左手のためのピアノ協奏曲 (ラヴェル)
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モーリス・ラヴェルの左手のためのピアノ協奏曲ニ長調は、第一次世界大戦で右手を失ったピアニスト、パウル・ウィトゲンシュタインの依頼を受けて作曲されたピアノ協奏曲である。
当時既に構想していたピアノ協奏曲ト長調と果敢にも並行してこの曲を作曲することに挑戦した。ラヴェル自身、「とても興味深い体験だった」と語っている。ラヴェルは、この曲を作る際にサン=サーンスの『左手による6つの練習曲』を参考にしたという。
1931年11月27日、ウィーンでロベルト・ヘーガー指揮、ヴィトゲンシュタインのピアノで初演が行われたが、ヴィットゲンシュタインは楽譜通りに弾き切れずに勝手に手を加えて演奏し、その上ピアノがあまりにも難技巧にこだわりすぎていて音楽性がないと非難したため、ラヴェルとヴィットゲンシュタインとの仲はこれ以降険悪となった。その後、1933年1月27日に、ジャック・フェヴリエの独奏によりパリで再演されたのが、楽譜どおり演奏された初めての演奏となった。
[編集] 編成
独奏ピアノ、ピッコロ(3番フルート持ち替え)、フルート2、オーボエ2、コーラングレ、小クラリネット、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、テューバ、ティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、タムタム、トライアングル、ウッドブロック、鞭、ハープ、弦五部
オーケストラは協奏曲としては大規模な三管編成がとられている。また、多様な打楽器とハープが用いられている点はピアノ協奏曲ト長調と共通している。ピアノが左手だけのために書かれているからといって、テクスチュアが薄く聴こえないようにという配慮の1つである。
[編集] 楽曲解説
- Lent ニ長調 4/4拍子
- 単一楽章の3部構成であるが、3楽章構成とも見て取れる。コントラバスの和声とコントラファゴットの旋律という超低音で始まると、管弦楽が次第に高揚し、最高に盛り上がった所でピアノが割り込み、華やかなカデンツァを奏す。
- 全体的に可憐なイメージの1部とは変わって2部ではジャズ的にピアノが演奏され、途中1部を思わせる美しい旋律がありながらも、ユーモアに溢れている。
- 3部では1部の回帰主題が奏されるが、すぐにピアノの非常に長いカデンツァになり、ラヴェル独特の精緻な技巧が左手のみで超絶的に演奏される。最後は2部の動きが再度繰り返され、一瞬のうちに終わる。
[編集] その他
- ヴィトゲンシュタイン以降も、一時的あるいは恒久的な故障や欠損により左手のみで活動するピアニストはしばしば現れており、この協奏曲は彼らの重要なレパートリーの1つとなっている。もちろん、普通のピアニストによっても盛んに演奏される。