Privacy Policy Cookie Policy Terms and Conditions 国鉄キハ10系気動車 - Wikipedia

国鉄キハ10系気動車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

国鉄キハ10系気動車(こくてつきは10けいきどうしゃ)は、日本国有鉄道(国鉄)が1953年に開発した一般形気動車のグループである。1957年までに728両(広義のキハ10系(後述)を含めて762両)が製作され、全国で使用された。

キハ1018(加悦SL広場に保存)
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キハ1018(加悦SL広場に保存)

なお、この呼称は国鉄の正式系列呼称ではなく、同一設計思想に基づいて製作された形式を便宜的、趣味的に総称したものである。広義の10系気動車としては、1952年に試作された電気式気動車キハ44000系、1953年に試作された液体式気動車キハ44500形を含む狭幅車体の気動車グループ全体が包括されるが、ここでは、次表に掲げた新造形式及びそれらの改造車について扱う。

国鉄の量産形気動車としては初めて液体式変速機を実用化し、複数車両の総括制御を容易としたことで、日本におけるその後の気動車普及の途を開いた。

一般形気動車の現代に至る運用形態の基本は、本形式を持って確立されたといえる。また、車両の電気系統・編成回路・動力機器の構成も、多くが以降の一般形内燃動車両開発の基本として受け継がれた。日本の鉄道技術史上における重要な系列である。

キハ10系新造形式一覧(付:派生形式一覧)
形式 旧形式 車体
形状
便
製造
初年
製造
両数
派生形式 備考
キハ17形 キハ
45000
片運転台 1953年 402 キユニ17形
キニ17形
1~205は
全クロスシート
キハ16形 キハ
45500
片運転台 1954年 99 キハユニ18形
キユニ18形
 
キハ10形 キハ
48100
両運転台 1955年 70   
キハ11形 キハ
48000
両運転台 1955年 74 キユニ11形 101~111は
北海道用
耐寒形
キハ12形 キハ
48200
両運転台 1956年 22 北海道用
耐寒形
キハ18形 キハ
46000
運転台
なし
1954年 31 キハニ15形 1~15は
全クロスシート
キロハ18形 キロハ
47000
運転台
なし
1954年 8 キハユ15形
キユニ15形
キニ15形
2・3等合造車
洗面所付
キハ50形 キハ
44600
片運転台 1954年 2 キハユニ17形 2個エンジン車
試車
キハ51形 キハ
44700
片運転台 1956年 20 キニ55形 2個エンジン車

(旧形式は1957年の称号改正以前の形式)

目次

[編集] 概要

1953年に液体式試作気動車として開発されたキハ44500形の実績を基に開発され、車体の大きさや性能もほとんど同一である。従って車体断面は標準的な電車・客車より小さく、軽量化が徹底されていた。

[編集] 主要機器

[編集] 機関・変速機・逆転機

DMH17B形ディーゼル機関(160PS/1,500rpm)にTC-2液体変速機とDT19形台車を組み合わせている。変速機は後にDF115も用いられた。

エンジンと変速機は車体床下に吊り下げられた機関台枠に搭載されており、ここから取り出された動力は、プロペラシャフト(ユニバーサルジョイント)、ギアボックスと一体化の上で台車のトランサムに2本の平行リンクで結合されたベベルギアによる逆転機を経て、片方の台車の車体中央寄りの1軸を駆動する構造であった。

この基本構成、特に逆転機の支持機構は戦前に日本車輌製造本店が考案し、国鉄ではキハ36900形で初採用したものである。これはその簡潔にして合理的な構造ゆえに、日本の気動車における駆動システムの標準方式として広く普及し、以後現在に至るまで日本の気動車の大半に採用され続けている優れた設計であるが、その反面構造上の制約から2軸駆動が困難で、エンジン出力が不十分であった大戦前には、ボルスタ位置を動軸側にずらして非対称配置とし、台車が受ける荷重を極力動軸にかかるようにして粘着力を増す、偏心台車と呼ばれる特別な設計を採用する例が少なからず存在した。だが、当時の気動車としては大型の本系列の場合、各台車にかかる荷重が充分大きく、かつ液体式変速機の特性から起動トルクも大きく、また戦前期の150PS級機関搭載19m級気動車であるキハ42000形でも通常台車による1軸駆動で充分実用になっていたためもあってか、特にそのような機構は導入されていない。

