国際関係論
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国際関係論(こくさいかんけいろん、International Relations:IR)は、国際関係、つまり国家と国家、あるいは国家群と国家群(または国家と国家群)、国際社会と国内(地域)社会などのあいだに生起するさまざまな問題について分析・検証をおこなう学問分野である。これを既に独立した学問となっていると見なす立場からは国際関係学と呼ばれることもある。
狭義では国際政治学(International Politics:IP)とほぼ同義である。狭義の国際関係論では、国家と国家、地域と地域との政治的関係すなわち外交や政策決定に着目して研究をおこなう。20世紀後半からは、国際機関、多国籍企業、非政府組織、武装組織など、必ずしも特定の国家や地域に所属しない集団も、国家と同様の意義を持つ主体として認識されるようになってきている。
広義では国際政治学、国際法、国際経済学、国際関係史あるいは外交史、地域研究さらには比較政治学などから構成される、社会科学領域での学際分野と理解される。この立場からは、国際関係論の最も基本的な方法は関係と比較である、とされている。
狭義の国際関係論=国際政治学は、大学の国際関係学部、国際学部はもちろん、国際関係学部、国際学部が設置されていない大学でも政治学を学べる大学、すなわち法学部や政治経済学部等が設置されている大学なら学ぶことができる。また、入門的に学ぶだけであれば、国際関係論や国際政治学、国際関係学といった名前の科目は、より多くの大学で開講されているはずである。しかし、特に広義の国際関係論(学)についての理解は、大学あるいは研究者によって大きく異なる場合があり、その意味内容については事前によく確認した方がよい。
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[編集] 日本での国際関係論の学際的発展
日本における国際関係論は、第二次世界大戦(日中戦争および太平洋戦争)での敗戦への反省が出発点にある。その反省とは、敗戦の一因が、国際法・国際経済や各国事情を含む、広い意味での国際関係への多角的な理解を欠いていたことにあった、というものである。したがって、日本の国際関係論は少なくとも当初においては広義の学際的なものとして構想された。なお、その発祥の地、東京大学教養学部では当初、アメリカが主導するGHQの占領下という時代背景のもと、社会主義圏のソ連や中国を対象とする地域研究専攻が開設できなかった。そのため、専攻として開設できない地域についての社会科学的な研究、さらに既成の1つの社会科学分野に収まらない研究は全て国際関係論の対象となる、とされた時期もあった。しかし、広く解釈しても国際的とはいえないものまで国際関係論とすることへの違和感から、相関社会科学が派生することになった。
[編集] 論か学か
上記のような経緯から、国際関係論は学際的なものであり単一の学ではありえない、あってはならない、という主張が、特にその発祥の地である東京大学教養学部の国際関係論専攻出身者などに根強い。一方で、広義の国際関係論にも既に相当の蓄積があり、独立した学問分野とみなしてよい、学となっているとみなす立場からは、国際関係学と呼ばれることもある。そのほか、一部では国際関係学を国際関係論と地域研究の総称として用いる場合もあるという。しかし、広義の国際関係論には地域研究が含まれているという理解もあるので、国際関係論と国際関係学を使い分ける本質的な差とはいえない。なお、地域研究者の多くは、必ずしも国際関係論や国際関係学の一部として地域研究を行っているという認識を持ってはいないことにも留意を要する。
[編集] 狭義の国際関係論における主要理論
- 現実主義(Realism)
- 新現実主義(Neorealism)
- 新古典現実主義(Neoclassical Realism)
- 理想主義(Idealism)
- リベラリズム(Liberalism)
- マルクス主義(Marxism)
- 構成主義(Constructivism)
- 批判理論(Critical Theory)
- ポスト構造主義(Post-structuralism)
- フェミニズム(Feminism)
- 英国学派(English school)
[編集] 狭義の国際関係論における論争史
- 第1の論争:戦間期から第二次大戦後の時期に起きた理想主義と現実主義の論争。
- 第2の論争:1960年代に行動科学の影響を受けた科学主義と、歴史や哲学を重視する伝統主義の間で起きた論争。
- パラダイム間論争:1970年代から1980年代にかけて、現実主義・リベラリズム・マルクス主義の3つのパラダイムが鼎立した。
- ネオネオ論争:新現実主義とネオリベラル制度論の間で、アナーキー下で国家間において協調は達成しうるのかという点や、いわゆる「相対利得」をめぐって論争が交わされた。一部の論者によれば、この論争を通じて、「ネオネオ統合」と呼ばれる収斂が生じたとされる。
- 第3の論争:実証主義とポスト実証主義。
[編集] 狭義の国際関係論の主な研究者
- 国際政治学者を参照。
[編集] 主要学術誌
[編集] 英語
- Alternatives: Global, Local, Political, (Lynne Rienner, 1975-).
