加藤典洋
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加藤 典洋(かとう のりひろ、1948年4月1日 - )は、山形県山形市出身の文芸評論家。山形県立山形東高等学校、東京大学文学部仏文学科を卒業。1985年に『アメリカの影』でデビューする。現代文学、思想史、政治、歴史認識と幅広く発言する。
1995年に『群像』誌上で「敗戦後論」を発表。日本の戦後をどう認識するかを問いかけた。アジア地域等の被害者に謝罪する主体、すなわち「日本人」という主体が欠如しつづけているという議論を展開した。そのうえで、具体的方策の一つとして、日本人に対する日本人自らによる弔いの必要を唱えた。これらは右派、左派双方から批判され、または賞賛され、言論界に論争を巻き起こした。1997年には論考をとりまとめ加筆訂正のうえ『敗戦後論』を刊行した。
ポストモダン系の思想家(柄谷行人や浅田彰等)に対しては、西洋思想の輸入者であり独自性がないとして、かなり批判的である。『日本の無思想』は丸山真男の『日本の思想』、『テクストから遠く離れて』は蓮実重彦の『小説から遠く離れて』のパロディである。
文体には固有の癖や著者独特の省略的記述、比喩表現等が頻繁にあるため、慣れるまでは難しくはないが舌足らず的な読みづらさがある。
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[編集] 人物像
ウェーブをかけた独特のふわふわの髪形がしゃれている。 漫画『寄生獣』を大学のテキストに使用した。しかし漫画論は書いていない。 興奮して、ひとしきり喋った後、「ウフフフッ」、と、可愛く笑う姿が、とても印象的で、ある。 小説家の高橋源一郎や文芸評論家の神山睦美と親交が深い。
[編集] 職歴
- 国立国会図書館職員(1978年から1982年はモントリオール大学東アジア研究所に派遣)
- 1986年-: 明治学院大学国際学部助教授
- 199X年-: 同 教授
- 2005年4月-: 早稲田大学国際教養学部教授
- 現在、群像新人文学賞と小林秀雄賞の選考委員をそれぞれ務めている。
[編集] 受賞歴
[編集] 著作
[編集] 単著
- 『アメリカの影』 (河出書房新社, 1985年/講談社[講談社学術文庫], 1995年)
- 『批評へ』 (弓立社, 1987年)
- 『君と世界の戦いでは、世界に支援せよ』 (筑摩書房, 1988年)
- 『日本風景論』 (講談社, 1990年/講談社文芸文庫, 2000年)
- 『ゆるやかな速度』 (中央公論社, 1990年)
- 『ホーロー質』 (河出書房新社, 1991年)
- 『日本という身体 ―― 「大・新・高」の精神史』 (講談社, 1994年)
- 『なんだなんだそうだったのか、早く言えよ。―― ヴィジュアル論覚え書』 (五柳書院, 1994年)
- 『この時代の生き方』 (講談社, 1995年)
- 『加藤典洋の発言(1)空無化するラディカリズム』 (海鳥社, 1996年)
- 『言語表現法講義』 (岩波書店, 1996年)
- 『加藤典洋の発言(2)戦後を超える思考』 (海鳥社, 1996年)
- 『敗戦後論』 (講談社, 1997年/筑摩書房[ちくま文庫], 2005年)
- 『みじかい文章 ―― 批評家としての軌跡』 (五柳書院, 1997年)
- 『少し長い文章 ―― 現代日本の作家と作品論』 (五柳書院, 1997年)
- 『戦後を戦後以後, 考える ―― ノン・モラルからの出発とは何か』 (岩波書店[岩波ブックレット], 1998年)
- 『加藤典洋の発言(3)理解することへの抵抗』 (海鳥社, 1998年)
- 『可能性としての戦後以後』 (岩波書店, 1999年)
- 『日本の無思想』 (平凡社[平凡社新書], 1999年)
- 『戦後的思考』 (講談社, 1999年)
- 『日本人の自画像』 (岩波書店, 2000年)
- 『「天皇崩御」の図像学 ―― 『ホーロー質』より』 (平凡社[平凡社ライブラリー], 2001年)
- 『ポッカリあいた心の穴を少しずつ埋めてゆくんだ』 (平原社, 2002年)
- 『テクストから遠く離れて』 (講談社, 2004年)
- 『小説の未来』 (朝日新聞社, 2004年)
- 『語りの背景』 (晶文社, 2004年)
- 『僕が批評家になったわけ』 (岩波書店, 2005年)
- 『村上春樹論集 <1>』 (若草書房、2006年)
- 『村上春樹論集 <2>』 (若草書房、2006年)
[編集] 共著
- (竹田青嗣) 『世紀末のランニングパス 1991-92』 (講談社, 1992年)
- (竹田青嗣) 『二つの戦後から』 (筑摩書房[ちくま文庫], 1998年)
- (橋爪大三郎・竹田青嗣) 『天皇の戦争責任』 (径書房, 2000年)
- (多田道太郎・鷲田清一) 『立ち話風哲学問答』 (朝日新聞社, 2000年)
- (鶴見俊輔・黒川創) 『日米交換船』 (新潮社、2006年)
[編集] 編著
- 『イエローページ村上春樹 ―― 作品別 (1979-1996)』 (荒地出版社, 1996年)
- 『昭和 ―― 日本の名随筆』 (作品社, 1999年)
- 『イエローページ村上春樹 Part 2 ―― 作品別 (1995-2004)』 (荒地出版社, 2004年)
[編集] 訳書
- テッド・エスコット『モネ・イズ・マネー』 (朝日新聞社, 1988年)
など