[編集] 台車

本系列で採用されたDT19/TR49形台車は、電気式のキハ44000系用として開発されたDT18を祖とする、軽量化を考慮し、鋼板をプレスした部材を溶接して組み立てられた台車枠と、ゴムブロックを枕ばねに用いた近代的な構造の台車であった。

軸バネはヤジロベエ式に中央で釣り合いを取る下天秤ウィングバネ構造で、これは汽車製造が京阪電鉄や南海電鉄向けに納入した高速電車用新型台車で先行採用して実績を積んでいた方式であった。

これに対し、ゴムブロックによる枕バネは、当時の鉄道車両や自動車でゴムバネの採用例が増えていたことに影響を受けて採用されたものであり、金属ばねに比べ軽量であること、圧縮されるとばね定数が上がること(非線形)、自己減衰作用があること(ダンパーが不要)、振動周期が短いことが特徴(特性)である。

しかし、これらの特性は枕バネよりはむしろ軸バネへの採用に適したもの[1]であり、自動車での採用も軸バネ相当部への採用が主であった。実際、乗り心地を支配する枕バネにゴムブロックを用いたこれらの台車では、DT19/TR49設計時に金属ばねとの違和感を低減するため、軸バネの容量を大きくするなどの対策を講じたが、いずれも乗り心地はやや硬めで、低速域、特に制動時に早い上下動を伴うものとなり、貧弱な座席共々評判は芳しくなかった。

[編集] 車体

鋼板及び鋼板プレス材により構成された軽量構造である。車体重量を可能な限り軽量化するために車体断面を小さく設計されており、当時の電車や客車に比べても車体幅が小さい2,600mmである。設計全般には、当時の車両火災などへの考慮から難燃・不燃材料などが多く取り入れられている。

[編集] 外観

側面レイアウトは2ドアで、先行して製作された電気式気動車キハ44100系に近い。

最大の特徴は、正面貫通式運転台を採用したことである。運用にフレキシビリティを持たせるためで、以後の国鉄気動車はほとんどがこれを踏襲し、結果自由自在な編成を組める利便性を有することになった。

側面形状は車体両端にステップ付のドアを配置し、窓は上段をH断面ゴム(Hゴム)支持固定、下段を上昇式とした「バス窓」である。窓下には補強帯(ウインドウ・シル)を備えた古い形態を残す。車体中央部壁面に排気管を立てた屋上排気方式を標準とした(従来の床下排気式に比して排気効率が向上し、乗降客や客室への汚染の問題が解決された)。

[編集] 内装・設備

内装はベニヤ板に耐火塗料を塗布した簡易なもので、照明はまだ白熱灯であり、扇風機は設置されていなかった(キロハ18形の一部を除く)。

客室扉は閉じるときにのみ自動で動作する半自動ドアであった。このドア閉動作は運転台からの総括制御により編成全体で動作した。

座席は当初、機械式気動車や電気式・液体式試作気動車同様に背ずりの低い簡易なタイプで全クロスシートであった。だがこれでは居住性が悪いため、1954年途中から製造されたものは背ずりが高くなり、車端部にはロングシートを設置してラッシュ時に対応している。それでも肘掛けは省略され、背ずりも背中合わせに座った客同士の動きが伝わってくる粗末な代物であった。不評であった布団上掛けのビニールシートは後にモケット張りに改められた。車幅が狭いことからゆとりも少なく、台車構造の欠陥も伴って、乗り心地は決して良くなかった。

トイレ設置車は水タンクスペースを客室内に置いている。両運転台のキハ11・12形ではスペース節減のため、便所を運転台助士席側直後に半分めり込ませたようなレイアウトを採り、かつ、便器を便所内の対角線に沿って配置している(他にあまり例のない手法である)。
キロハ18形については二等客室に座席ピッチの広い固定クロスシートを配置し、便所の他に独立した洗面所も設けている。

[編集] 暖房装置

搭載された暖房装置は当初、走行エンジンの排気ガスを熱交換器に導き、車内空気を熱する排気暖房であった。これは戦前の機械式気動車以来の方式であったが、非常に効率が低く実用性を欠いた。

