使徒信条
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使徒信条(しとしんじょう)は、キリスト教西方教会、すなわちローマ・カトリックとプロテスタントのほとんどが重んじる基本信条のひとつ。別称、使徒信経。
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[編集] 成立経緯
ローマ教会が2世紀半ばごろから信徒教育や洗礼時の制約に際して用いたローマ信条がその原型だといわれる。一方、4世紀始めに定式化したとする学者もある。
「使徒信条」の名は4世紀ごろより用いられはじめた事が確認されている。
[編集] 名称由来
使徒信条の名は、この信条が使徒にまで遡れるという伝説から生まれた。全12節よりなるため、十二使徒が一人一節を著したという伝承も生まれたが、いずれも今日確証出来るものではない。東方正教会では、使徒信条が公会議による決定を経ていないため、これを公認せず、聖伝に数えない。ただし、ローマという一地方教会独自の伝承として受け止め、全教会に適応されるものではないとする立場をとっており、内容を異端として公式に退けているわけではない。
[編集] 内容
信条は異端との対決の中で生まれてくる。使徒信条は、イエスが肉体をもって生まれたこと、死んだことを強調する。身体を伴ったイエスの出生、ならびにイエスと信者の復活に関心があり、グノーシス主義の影響にある仮現説など初期の異端に対抗している。
一方で三位一体はまだ定式化されていない。三位一体を構成する父・子・聖霊を信仰の対象として言及しながら、子と聖霊の神性については言及していない。このため三位一体を採用しないアリウス派の台頭以前に成立したと一部の学者によって考えられる。特にアリウス派やユニテリアンの信者のなかには、この信条を受け入れるものが多い(ただしユニテリアン自体は信条をもたない教派である)。一方、三位一体を採用する教団では、この信条もまた三位一体の信仰を強調していると主張する。
[編集] 信条本文
[編集] ラテン語
Source: "Symbolum Apostolicum". Catechismum Catholicae Ecclesiae. URL accessed on June 21, 2005.
Credo in Deum, Patrem omnipotentem, Creatorem caeli et terrae,
et in Iesum Christum, Filium Eius unicum, Dominum nostrum, qui conceptus est de Spiritu Sancto, natus ex Maria Virgine, passus sub Pontio Pilato, crucifixus, mortuus, et sepultus, descendit ad inferos, tertia die resurrexit a mortuis, ascendit ad caelos, sedet ad dexteram Patris omnipotentis, inde venturus est iudicare vivos et mortuos.
Credo in Spiritum Sanctum, sanctam Ecclesiam catholicam, sanctorum communionem, remissionem peccatorum, carnis resurrectionem, vitam aeternam.
Amen
[編集] 日本語
我(われ)は天地(てんち)の造成者(つくりぬし)、全能(ぜんのう)の父(ちゝ)なる神(かみ)を信(しん)ず。
我(われ)はその獨子(ひとりご)、我等(われら)の主(しゆ)耶蘇(イエス)基督(キリスト)を信(しん)ず。即(すなは)ち聖靈(せいれい)によりて胎(みごも)られ、處女(をとめ)マリヤより生(うま)れ、ポンテオ、ピラトのもとに苦(くるしみ)を受(う)け、十字架(じふじか)につけられ、死(し)して葬(はうむ)られ、(陰府(よみ)に下(くだ)り)第三日(だいさんじつ)に死者(ししや)のうちより復活(よみかへ)り、天(てん)に昇(のぼ)りて、全能(ぜんのう)の父(ちゝ)なる神(かみ)の右(みぎ)に座(ざ)し給(たま)へり、彼所(かしこ)より來(き)たりて生(い)ける者(もの)と死(し)ねる者(もの)とを審判(さばき)たまはん。
我(われ)は聖靈(せいれい)を信(しん)す、聖(せい)なる公同教會(こうどうけうくわい)すなはち聖徒(せいと)の交通(こうつう)、罪(つみ)の赦(ゆるし)、身躰(しんたい)の復活(ふくくわつ)、永遠(かぎりなき)の生命(いのち)を信(しん)ず。アーメン
〔一八九〇年(明治二十三年)制定〕(旧)日本基督教會 信仰(しんかう)の告白(こくはく)より
[編集] 日本語(口語)
天地の創造主、 全能の父である神を信じます。 父のひとり子、わたしたちの主 イエス・キリストを信じます。 主は聖霊によってやどり、 おとめマリアから生まれ、 ポンティオ・ピラトのもとで苦しみを受け、 十字架につけられて死に、葬られ、 陰府(よみ)に下り、 三日目に死者のうちから復活し、 天に昇って、 全能の父である神の右の座に着き、 生者(せいしゃ)と死者を裁くために来られます。 聖霊を信じ、 聖なる普遍の教会、 聖徒の交わり、 罪のゆるし、 からだの復活、 永遠のいのちを信じます。アーメン。
2004年2月18日/日本カトリック司教協議会認可