸惑う一座だが、役人はさらに小屋に火をかけ、追い討ちをかける。小屋も身の回りの物も失い、途方に暮れる一座に、江戸の闇の殺し屋の大元締・西村永寿堂与八(岡田英次)が、お艶たちの前に突如現れた。永寿堂はお艶たちが、「東海道五十三次殺し旅」を遂行した事を知った上で、新たに江戸の名絵師・葛飾北斎(小沢栄太郎)が描く連作風景画「富嶽百景」の絵の中に秘めた一連の悪人退治を依頼して来たのだ。
お艶たち出雲太夫一座は、永寿堂の依頼を受け、永寿堂配下の殺し屋であり、殺しの見届け役兼助っ人として出向参加する唐十郎(沖雅也)を仲間に加え、「富嶽百景殺し旅」へと旅立つ。
[編集] 制作の背景
「必殺シリーズ」第13作を迎えた本作は、前作『新・必殺からくり人・東海道五十三次殺し旅』の続編という作品世界である。
前作からは、山田五十鈴と芦屋雁之助のキャストはそのままに、山田が演じた前作の登場人物「泣き節お艶」は、本作では「出雲のお艶」と、名を変えて登場。前作の芦屋が演じた一座の番頭格である「火吹きのブラ平」も、本作では劇中上の確証こそないものの、「どじょうの宇蔵」と名を変えて登場する等、前作のイメージをほぼそのまま受継いでいる。
本作からの新メンバーは、出雲太夫一座の芸人兼からくり人の密偵役として、虫の鈴平(江戸家小猫)と、一座の踊り子兼密偵役のうさぎ(高橋洋子(第1~4話)→体調不良により、第5話より真行寺君枝に交代)が加わり、更に一座の殺しの助っ人として、江戸の殺し屋の大元締であり、表稼業は絵草子・版画の版元である、西村永寿堂与八配下の凄腕の殺し屋・唐十郎(沖雅也)が参加。
本作は、前作では絵師・安藤広重が描いた「東海道五十三次」をモチーフにしたのに対し、史実にその名を残しながらも、今なお多くの謎を残し続ける葛飾北斎が描いた「富嶽百景」をモチーフに、前作同様、殺しの依頼が、あぶり出しで絵に表れるというアイデアを、そのまま引き継いでいる。言ってみれば、本作は前作のマイナーチェンジ版という形で、制作された物であると言うのが相応しい。
キャスティングの面で言うと、前作より連続出演の山田、芦屋に加え、初レギュラー出演の江戸家、高橋、真行寺、小沢、第9作『必殺からくり人・血風編』以来、二度目の出演となる吉田日出子。そして、第2作『必殺仕置人』、第6作『必殺仕置屋稼業』に続き、三度目の登板となる沖雅也が、本作では凄腕の殺し屋であり、 クールで寡黙な紳士の唐十郎を演じた。
歴代シリーズで、沖が演じた棺桶の錠、市松とは違い、本作で演じた唐十郎は、最も常識人でありながら、今なおそのキャラクターに惹かれるファンは多い(沖はその4年後、スペシャル第2作・必殺シリーズ10周年記念スペシャル『仕事人大集合』で、『仕置人』以来9年振りに、棺桶の錠を演じたが、これがシリーズ最後の出演となった)。
本作は新機軸も導入したが、難点も幾つかあり、永寿堂が安藤広重の描いた絵画「東海道五十三次」に秘めた殺しの謎を、そのまま二番煎じとして、葛飾北斎の描いた絵画「富嶽百景」にスライド企画した意図が全く不明である事や、 殺しの隠し絵を、葛飾北斎に依頼する必然性があまり感じられない等という事があげられるが、制作スタッフの健闘振りも手伝い、見所も多い傑作であると言えよう。
[編集] 殺し技
- 出雲のお艶…三味線の撥で、相手の喉を斬り裂き、首筋を突き刺す。
- 本作では、撥に加え、至る所が武器となる仕込み三味線を使用。
- まず、柄が取れて太い針が飛び出し、悪人の首筋や急所を刺す(第2話他)。
- 他にも弦の糸で首を絞めたり、内蔵されている手裏剣を使い、悪人目掛けて投げ付けたり(第9話)、相手の首筋を刺し殺したりもした(第13話)。
- 唐十郎…釣竿に仕込まれた針で、悪人の首筋を刺す。
- 普段は一尺足らずの筒状だが、殺しの際は、鋭い針が数メートルにも延び、遠距離戦でも、その威力を発揮した。
- なお、接近戦の際は、釣竿の柄から針の部分のみを引き抜き、悪人の首筋を突き刺す。
- 例外的に、相手から奪った刀を使用し、斬り倒した事もある(第7話)。
- 宇蔵…一座の演目に使う魚釣りの大型魚籠(びく。内側は金属で出来ている)を悪人の頭部に被せたまま、怪力で魚籠を締め上げながら、相手の頭蓋骨を粉砕する。
- その際、頭蓋骨がバラバラに砕け落ちる様子を、アニメーションにて表現している(第1~3、5、7、10話)。
- うさぎ…鈴平同様、殺しは行わないが、緑(ふち)の部分が発火して回転するザルを投げ付け、悪人たちを威嚇・牽制する(第1、3話)。
- 第1話の冒頭では、唐十郎を味方とは知らなかったため、彼の目前で、威嚇に使用している。
[編集] キャスト
- ※エンディングでは、鈴平と表記。
- ※エンディングでは、永寿堂与八と表記。
- 出雲のお艶 … 山田五十鈴
- ※エンディングでは、お艶と表記。
- ナレーション
- 語り … 吉田日出子
- 作 … 早坂暁
[編集] 主題歌
[編集] 放映リスト
[編集] 関連項目
テレビ朝日系 金曜22時台 | ||
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