このため1954年以降、軽油燃料による独立した温気暖房装置(温風式ヒーター)を搭載する方法に方針を転換した。三国商工がドイツのヴェバスト社から技術導入した「三国ヴェバスト式」、または類似設計で五光製作所が製造した「五光式」のいずれかの温気暖房装置を搭載し、暖房性能を著しく改善している。温気暖房方式は以後1960年代前半まで国鉄一般形気動車の標準的な暖房方式となった。

[編集] 形式各説

[編集] 新製形式

キハ10系(キハ45000系)の新製形式は次の9形式である。

[編集] キハ17形(キハ45000形)

キハ17形は、本州以南向けのトイレ付き片運転台車で、1953年から1957年にかけて402両が製造された本系列の基幹形式である。日本初の本格的量産型液体式気動車である。

初期車はオールボックスシートであったが、1954年製以降の206~は、乗客の乗降の円滑化を図るため、扉付近のボックスシートがロングシートに変更されるとともに、シートの背ずりが高く改良された。また、1956年製の321~については、車体強度の向上が図られた関係で、トイレの窓がHゴムによる固定式となり、トイレ及び水タンク部の補強帯(シル・ヘッダー)が省略され、客室幅が12mm広げられた。客室の拡幅に関する設計変更は、同時期に製造されていた他形式でも行われている。

形式間改造については、11両がキユニ17形に、5両がキニ17形に改造されており、老朽廃車については、1973年から始まり、1981年までに全車が除籍された。うち4両が島原鉄道に譲渡されている。

[編集] キハ16形(キハ45500形)

キハ16形は、本州以南向けのトイレなし片運転台車で、1954年から翌年にかけて99両が製造された。車内は全車がキハ17206~と同様の扉付近にロングシートを配した背ずりの高いタイプとなっている。定員は106名(座席82人、立席24人)である。

形式間改造については、8両がキハユニ18形に改造され、そのうち6両がキユニ18形に再改造されている。廃車は1974年から始まり、1980年までに全車が除籍された。うち4両が島原鉄道に譲渡されている。

[編集] キハ10形(キハ48100形)

キハ10形は、本州以南向けのトイレなし両運転台車で、1955年から1957年にかけて70両が製造された。定員は、92人(座席76人、立席16人)である。

老朽廃車は1975年から始まり、1981年までに全車が除籍された。形式間改造車はない。両運転台車で使い勝手がよいことから地方私鉄への譲渡も多かった。7両を譲受けた水島臨海鉄道を筆頭として、南部縦貫鉄道(1両)、鹿島臨海鉄道(2両)、筑波鉄道(1両)、加悦鉄道(1両)の計12両が譲渡されている。

[編集] キハ11形(キハ48000形)

キハ11形は、主に寒地向けに製造されたトイレ付き両運転台車で、1955年から1957年にかけて74両が製造された。このうち48016~48026の11両は、北海道向けに耐寒耐雪設備が強化されており、1957年の改番の際は100番台(101~111)に区分された。北海道配置車については、その後にキハ12形が製造されたことから、本州に移っている。定員は、88人(座席74人、立席14人)である。48036は佐久間レールパークに展示されている。

形式間改造としては、1965年度に2両、1968年に1両の計3両がキユニ11形に改造されている。老朽廃車は、1975年から始まり、1980年までに全車が除籍された。私鉄へは、津軽鉄道へ2両、茨城交通へ3両が譲渡されている。特に茨城交通に譲渡された車のうち1両は、21世紀に入っても車籍を保って営業運転に充てられていた希有な存在で、2007年10月14日開館予定の鉄道博物館に展示される予定である。

[編集] キハ12形(キハ48200形)

キハ12形は、北海道向けのトイレ付き両運転台車で、1956年に22両が製造された。キハ11形との相違は、側窓が二重となったことである。当初は、デッキ部の仕切り壁は設置されていなかったが、後年、改造により設置された。定員は、基本的車体構造が同じキハ11形と同一である。

