必殺仕切人
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『必殺仕切人』(ひっさつしきりにん)は、必殺シリーズの第22弾として、 朝日放送と京都映画撮影所(現・松竹京都映画株式会社)が制作し、1984年8月31日から12月28日にかけてテレビ朝日系列で放映された時代劇。全18回。
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[編集] 作品内容
前作『必殺仕事人IV』最終回で、仕事人チームが解散してから、数ヶ月の月日が経ったある日の事。
江戸城内の醜い権力争いに巻き込まれる形で、元・大奥中臈(ちゅうろう)頭・お国(京マチ子)と、彼女に仕えていた女中・お清(西崎みどり)は大奥を追放されてしまう。行き場の無い二人は、髪結いの勘平(芦屋雁之助)とその妻・お勝(ひし美ゆり子)の住む四谷の久兵衛長屋に、腰を落ち着け、市井の人間として生きる事となった。
そこに、大奥追放の張本人が仕向けた、二人の仕切人-仕事人チーム解散後も江戸に残った勇次(中条きよし)と、仕立屋の新吉(小野寺昭)がお国の前に立ちはだかるが、彼女の無垢で清らかな心に躊躇した二人は、仕留める事が出来なかった。勇次と新吉は仕事に裏を感じ取り、反旗を翻して悪人からの依頼を受けた仕切人組織の元締(実は外道仕切人)配下を始末する。
その現場を見ていたお国は、勇次に始末されそうになるが、そこに現れたのが、かつては凄腕の仕切人として闇の世界で名を馳せていたが、現在は足を洗っていた勘平であった。勘平は外道仕切人組織の元締を始末した上で、勇次と新吉に協力を要請する。お国と一緒の現場にいた、元は江戸城・大奥御広敷番であったが現在はお国ともに大奥を追放され、小さな小鳥屋を商売とする虎田龍之助(高橋悦史)を加え、お国たちは、仕切人としての初仕事として、悪人一派を仕置した。ここに仕切人チームが結成される事となり、今日も頼み銭を貰い、弱者の晴らせぬ恨みを請け、悪人たちを次々と闇に葬って行く。
[編集] 制作の背景
「必殺シリーズ」第22作となった本作は、前作『必殺仕事人IV』から引き続き、三味線屋の勇次が連続出演。中村主水(藤田まこと)のグループと、凄腕の仕事人である母親のおりく(山田五十鈴)からも独立した形の勇次が、初の一本立ちを果たしたというのが、本作の重要事項である。
本作の他のキャスティングとしては、まず最初に第16作『必殺仕舞人』、第18作『新・必殺仕舞人』に出演した京マチ子と高橋悦史を再び起用。仕舞人とは違ったキャラクターを好演した。
次に、第13作『必殺からくり人・富嶽百景殺し旅』以来、6年振りの復活を果たした芦屋雁之助が登場。京、高橋同様、『仕舞人』で初登場し、本作で「非主水シリーズ」連続4作品出演を果たした西崎みどり。シリーズ初登場として、当時の刑事ドラマ『太陽にほえろ!』(日本テレビ)で、殿下こと島公之役を演じた小野寺昭を起用。「必殺シリーズ」恒例の「どう見ても、殺し屋(役)には見えない、ホームドラマに出演する俳優を起用」するという、メインコンセプトは本作においても健在で、小野寺が演じても、決して後ろめたさを感じさせる事の無い、キャラクター造りは見事である。
他にも、当時のアイドルであり(第19作『必殺仕事人III』より登場の、ひかる一平の路線を受け継ぐ形となった)、現在は俳優の山本陽一。特撮ヒーロードラマ『ウルトラセブン』(TBSテレビ)で、ウルトラ警備隊の一員であり、ヒロインの友里アンヌ隊員を演じた、ひし美ゆり子を起用し、華やかな作品作りに、一役買ったキャスティングとなっている。
作品内容的には、人物紹介編の第1話、勇次の危機により、仲間としての結束を固める仕切人チームの姿を描いた第2話は、前作『仕事人IV』同様、視聴率は30%台を獲得するが、以降、第3話より現代の事件・流行を風刺した演出、時代性を無視した、『仕事人』シリーズ同様、当時のバラエティ番組を意識した、やや行き過ぎた演出が裏目に出て、ストーリーは平板傾向に変化してしまい、視聴率も10%台後半まで下降してしまう。それに加えて、スケジュールの都合(当時、舞台の公演中であった)により、高橋が第6話で一時降板し、主役の京も第13~16話の間不在となる等、メンバーが揃わない回が続いた。その様なマイナス面が目立った反面、勇次・新吉・勘平たちの殺し技の完成度は増し、工夫を凝らした技の数々は、ある意味『仕事人』シリーズを超えたといっても良い。一貫してソフト路線を通した本作は、バラエティー番組全盛の現在の目を通してみると、意外に楽しめる事ができ、放送当時頑なに拒否の姿勢を取っていた初期~中期から観続けたファンや一般視聴者層向けの作品である。