- Australian Journal of International Affairs, (Australian Institute of International Affairs, 1990-).
- British Journal of Politics & International Relations, (Political Studies Association / Blackwell, 1999-).
- Cambridge Review of International Affairs, (Centre of International Studies, University of Cambridge / Taylor & Francis ).
- Cooperation and Conflict: Nordic Studies in International Politics, (Nordic International Studies Association / Sage, 1965-).
- Ethics & International Affairs, (Carnegie Council on Ethics and International Affairs, 1987-).
- European Journal of International Relations, (Standing Group on International Relations of the European Consortium for Political Research(ECPR) / Sage, 1995-).
- Foreign Affairs, (Council on Foreign Relations, 1922-).
- Foreign Policy, (Carnegie Endowment for International Peace, 1970-).
- Global Governance: A Review of Multilateralism and International Organizations, (Lynne Rienner, 1995-).
- Global Society: Journal of Interdisciplinary International Relations, (Taylor & Francis, 1996-).
- International Affairs, (Royal Institute of International Affairs / Blackwell, 1922-).
- International Journal, (Canadian Institute of International Affairs, 1946-).
- International Organization, (Cambridge University Press, 1947-).
- International Politics, (Palgrave, 1996-).
- International Relations, (David Davies Memorial Institute for International Studies / Sage, 1954-).
- International Relations of the Asia-Pacific, (The Japan Association of International Relations / Oxford University Press, 2001-).
- International Security, (Belfer Center for Science and International Affairs / MIT Press, 1976-).
- International Studies Perspectives, (International Studies Association / Blackwell, 2000-).
- International Studies Quarterly, (International Studies Association / Blackwell, 1967-).
- International Studies Review, (International Studies Association / Blackwell 1999-).
- Journal of International Relations and Development, (Central and East European International Studies Association / Palgrave, 1998-).
- Journal of Peace Research, (International Peace Research Institute / Sage, 1964-).
- Millennium: Journal of International Studies, (London School of Economics, 1971-).
- Review of International Political Economy, (Routledge, 1994-).
- Review of International Studies, (British International Studies Association / Cambridge University Press 1981-).
- Security Studies, (Frank Cass 1991-).
- World Politics: A Quarterly Journal of International Relations, (Johns Hopkins University Press, 1948-).
[編集] 日本語
[編集] 学会
- Asian Political and International Studies Association.
- British International Studies Association (BISA).
- Central and East European International Studies Association (CEEISA).
- International Studies Association (ISA).
- Israeli International Studies Association.
- Korean International Studies Association.
- Mexican International Studies Association (AMEI).
- Nordic International Studies Association (NISA).
- Portuguese International Studies Association (APHRI).
- Russian International Studies Association (RISA).
- Standing Group on International Relations of the European Consortium for Political Research (ECPR)(SGIR).
- 日本国際政治学会(The Japan Association of International Relations).
[編集] 大学
[編集] 国際関係学部
[編集] 国公立大学
[編集] 私立大学
[編集] 国際学部
[編集] 国際関係学科
[編集] 国立大学
[編集] 公立大学
[編集] 私立大学
- 慶応義塾大学総合政策学部
- 早稲田大学国際教養学部
- 国際基督教大学教養学部
- 上智大学外国語学部
- 上智大学法学部国際関係法学科
- 鈴鹿国際大学国際学部
- 津田塾大学学芸学部
- 東海大学教養学部国際学科
- 常磐大学国際学部
- 文教大学国際学部
- 桜美林大学国際学部
- 明治学院大学国際学部
- 法政大学法学部国際政治学科
- 青山学院大学国際政治経済学部
- 二松学舎大学国際政治経済学部