塩辛
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塩辛(しおから)は、魚介類の身をその内臓とともに塩漬けにし、内臓に含まれる酵素によって発酵、熟成した保存食品である。発酵をよくするために麹を加える場合もある。
そのまま酒肴としたり、ご飯にのせて食べる。北海道では蒸かしたジャガイモにイカの塩辛を乗せて食べることもある。
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[編集] 歴史
古くは『今昔物語』に塩辛との文字が現れるが、江戸期以降の塩辛と同じものと確認できないことと時代的に孤立していることから、初出は『日葡辞書』とするのが妥当と考えられる。16世紀から記録が確認できる『なし物』との併用がしばらく続いた後、江戸中期後半以降に塩辛という名称で定着した[1]。
文献[2]には、やや訛った『しょうから』(鳥取市)や、『しょから』(志摩市)の事例が掲載されている。
[編集] 塩辛の種類
- イカの塩辛 イカの身の細切りに、内臓、塩を和えて造る。詳細は後述。
- タコの塩辛
- まんまの塩辛 北海道白糠町などで作られている。ミズダコ(やなぎだこ)の卵を使用。
- エビの塩辛 甘エビやボタンエビなど、小型のエビをそのまま塩蔵したもの。
- アミの塩辛 オキアミ類をそのまま塩蔵したもの。詳細は後述。
- がん漬 小型のカニをすり潰した塩辛。
- マグロの塩辛
- カツオの塩辛 高知県の酒盗(しゅとう)など。
- サバの塩辛
- ひしこ イワシを使うもの。
- スクガラス 沖縄県でスクと呼ばれるアイゴの稚魚を塩蔵したもの。豆腐に乗せて食べることが一般的。
- 鮎うるか 鮎の内臓や身の塩漬け
- めふん 鮭の腎臓を塩辛にしたもの
- たらこの塩辛 タラの魚卵を発酵するまで塩蔵したもの。
- このわた ナマコの内臓を塩辛にしたもの
- ホヤの塩辛 ホヤの全体を使用。
- 莫久来(ばくらい)海鼠腸(このわた)とホヤの塩辛を混ぜたもの。
- カキの塩辛 カキのむき身を使用。
- サザエの塩辛
- トコブシの塩辛
[編集] 韓国の塩辛
韓国ではチョッカルまたはチョッと称し、キムチの原料として欠かせないものである。
- カニの塩辛 ケジャンと呼ばれる。
- エビの塩辛
- イワシの塩辛 メルチョッと呼ばれる。
- スズメダイの塩辛 チャリヂョッと呼ばれる。
- イシモチの塩辛 キムチを漬けるときに使われる。
- タチウオの塩辛 キムチを漬けるときに使われる。
- ウニの塩辛 済州島でクサルと呼ぶウニを使用して作る。
[編集] イカの塩辛
軟体動物のイカを塩蔵して作る。ヤリイカやホタルイカを使うことが多い。韓国ではヤリイカの塩辛をハンチヂョッと呼んでいる。
伝統的なイカの塩辛は、大きく分けて以下の3種類に分類できる。
- 白造り
- イカ肉と塩のみで発酵させる。見た目は刺身に近く、白い。
- 赤造り
- イカ肉、ゴロ(内臓:中腸腺)、塩を混合して発酵させる。仕上がりは赤い。最も一般的な形。
- 黒造り
- イカ肉、ゴロ(内臓:中腸腺)、イカスミ、塩を混合して発酵させる。仕上がりは黒い。利用は一部の地方のみ。富山県などが産地。
発酵に要する時間は下にいくほど長くなる。また、旨味も下にいくほど濃厚である。近年は上記に加え、キムチ塩辛なども販売されている。 イカの塩辛の発酵は微生物による働きに加え、内臓(中腸腺)に含まれる消化酵素によって自己消化が起こり、アミノ酸が生成するプロセスも重要な役割を果たしている。塩分は伝統的な製法の場合8%~12%程度、近年の大量生産品は4%~8%である。
[編集] アミの塩辛
日本の有明海沿岸、中国、香港の長洲島、マカオ、韓国など東アジア各地で調味料としてアミの塩辛が作られている。
香港のものは「蝦醤」(ハージョン)といい、野菜の炒め物やスープの調味に使われる。中国浙江省寧波市では、ゆでた里芋につけて食べる。
韓国ではセウジョッっといい、キムチを漬ける際に、発酵を促進し、アミノ酸のうま味を加える目的で使われる。
[編集] 参考文献
- ↑ 川上行蔵 『つれづれ日本食物史』 第2巻 東京美術 ISBN 4-8087-0580-X
- ↑ (社)農山漁村文化協会編 『聞き書ふるさとの家庭料理』 第17巻 魚の漬込み 干もの 佃煮 塩辛