老朽廃車は、1976年から始まり、1980年までに全車が除籍された。形式間改造車及び譲渡車は存在しない。

浅田次郎の小説『鉄道員 (ぽっぽや)』に登場するのは、このキハ12形である(ただし、小説内の記述ではキハ12を1952年(昭和27年)製と説明しており、考証は完全ではないようである)。この小説の映画化に際し、撮影用に改装されたキハ12 23については、「国鉄キハ40系気動車 (2代)#キハ40形700番台」も参照されたい。

[編集] キハ18形(キハ46000形)

キハ18形は、本州以南向けのトイレなし中間車で、運転台を装備していない。1953年から1954年にかけて31両が製造された。キハ17形と同様、1953年度製造車(1~15)はオールボックスシートであったが、1954年度製造車(16~31)は客用扉付近をロングシートとしており、定員が異なる。外観上も1954年度製造車は戸袋窓が設けられており、これのない1953年度製造車と外観が異なる。

運用上の制約の多い中間車ではあったが、形式間改造はキハニ15形への1両のみであり、老朽廃車は1974年から1979年にかけて行なわれた。私鉄への譲渡車はない。

[編集] キロハ18形(キロハ47000形)

キロハ18形は、一般形気動車としては唯一の優等車(二・三等合造)で、トイレ付きの中間車である。1954年に1次車(1~5)が、1956年に2次車(6~8)の計8両が製造された。2次車は、二等室に扇風機を設置したため、その取付け部が屋根上に張り出している。定員は、二等32人・三等62人(座席44人、立席18人)である。

二・三等合造車であることから、準急列車に使用されることも多かったが、幅の狭い小型の車体であったことから居住性が悪く、優等列車での使用に無理があっため、準急用のキハ55系が登場すると準急運用から退き、1961年にキハユ15形へ6両、キニ15形へ2両が改造され、形式消滅した。キハユ15形については、5両がキユニ15形に再改造されている。

[編集] キハ50形(キハ44600形)

キハ50形は、勾配線区向けの強力(エンジン2基搭載)型気動車の試作として1954年に2両が製造されたものである。

1個エンジン気動車は急勾配区間では出力不足で十分な走行性能を得られないため、DMH17B形エンジン2基を搭載、総出力320PSの2軸駆動としている。しかし、2基のエンジンを対照に直列配置したことから床下スペースが不足し、これを補うため最大長22000mm、台車中心間は15700mmという長大な車体となった(通常型気動車に比して2m長い)。車体断面はキハ45000形をそのまま踏襲したため、極端に細長い外見となっている。トイレなしの片運転台車で、定員は110人(座席92人、立席18人)である。

勾配路線での走行性能は確保されたものの、規格外の長大な車体は一部路線の分岐器の通過に支障するため、運転線区が限定されることとなった。1961年に、エンジン1基を下ろしてキハユニ17形に改造され、形式消滅した。

[編集] キハ51形(キハ44700形)

キハ51形は、キハ50形の試用実績に基づいて製作された強力形気動車の量産型で、1955年から1956年にかけて20両が製造されたトイレ付きの片運転台車である。キハ50形では車体が長すぎて運用に支障を生じたことから、床下機器配置が見直され、プロペラシャフトの短縮などの措置が行われている。この結果、最大長は20600mm、台車中心間は14300mmに縮められ、運用線区の制約がなくなった。定員は92人(座席80人、立席12人)である。

1950年代後半には出力の余裕を買われて準急列車に用いられたこともあったが、主に本州内の勾配路線で普通列車に運用された。1965年には4両がキニ55形に改造された。廃車は1980年から1981年にかけて行なわれ、10系気動車のグループ中では比較的長命を保った。

[編集] 改造形式

本系列の気動車は、非電化ローカル線の無煙化(蒸気機関車の追放)を促進し、速度向上やフリークエントサービスを実現、1950年代における国鉄の近代化に貢献した。特に無煙化と速度向上の効果は大きく、日本各地の鉄道沿線から気動車導入の要望が続出、本形式の導入計画路線を巡って政治贈賄事件も起こったという逸話もある。

しかし10系気動車は、軽量化の要求から車体寸法が小さく居住性に難があったため、後継形式のキハ20系気動車が普通の客車と変わらない車体寸法で製造されるようになると、早々に陳腐化した存在となった。そこで、余剰となった本系列気動車の郵便車荷物車、あるいは、これらとの合造車への改造が多数実施されている。形式としては、次の11形式があげられる。

