中性子星
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中性子星(ちゅうせいしせい)とは、質量の大きな恒星が進化した最晩年の天体の一種である。中性子星は質量が太陽程度、半径10km程度、大気の厚さは1m程度で、中性子が主な成分のいわば星全体が一つの原子核と見なせる天体である。密度は太陽の密度の1014倍以上もあるとされている。具体的な数値で表すと1cm3当たりで10億t。富士山一つという表現もされることがある。その桁外れに大きい密度のため、中性子星表面での重力は地球の重力の2 × 1011倍もの大きさがあり、脱出速度は光速の1/3に達する。中性子星は大質量の恒星の超新星爆発によってその中心核から作られるが、中性子星として存在できる質量には上限があり、太陽質量の約30倍以上ではブラックホールとなる。
中性子星は、中性子から成る大きな原子核のような物である。原子核では、陽子と中性子がだいぶ自由に動ける状態のため、液体といってもそれほど間違いはないような状態である。したがって中性子星では、その兆大な密度のため液体状態を超えた超流動状態になっていると考えられている。
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[編集] 中性子星の形成
中性子星は恒星の超新星爆発によって形成される。恒星が進化の後に中性子星を残すかどうかは恒星の質量によって決まる。(詳しくは恒星進化論を参照のこと。)
太陽質量の約0.46倍までの恒星は赤色矮星とも呼ばれ、温度が低いためヘリウムには点火せず、水素を使い尽くした後はそのままヘリウム型の白色矮星になる。
太陽質量の約0.46倍から約8倍までの恒星では、中心で水素を使い果たした後でヘリウムに点火し炭素・酸素・窒素が作られるが、それ以上の反応は進まず、赤色巨星の段階を経て白色矮星となる。
太陽質量の8~10倍の質量を持つ恒星では炭素・酸素からなる中心核でさらに核融合反応が起こり、酸素やネオン・マグネシウムからなる核が作られる。この段階で核は縮退するため、電子の縮退圧で重力を支えるようになり、この核の周囲の球殻状の部分で炭素燃焼が進むという構造になる。核を取り巻く部分で起こる核反応の「灰」によって次第に核の質量が増えていくが、やがて中心核を構成する原子内で、陽子が電子を捕獲して中性子に変わった方がエネルギー的に安定になるようになる。これによって中心核は中性子が過剰な原子核で埋め尽くされるようになり、一方で電子捕獲によって電子の縮退圧が弱まるため、重力を支えられなくなって星全体が急激な収縮を始める。中心核の収縮は、密度が十分大きくなって中性子の縮退圧で重力を支えるようになると停止する。これより上の層は核によって激しく跳ね返されて衝撃波が発生し、一気に吹き飛ばされる。この段階を超新星爆発と呼ぶ。爆発の後には中性子からなる高密度の核が残り、これが中性子星となる。
太陽質量の10倍以上の大質量星ではもともと密度が大きくないために、核融合の灰で作られる中心核が途中で縮退することなく、次々に重い元素に点火してはさらに重い元素が作られ、最終的に鉄の中心核が作られる段階まで核反応が進む。鉄原子は原子核の結合エネルギーが最も大きいためにこれ以上の核融合は起こらず、中心の熱源がなくなるために鉄の中心核は重力収縮しながら温度を上げていく。温度が約100億度に達すると鉄が光子を吸収してヘリウムに分解する鉄の光分解という吸熱反応が起きて急激に圧力を失う。これによってやはり重力を支えられなくなり、星全体が重力崩壊で潰れて超新星爆発を起こす。爆発の後にはやはり爆縮された芯が残る。残った芯の質量が太陽の2-3倍程度なら中性子星として残るが、それ以上ならば重力崩壊が止まることなくブラックホールになる。超新星爆発の前段階でどういった条件ならばどのくらいの芯の質量が残り、その結果中性子星になるか、あるいはブラックホールになるかといった精密な条件は現在ではあまりはっきりしないが、太陽質量の30倍以上の恒星はほぼブラックホールになると考えられている。
また、白色矮星同士からなる連星が衝突合体することによってチャンドラセカール限界を上回り、最終的に中性子星が作られるという過程についても議論されている。
[編集] 中性子星の構造・性質
中性子星の表面は通常の原子核や電子からなる。この中性子星の「大気」は厚さが約1mほどで、その下には固体の「地殻」がある。さらに内部には中性子過剰核と呼ばれる非常に中性子の多い原子核でできた層がある。このような原子核は地球上では非常に短時間で崩壊してしまうが、中性子星内部では非常に圧力が高いために安定して存在できる。さらに内部へ進むと、原子核から中性子が外へ漏れ出す「中性子ドリップ」と呼ばれる現象が見られるようになる。この領域には原子核と自由電子と自由中性子が存在する。 さらに内部に進むにつれて原子核 が融けて一様な物質(中性子と少量の陽子、電子からなる)の超流動相となる。 中心部のコアと呼ばれる高密度の領域 の構造はよく分かっていないが、 核子と電子だけでなくπ中間子・K中間子といった中間子の凝縮や、核子以外のバリオンであるハイペロンが現れ、 最も中心部の超高密度領域では クォークからなる超流動体で構成されているという説もある。
中性子星の質量は約1.4太陽質量(チャンドラセカール限界)以上、約3太陽質量までの範囲である。これより重い場合には重力が中性子の縮退圧に打ち勝って極限まで収縮し、ブラックホールになる。中性子星を構成する物質は密度が非常に高いという特徴があり、角砂糖1個分で数億トンもの質量を持つ。また、重力崩壊によって非常にコンパクトに圧縮された結果として、角運動量保存の法則によって元の恒星よりも遥かに高速に回転している。典型的な自転周期は30秒から1/100秒である。
中性子星は二極(地球でいう北極と南極)から強い磁気を放っており、通常自転面から傾いた状態で高速で自転しながらその磁気が絶えず放たれているため、パルサーとなっていることが多い(中性子星自身は通常可視光線は発しないため、パルサーとして実在が確認された)。
さらに最近では、中性子星より密度の高い、クォークで出来たクォーク星が提案され、その候補となる星(みなみのかんむり座の星)も見つかっている。
[編集] 中性子星の発見
1933年、フリッツ・ツビッキーとウォルター・バーデが中性子星のモデルを初めて提唱した。1967年アントニー・ヒューイッシュとジョスリン・ベルが、パルサーとして中性子星を発見した。
ハードSFの中では、しばしば中性子星上の生命体が題材にされる。
[編集] 関連記事
[編集] 中性子星を扱ったSF作品
- 『中性子星』(ラリー・ニーヴン)
- 『中性子星』(アーサー・C・クラーク)
- 『竜の卵』(ロバート・L・フォワード)
- 『スタークェイク』(ロバート・L・フォワード)
- 『フラックス』(スティーヴン・バクスター)