ヴァイオリン協奏曲 (シベリウス)
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シベリウスのヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47は、1903年に作曲され、1905年に改訂された。
シベリウスは若い頃、ヴァイオリニストを目指しており、彼の唯一の協奏曲となった本作品もヴァイオリンを独奏楽器とする作品である。シベリウスの作風は交響的でありながら室内楽的な緊密な書法を基盤としており、名人的な技巧を披露することを目的とする協奏曲とは必ずしも相容れない。本作は、シベリウスの創作の比較的初期、交響曲第2番と第3番との間に作曲されており、上記のような室内楽的書法が確立する前の作品ではあるが、従来の協奏曲の殻を破ろうとする意志が強く表れた作品となっている。
1905年にブラームスのヴァイオリン協奏曲を初めて聴いたシベリウスは、自らの協奏曲よりもさらに徹底して交響曲的なこの作品に衝撃を受け、本作を現在我々が耳にする形に改訂したのだった。それは独奏楽器の名技性を抑えて構成を緊密にし、交響的な響きを追求したオーケストレーションへと変更したものである。改訂稿の完成後シベリウスは初稿の演奏を禁止したが、1991年に遺族の許可の下、レオニダス・カヴァコスの独奏、オスモ・ヴァンスカ指揮のラハティ交響楽団により録音が行われた。
目次 |
[編集] 初演
- 初稿:1904年2月8日、ヴィクトル・ノヴァチェクの独奏、ジャン・シベリウスの指揮によりヘルシンキにて。
- 改訂稿:1905年10月19日、カレル・ハリールの独奏、リヒャルト・シュトラウスの指揮によりベルリンにて。
[編集] 楽器編成
独奏ヴァイオリン、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、弦楽五部
[編集] 作品の内容
- 第1楽章 アレグロ・モデラート
- ソナタ形式を土台にしているが、それを独創的に発展した形式となっており、しばしば「幻想曲風」と評されるが、この評は必ずしも正しくない。
- 弱音器付きの弦楽器が和声を刻む上を、独奏ヴァイオリンが第1主題を提示して曲は始まる。独奏楽器がカデンツァ風にパッセージを奏でた後4分の6拍子に転じチェロとファゴットが第2主題部を開始する。主題が確立した後、曲はテンポを落とし、独奏楽器がゆったりとこの主題を歌う。独奏楽器が長いトリルを奏でた後、曲は2分の2拍子に戻って第3主題部となる。ここでは独奏楽器は表れず、オーケストラは力強い主題を奏でて高揚してゆく。オーケストラの興奮が収まり静かになったところで独奏楽器が引き取り、これまでの3つの主題を素材にしたカデンツァを奏でる。カデンツァが、ソナタ形式の展開部にあたる楽章の中央に位置するのが、この作品の特徴であり、このカデンツァはそれに値するだけの精緻な主題操作で構成されている。ソナタ形式の原理に当てはめるならば、カデンツァの後が再現部となるが、通常のソナタ形式の再現部とは異なり、各主題は大きく変化した形で再現され、ここでも入念に展開がなされており、再現しながら展開するという独創的な形になっている。
- 第2楽章 アダージョ・ディ・モルト
- 楽章のはじめに木管楽器が導入句を演奏する。これに続いて独奏楽器が主部主題を厳かに奏でる。すると弦楽器が突然冒頭部の動機を強音で演奏し、劇的な中間部に入る。しかしヴィオラ、オーボエ、クラリネットが主部主題を提示し、楽章は静かに閉じられる。
- 第3楽章 アレグロ・マ・ノン・トロッポ
- 独奏楽器が技巧性を発揮する華やかで常動的なロンド主題で開始される。副楽節は短調に転じ舞曲風のリズミックな主題である。次いでロンド部、副楽節部と展開しながら反復し、華麗に盛り上がってゆく。最後はロンド部の断片を結尾に華やかに終止する。
[編集] 参考図書
作曲家別名曲解説ライブラリー18「北欧の巨匠」(1994年 音楽之友社)ISBN 4276010586