[編集] キハユ15形

キハユ15形は、1961年にキロハ18形を改造した二等郵便合造車である。種車のトイレ・洗面台部分を運転室に改造し、旧一等室部分を郵便室とした。郵便室部分の側面には幅1000mmの荷扱い用扉が設置され、側窓も1か所を残して埋め込まれた。前面は切妻のままで、非貫通構造となった。前面窓は独特の連続窓とされている。郵便室の荷重は5tである。

多度津工場で6両が改造されたが、運用上の問題から1963年から1964年にかけて5両がキユニ15形に再改造されている。残った1両(4)は、1978年に廃車され、形式消滅した。

キロハ18 1~3,6~8 → キハユ15 1~6

[編集] キハユニ17形

キハユニ17形は、1961年にキハ50形を改造した二等郵便荷物合造車である。改造の際に2基搭載していたエンジンのうち1基を取り外し、車体の前半分を運転台側から荷物室、郵便室として、従来の客用扉を埋め込みそれぞれに幅1000mmの片引戸を設けている。郵便室、荷物室の荷重は、各3tである。

名古屋工場で2両が改造され、越後線ほかの郵便荷物輸送改善を目的として新潟地区に配置された。2は1964年6月16日に発生した新潟地震の際に、落下した陸橋の下敷きとなり大破、廃車となった。残った1はのち厚狭に転じ、美祢線ほかで運用されたが、1980年に廃車され、形式消滅した。

キハ50 1,2 → キハユニ17 1,2

[編集] キハユニ18形

キハユニ18形は、1966年から1967年にかけてキハ16形を改造した二等郵便荷物合造車である。車体の前半分を運転台側から荷物室、郵便室として従来の客用扉を埋め込み、それぞれに幅1000mmの片引戸を設けている。郵便室の荷重は1t、荷物室の荷重は3tである。

新津、郡山、土崎、後藤、幡生の各工場で8両が改造され、各地に配置された。うち6両が1969年から1972年にかけてキユニ18形に改造されている。残った2両(3,6)は、それぞれ1975年、1979年に廃車されている。

キハ16 32,49,50,77,85,38,39,66 → キハユニ18 1~8

[編集] キハニ15形

キハニ15形は、1964年にキハ18形を改造した二等荷物合造車である。種車は中間車であるため、種車の切妻車体のまま貫通型の運転台を設置し、前位寄り半室を荷重5tの荷物室とした。荷物室には、幅1000mmの荷扱い用片引戸が設置されている。

高砂工場の改造で、当初は和歌山に配置されたが、すぐに新潟へ移り、1978年に廃車となった。

キハ18 21 → キハニ15 1

[編集] キユニ11形

キユニ11形は、キハ11形を改造した郵便荷物合造車で、1965年度に2両が小倉工場で、1967年度に1両が幡生工場で改造された。1965年度改造の1,2は0番台の、1967年度改造の3は100番台の改造車で、本系列の改造車では唯一の両運転台型である。

どちらのタイプも基本的な車体形状は変わらず、従来の客用扉はすべて埋め込まれ、車体の前位寄りを郵便室、後位寄りを荷物室とし、郵便室には幅1000mmの片引き戸を、荷物室には幅2000mmの両引戸を設けている。

1,2は当初は千葉に配属されたが後に岡山地区に移った後、1980年に廃車。3については、広島に配置され1981年に廃車されている。

キハ11 30,44,107 → キユニ11 1~3

[編集] キユニ15形

キユニ15形は、1962年度にキハユ15形を再改造した郵便荷物合造車で、多度津工場で5両が改造された。従来の二等室を荷物室としたもので、荷物室には幅2000mmの両引戸を設けているが、従来の客用扉も存置されている。改造以来、高松に配置されていたが、1978年から1981年にかけて廃車された。

キハユ15 2,1,3~5 → キユニ15 1~5

[編集] キユニ17形

キユニ17形は、キハ17形を改造した郵便荷物合造車で、1966年年~1970年にかけて11両が改造された。改造時期により、1,2(0番台)と、11~19(10番台)に大別される。

