別件逮捕
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別件逮捕(べっけんたいほ)とは、逮捕の要件を欠く事件(本件)について有効な取り調べを進めるために身柄を確保する目的で、逮捕の要件を満たす他の事件(別件。通常、本件より軽微な事件)について被疑者を逮捕すること。同様の目的、手法で勾留する場合は別件勾留と呼ぶ。また、捜索・差押えがなされる場合は別件捜索(別件差押え)呼ばれる。
目次 |
[編集] 背景と問題の所在
刑事訴訟法の規制を逃れて取り調べ期限を延長するために、本件と関係が薄い微罪事件を立件して別件逮捕を繰り返していると疑われる例は今日でもたびたび見られるとされ、このため見込み捜査や冤罪が発生しやすいやり方として非難する意見もある。
[編集] 理論的問題
[編集] 概要
別件による逮捕・勾留そのものの可否(本件基準説対別件基準説)、および余罪取調べの限界(限定説対非限定説)の2つの論点に関し、逮捕前置主義・事件単位の原則の理解や、取調べや勾留質問の法的性質にもからんで、さまざまな見解が対立しており、一致を見ない。以下では簡略化したものを述べる。
[編集] 本件基準説
本件についての逮捕・勾留の可否を問題にし、逮捕勾留を要件を欠いた違法なものとし、それを利用した取調べによって得られた証拠は違法と評価する。(ただし逮捕・勾留の法上の目的には取調べは含まれないと解されているため、違法と評価するためにはそれなりの理論構成が必要である)。
[編集] 別件基準説
あくまで別件についての逮捕・勾留の可否を問題にする見解。別件については逮捕・勾留の要件は具備しているため、逮捕・勾留は適法なものとなる。ただし、法定の逮捕期間を潜脱して本件を取り調べる目的が捜査機関にあったなどの理由で、取調べ自体が違法と評価されれば、その取調べによって得られた証拠はやはり違法と評価される(なお、取調べの性質自体の問題については取調受忍義務などを参照)。
[編集] 判例・裁判例
[編集] 効果
逮捕・勾留が、違法な別件逮捕・別件勾留とされた場合には、違法な逮捕・勾留時に基づき得られた証拠が違法であるとされ、証拠能力を否定される(違法収集証拠排除法則)。ただし、本件基準説においても、逮捕・勾留の裁判そのものを取り消すことまでは主張しない。
[編集] 問題となった事例
元受刑者らが冤罪と主張し続けている狭山事件は、別件逮捕の典型例といわれる。
また、1995年に村山富市首相が、地下鉄サリン事件の捜査について「別件逮捕等あらゆる手段を用いて・・・」と発言し、問題化した。