余談ではあるが、本作の成功によっては、必殺は「中村主水シリーズ」と、勇次をメインとする「仕切人」シリーズの二大看板となる予定だった(シリーズのチーフプロデューサーを務めた、朝日放送の山内久司(当時、現・常任顧問)の口からコメントされている)が、結果はご存知の通りである。
- (視聴率は関西地区のもの)
[編集] 殺し技
- お国…殺す前に悪人の運勢を占い、相手に「卦は凶」と言い放つ。その後地面に筮竹をばら撒き、転倒した所を赤塗りの鋼鉄製筮竹を使い、相手の首筋に突き刺す。占いの腕はともかくとして、後に大奥に上がった人物が何ゆえのこのような技を身につけたかは最後まで明かされなかった。
- 新吉…殺す前に夜光塗料を塗ったマチ針を悪人の心臓部分に投げ付け、それを目印にして物差しに仕込んだ刀で、相手の急所を刺す、若しくは斬る。
- 第1話は、通常使用する物差しとは別形態の、携帯用小型物差しも使用(画面上から推測するに、常に護身用として常備している様である)。
- 外道仕切人を仕置した。
- また、第2話でも、考え方の相違から、勢いの余り、勇次を始末しようとした時に、携帯用小型物差しを牽制に使用している。
- 勘平…まず長く伸ばした右小指の爪で、悪人の元結を切断する。
- その後、相手の乱れた髪を頭の上に結び、動きを封じ込めた上で、相手を怪力で、壁などに激突死させる(第1~4話)。
- 途中より元結を切るアクションは割愛され、四方にロープを張り巡らせ、リングを作り、その上で、ハンマー投げ(第5話)や、空手チョップ(第14話)などを駆使した、プロレス技に変更した。
- 虎田龍之助…悪人の頭上に、風呂敷を被せながら(本人曰く「血を見るのが嫌い」なため)、鋼鉄製の長煙管で、相手の頭部(頭蓋骨)を叩き割る。第一話では相手の頭にキセルがめり込む描写があったが、二話以降は後ろから殴り殺した様な仕草のみに描かれ方が変更されている。まだこの人は武士であった事や、あのバカでかいキセルを実際に煙草を吸う為に常用していた事からも、殺しの技に説得力はある。
- 日増…殺しはせず、地面に火薬を撒いた後、手製の発火装置で標的を爆破。
- 第1話で、殺しを終えた後のお国たちに遭遇した事から、第2話よりお清とともに仕切人チームに加入。
- お国たちの援護や、陽動作戦を行う。
- 勇次…三味線の三の糸を目標の首筋目掛けて投げ、首に巻き付け締め上げ、木の枝や梁に糸をひっかけ(あるいはそうなるように糸を投げ)、宙吊りにして窒息死させる。
- 本作では金属製のフックを使い、そこに糸を通した上で、悪人の首を絞め殺す変則技を披露している(第11話)。
[編集] キャスト
- お国 … 京マチ子(第1~12、17、18話)
- 新吉 … 小野寺昭
- お清 … 西崎みどり(現・緑)
- 日増(スキゾー) … 山本陽一
- お勝 … ひし美ゆり子
- 勘平 … 芦屋雁之助
- 虎田龍之助 … 高橋悦史(第1~6、17、18話)
- 勇次 … 中条きよし
- ナレーション
- 語り … 4世市川段四郎
- 作 … 山内久司
[編集] 主題歌
[編集] 放映リスト
- もしも大奥に古狸がいたら
- もしも勇次の糸が切れたら
- もしもお江戸にピラミッドがあったら
- もしも狼男が現れたら
- もしも鳥人間大会で優勝したら
- もしも惚れ薬と眠り薬を間違えたら
- もしも九官鳥が秘密をしゃべったら
- もしも密林の王者が江戸に現れたら
- もしも女房が裸婦モデルになったら
- もしも超能力でシャモジが曲がったら
- もしも父親が"娘よ"と泣いたら
- もしも江戸が厳戒態勢に入ったら
- もしも16000両だましとられたら
- もしも歳末富くじがイカサマだったら
- もしも珍発明展が開かれたら
- もしも討入りに雪が降らなかったら
- もしも江戸に占いブームが起ったら
- もしもソックリの殺し屋が現れたら
[編集] 関連項目
テレビ朝日系 金曜22時台 | ||
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