0番台は、1966年に多度津工場で改造されたもので、前位に荷重3tの郵便室、後位に荷重4tの荷物室を設けており、郵便室は幅1200mmの両引戸、荷物室には幅2000mmの両引戸を設けている。後位の客室扉は存置され、事務室が設けられている。落成後は、四国に配置されたが、後に1が北海道に転じて、耐寒設備を装備している。

10番台は、1967年から1970年に多度津工場及び幡生工場で改造されたもので、後位の事務室を縮小して荷物室の荷重を5tとしている。基本的構造は0番台と同じであるが、後位客用扉は埋め込まれ、幅700mmの開き戸となっている。また、1970年改造の19は、郵便室幕板に採光窓を設置している。

廃車は、1977年から始まり、1982年廃車の19をもって消滅した。

[編集] キユニ18形

キユニ18形は、キハユニ18形を再改造した郵便荷物合造車で、幡生工場で6両が改造された。改造時期により形態が異なり、1969年に改造された1,2と1971年から翌年にかけて改造された3~6の2グループに分かれる。

1,2は、車体の前位を荷重4tの郵便室に、後位を荷重5tの荷物室に改造しており、旧荷物室の扉は、郵便室用の幅1200mmの両引戸に改められ、荷物室用には幅1800mmの両引戸が設置されるとともに、後位にトイレと事務室を新設している。

3~6は、1,2とは設備の配置が逆になっており、前位が荷物室、後位が郵便室となった。事務室についても運転台直後に移されている。荷扱扉は荷物室が幅1800mmの両引戸、郵便室は幅1200mmの両引戸で、郵便室の幕板に採光窓が2つ設けられている。

改造後は、1,2が米子に、3が北海道の遠軽、4~6が岡山に配置されていたが、廃車まで移動することなく1979年~1981年に廃車された。

[編集] キニ15形

キニ15形は、1961年にキロハ18形を改造した荷物車で、多度津工場で2両が改造された。運転台の形状は、キハユ15形と同様であるが、本形式の運転台はキハユ15形とは反対側の旧三等室側に設けられている。そのため、後位側車端にはトイレと客用扉が残っている。荷物室用の扉としては、幅2000mmの両引戸が2か所に設けられ、荷重は11tである。

改造以来、高松に配置され、廃車まで異動することなく、1が1981年、2が1979年に廃車となっている。

キロハ18 4,5 → キニ15 1,2

[編集] キニ17形

キニ17形は、キハ17形を改造した荷物車で、多度津工場で1966年に4両、1967年に1両の計5両が改造された。後位側車端にはトイレと客用扉が残され、荷物室用の扉としては、幅2000mmの両引戸が2か所に設けられており、荷重は11tである。 改造以来、高松に配置され、廃車まで異動することなく、1982年に廃車となっている。

キハ17 61,58,86,87,55 → キニ17 1~5

[編集] キニ55形

キニ55形は、キハ51形を改造した荷物車で、多度津工場で1965年に4両が改造された。従来の客用扉はすべて埋め込まれ、幅2000mmの両引戸が2か所設けられた。車体が長い分、荷物用扉間の窓がキニ17形より1個多い3個となっており、荷重も1t多い12tである。

改造後は水戸機関区に配置され、常磐線の荷物列車として使用された。この用途としては、前年に1個エンジンのキニ16形が就役していたが、常磐線の高密度ダイヤ下で運用する場合、出力不足による加速力不足が問題となった。このため代替車として2個エンジンのキハ51形を種車にした本形式が充当されたものである。本形式は、10系気動車としては最も遅くまで使用され、廃車は1984年であった。

キハ51 2,4,10,13 → キニ55 1~4

[編集] 保存車両

[編集] 脚注

  1. DT19を改造して空気バネ台車を試作した際にも、このゴムブロックによる枕バネを残して軸バネを空気バネ化した結果、硬い乗り心地が全く改善されず、実用に適さないと判定された。後日、同様に軸バネを空気バネ化した汽車製造製KS-50(1955年試作。京阪電鉄1700系に装着)が柔らかいコイルバネによる枕バネとオイルダンパの組み合わせで成功し、更にこの枕バネをロックして試験走行したところ著しく乗り心地が低下したことから、枕バネが乗り心地を支配することが判明したが、その意味ではDT18・19系の設計は軸バネへの対策を含め、致命的な取り違えをしていたことになる。


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