前照灯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
前照灯(ぜんしょうとう)は、輸送機器など移動する機械において進行方向前方を照らしたり、対向する相手に自身の存在を示すために使われる照明装置。ヘッドライトもしくはヘッドランプとも言う。大抵は機械の前面に無色(色が付いていても青や黄などで、薄い色)のライトが付けられている。機械ではなく人が付ける場合もある。
用途としては自動車、鉄道車両、自転車など地上の車両の他、航空機、船舶にも付いている場合がある。
人の場合は両手が使えるようヘルメットなど頭部に付ける場合が多く、鉱山や洞窟、登山などで用いられる。手持ちの場合は懐中電灯というが目的としてはほぼ同じである。
人用、自転車用のものでは白熱電球に代わり低消費電力で寿命の長い白色発光ダイオード(LED)を使用したものが普及しつつある。
車両の場合、前方に300cd以上の輝度を持つ赤色灯火を、後方に白色灯火を使用する事は各種法令で禁止されている。
目次 |
[編集] 自動車
自動車・オートバイ(自動二輪車、原動機付自転車)用の場合、前面の左右にそれぞれ1個ないしは2個が運転者の視線より低い位置に取り付けられる。 通常、ハイビーム(上向き・遠目)とロービーム(下向き)を切り替えることができる。ハイビームは正面を遠く(最低前方100m)まで照らすため、夜間の対向車や前方の車が存在しない場合に用い、ロービームはやや下方(前方40m)を照らすため、対向車や前方の車への眩惑防止や、霧などで光が拡散する場合に使用する。車検の際の前照灯の照度や光軸などの検査は、ハイビーム状態で行われる。
霧用には別途のフォグランプが付いている場合もあるが、フォグランプ点灯のみでは無灯火となる。
1980年代以降、自動車用にはハロゲンランプが多く使われているが、2000年頃からHIDを用いたものが増えている。
主に前照灯は夜間に点灯されていたが、現在は事業用自動車を中心に事故防止の為に昼間点灯の自動車が増えてきている。また、夕暮れ時に人身事故が多発する事から早目の点灯を呼びかける運動(トワイライト運動)も盛んに行われている。また原動機付自転車および自動二輪車においては道路運送車両法により前照灯が消灯できない構造である事が定められ、現在生産されている(1980年以降製造の)車両は全て消灯できない構造となっている。消灯出来るように改造されたものは違反となる。
[編集] 鉄道車両
取り付け位置は車体の上部(運転者の視線より高い)にある場合と、下部(運転者の視線より低い)にある場合があり、各車種によってさまざまで、同じ鉄道事業者でも統一はされていない。1960年代までの古い車両では上部に1ないし2個が取り付けられていたことが多かったが、1970年代以降はフロントガラスの下に2個のライトを配することが多い。しかし、規格などはなく、車種によっては上部にライトを配するものも多い。自動車同様ハイビームとロービームを切り替えることができる。
1960年代以前に製造された車両の多くはランプ交換式の暗い前照灯であったが、1970年代以降は後にシールドビーム(反射鏡とランプが一体化されたライト)化が進み光量のアップと長寿命化が図られた。1990年代からはプロジェクター式が、2000年頃からやHID式を用いたものなどが出現するなどバリエーションが増えている。
[編集] 航空機
航空機に「前照灯」と呼ぶものはないが、前方を照射する灯火類としては以下の2種類があげられる;
[編集] 着陸灯
大型機では両翼の前縁部に埋め込み式あるいはリトラクタブル式で取り付けられている場合が多い。 "Landing Light" からこの名称があるが、着陸時だけでなく夜間離陸時等でも日常的に点灯する。通常灯火類のなかで最も明るく、前方からの視認性に優れるので、無線故障時や無線を持っていない相手に対して、点灯 / 点滅等を行って簡単な合図に使用されることもある。
[編集] タクシー灯
地上走行に際して前方を照らすために用いられる。前脚部分に取り付けられていることが多く、脚を引っ込めた時には使用できない。
[編集] 自転車
電源として、リムやハブのダイナモや電池が使用される。 白熱電球に代わり低消費電力で寿命の長い白色発光ダイオード (LED) を使用したものが普及しつつあるが、 点滅させたものや暗いものまた赤いものは無灯火となり処罰されるおそれがある。(実際には別件逮捕の口実に使う時以外は注意、警告ですむことが多いが何度注意しても聞かない悪質な場合は摘発されることがある)。 昼間走行時でも前照灯装着が定められている(トンネルや天候の変化もあるため)。 リムダイナモは1.2-3W程、ハブダイナモは2.4W程の出力がある。 電池式では、乾電池の場合4本以上使用しないと前照灯規定の明るさが無く違反となると思われる。
[編集] 関連項目
- 尾灯(テールランプ)
- リトラクタブル・ヘッドライト
- 車幅灯
- フォグランプ
- 方向指示器