中沢新一
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中沢 新一(なかざわ しんいち、1950年5月28日 - )は、山梨県山梨市出身の宗教学者、哲学者、評論家、文化人類学者。父は民俗学者の中沢厚。祖父は生物学者中沢毅一。父の弟は歴史学者の中沢護人。父の妹の夫は歴史学者の網野善彦。
1983年に公刊した『チベットのモーツァルト』が、同年浅田彰が出した『構造と力-記号論を超えて-』と並んで注目され、ニュー・アカデミズムブームが産まれた。
チベットでの瞑想体験、現代思想研究を駆使して著作活動を開始。初の本格的なビデオゲーム論「ゲームフリークはバグと戯れる」(『雪片曲線論』所収)、その後の成果『ポケットの中の野生/ポケモンと子ども』などがある
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[編集] 来歴
- 1969年(昭和44)山梨県立甲府第一高等学校卒業。
- 1970年(昭和45)東京大学教養学部理科二類入学。
- 1972年(昭和47)東京大学文学部宗教学宗教史学科進学。
- 1974年(昭和49)同大学院人文科学研究科宗教学専攻修士課程進学。
- 1977年(昭和52)同大学院博士課程進学。
- 1979年(昭和54)ネパールにおいて、日本人としては初めてチベット仏教ニンマ派を修行。
- 1982年(昭和57)同大学院博士課程満期中退。
- 1983年(昭和58)東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所助手。
- 1993年(平成5)中央大学総合政策学部教授、ゾクチェン研究所所長(#外部リンク参照)。
- 2006年(平成18)多摩美術大学美術学部芸術学科教授・芸術人類学研究所所長。
[編集] 受賞歴
- 1984年(昭和59) 「チベットのモーツァルト」でサントリー学芸賞思想・歴史部門。選考委員の一人山本七平は、「非常に難解だが、稀有な高著」と激賞。
- 1991年(平成3)第20回ベストドレッサー賞学術・文化部門。
- 1992年(平成4)「森のバロック」で第44回読売文学賞評論・伝記賞。
- 1996年(平成8)「哲学の東北」で第4回斎藤緑雨賞。
- 2001年(平成13)「フィロソフィア・ヤポニカ」で第12回伊藤整文学賞評論部門。
- 2004年(平成16)「対称性人類学――カイエ・ソバージュV」で第3回小林秀雄賞。
- 2006年(平成18)「アースダイバー」で第9回桑原武夫学芸賞。
[編集] 関連メモとエピソード
- 中沢が修めたチベット仏教(開祖バドマサンバヴァ)のニンマ(古)派は、チベットでは最古の伝統を受け継ぎ、ゲルク派のダライ・ラマ14世も認め、修行する由緒ある四大宗派の一つと認識されている。また、通俗的に普及した簡易本『チベット死者の書』は、山口瑞鳳のいうような偽書というよりも(山口1994)、埋蔵書という形式を取った宗教的創作の一つである。
- 山口瑞鳳 1994 「中沢新一氏とNHKが持ち上げる「チベット死者の書」はエセ仏典」『諸君』26(6)、154~161頁。
- 1988年(昭和63)、当時東京大学教養学部教授の職にあった西部邁により、同学部社会科学科助教授に推薦されるも教授会で異例の否決となる。西部は教授会に抗議して辞任。いわゆる中沢事件、東大駒場騒動などと報道され、話題となる。騒動の詳細な経緯は、西部の著作を通して後日明らかにされた(西部1988,1989)。
- 西部邁 1988 『剥がされた仮面-東大駒場騒動-』文藝春秋
- 西部邁 1989 『学者-この喜劇的なるもの-』草思社
- オウム真理教の信者が、中沢の翻訳したニンマ派の入門書「虹の階梯」を愛読していた事や、中沢が、宗教学者の立場からオウム真理教をとりあげ、坂本弁護士事件発生直後に、雑誌『SPA!』の企画で麻原彰晃対談し、その時点で麻原を賞賛していた事。また1995年の地下鉄サリン事件勃発時にもオウムを擁護したとして、一部マスコミや学者から批判された。親交の深かった浅田彰は、サリン事件後に『諸君!』誌上で中沢を擁護する対談を行ったが、その後の中沢の対応については批判している。
- 野中英次の漫画「魁!!クロマティ高校」の登場人物・メカ沢新一は、中沢のパロディー。
[編集] 著書
[編集] 単著
- 1983『チベットのモーツァルト』せりか書房
- 1985『雪片曲線論』青土社
- 1986『野ウサギの走り』思潮社
- 1987『虹の理論』新潮社
- 1988『悪党的思考』平凡社
- 1992『森のバロック』せりか書房
- 1992『幸福の無数の断片』河出書房新社
- 1993『三万年の死の教え―チベット『死者の書』の世界』角川書店
- 1995『哲学の東北』青土社
- 1995『知天使のぶどう酒』河出書房新社
- 1995『ゲーテの耳』河出書房新社
- 1996『純粋な自然の贈与』せりか書房
- 2002『緑の資本論』集英社
- 2003『精霊の王』講談社
- 2001『フィロソフィア・ヤポニカ』集英社
- 2004『僕の叔父さん 網野善彦』集英社(新書)
- 2005『アースダイバー』講談社
- 2006『芸術人類学』みすず書房
[編集] 共著
- (梅原猛)1988『古代への幻視――人類思想の再生をめざして』アルファ・アート出版
- (吉本隆明、梅原猛)1995『日本人は思想したか』新潮社
- (河合隼雄)1998『ブッダの夢――河合隼雄と中沢新一の対話』朝日新聞社
- (山本容子)1998『音楽のつつましい願い』筑摩書房
- (山田詠美)1991『ファンダメンタルなふたり』文藝春秋
- (河合隼雄、小林康夫、田坂広志)2000『こころの生態系』講談社・講談社+α新書
- (河合隼雄)2003『仏教が好き!』朝日新聞社
- (太田光)2006『憲法九条を世界遺産に』集英社(新書)
[編集] 外部リンク
- ゾクチェン研究所
- チベット仏教ニンマ派が伝える「ゾクチェン思想」の研究を目的に設立された日本初の研究所。
- 関連・研究サイト