ハードコアマッチ
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ハードコア・マッチ(Hardcore match)は、プロレスで行われるさまざまな試合形式のうちの一つである。
凶器使用などの反則裁定が一切なく、またリングに限らず、どこでも決着がつけられるのがルール。言い返れば「ルールは無に等しい」と言える。そのため、どんな場面が飛び出すか全く予測不可能で、他の試合以上のスリリングさがウリとなっている。この試合形式を有名にさせたのはアメリカのインディー団体ECWで、全試合反則裁定ナシという手法を取っていたこともあり、ハードコアマッチのパイオニアとも言われている。現在、主に日本のインディー団体を中心に盛んに行われている。
デスマッチと非常に似た形式だが、流血や凄惨さよりも、選手の独創的な動きを目玉にしようとする志向が強いのが相違点。
この形式を得意とする選手には、次第にダメージが蓄積された結果、のちに長期の休養を余儀なくされる者も多い。
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[編集] WWE
WWEにおいてはハードコア王座の創設とともにハードコアマッチが盛んになった。ハードコア王座消滅後はハードコアマッチが行われる機会は少なくなった。ハードコアマッチ以外にも、WWEではストレッチャー・マッチ、救急車マッチ、アイ・クイットマッチ、ラダー・マッチ、TLC戦、テーブルマッチ、ヘル・イン・ア・セルなどのハードコア系の試合形式が数多く存在する。WWEのハードコアマッチではリングの下に置いてあった凶器(主に金属製のゴミ箱、竹刀、標識、消火器など)で相手を殴ったり、舞台裏にまで戦いが及んだりする。ヒールのレスラーが大量の凶器をスーパーマーケットにあるショッピングカートやゴミ箱に詰め込んで登場してくる事も。(主にレイヴェンがやっていた。また、ジーン・スニツキーはベビーカーに凶器を詰め込んで現れた事も。)
2004年4月のバックラッシュでランディ・オートンVSミック・フォーリーのIC王座戦がこの形式で行われた。オートンは凶器入りのゴミ箱を持って登場し、ミック・フォーリーはサディストキャラのカクタス・ジャックとして、バービー(有刺鉄線が巻きついたバット)を持って登場。オートンはバービーで殴られて流血、ガビョウにたたきつけられる、ステージから落とされるなどの散々な目に遭いながらも、最後はバービーめがけてのRKOでミックを退け防衛した。
2004年のイギリス公演では、JBL対ハードコア・ホーリー戦がこの形式で行われ、凶器として、クリケットのバット・警察官の帽子・イギリスの道路標識が使われ、開催地のお国柄がよく現れた格好となる。
2001年に行われたロイヤルランブルでは、レイヴェンが竹刀を持ち込んで現れ、1人きりでリングにいたケインを襲い、その後もハードコア系のレスラーが参戦者として続いた事もあり、一時リングには凶器が散乱し、実況のジム・ロスが「ハードコア・ランブル」と発言した程。しかしケインが反撃してリング上の対戦相手を全員排除し、再び1人きりになるとともに、なぜかリング外にいたレフリー達が凶器を撤去した。また、2003年に行われたロイヤル・ランブルでは、トミー・ドリーマーが凶器入りのゴミ箱を持って現れた。
[編集] レスラーにまつわるエピソード
ハードコアマッチにまつわりエピソードを、主要なレスラーのみ挙げる。
- 試合中の出来事ではないが、ケインはマスクを取って間もない頃にジム・ロスからインタビューを受け、インタビューの最中に感情的になってジム・ロスを襲撃し、彼の体にガソリンを浴びせて火をつけてしまった事もあった。
- ミック・フォーリーはサディストキャラカクタス・ジャックを演じていたとき、有刺鉄線付きの角材(またはバット)で相手を殴ったり、画鋲をばら撒いたりしていた。(その時は大抵自分がたたきつけられる)また、ヘル・イン・ア・セル戦で金網の屋根の上で乱闘していたとき、屋根の上から実況席に落とされたり、屋根にたたきつけられて、屋根を突き破ってリングに落ち、自分で凶器として用意したイスが顔面に落ちてきたりした事がある。
- JBLはジョン・シーナの首をケーブルで絞めていた際、シーナにケーブルを力づくで外され、さらに引っ張られてテレビに頭から突っ込んだ事がある。彼はその他にもビッグ・ショーのチョークスラムでマットを突き破ってダウンしたり、ジ・アンダーテイカーに鉄階段の上でツームストーン・パイルドライバーを食らったりするなど、キャラに似合わぬハードバンプを取る事もしばしば。
- エッジは2005年レッスルマニアで行われたマネー・イン・ザ・バンク戦で世界ヘビー級王座の挑戦権が入ったカバンを手に入れて以来、そのカバンを使った攻撃を必殺技に使う事がしばしばある。エッジとクリスチャンはタッグ結成時、相手の両側から同時にサンドイッチするようにイスで殴りつけるコンチェアトを得意としていた。その最初の犠牲となったのがジェフ・ハーディーで、このときジェフは脳震盪の重症を負った。
- ジェフ・ハーディーは危険な技をよくやる事で有名だった。観客席の2階、ハシゴの上、エントランスのセットの上、どこからでも平気でダイブする。また、フェンスに飛び乗って、渡ってダイブするのも得意。
- シェイン・マクマホンもハードコア系の試合が得意。ダイビングエルボーを得意としており、相手を実況席に寝かせて見舞い、実況席ごと潰す、またある時はエントランスの50フィートの高さの柱から飛び降りたりした事もあった。
[編集] TNA
TNAは斬新かつ独創的な試合形式を行う特徴がある。
[編集] TNAで今まで行われた独特の試合形式
- ハウス・オブ・ファン・マッチ・・・リングのロープに沿って縄が張られ、その縄に色んな凶器をぶら下げて行うTNA式ハードコアマッチ。大抵この形式の試合をやるときはレイヴェンが対戦者として絡んでいる。
- モンスターズ・ボールマッチ・・・TNA式ストリートファイト。リングの隅っこに大量の凶器を入れたゴミ箱がひとつ置いてある。
- アルティメットX・・・リングの角にポールを立て、リング上空に縄2本を中央で交差させるように張り、その交差地点にアイテムを吊るし、それを最初に取った人が勝つというもの。
- ハングマンズ・ホラーマッチ・・・各方面のロープに1本ずつ括りつけられた片方の先端に首輪がついた鎖を使い、相手を首吊りにして失神させたら勝利。レイヴェン対ソンジェイ・ダットの戦いでこの試合形式が採用され、ダットが勝利を飾っている。ただし、この形式で行われた試合はこれ1度だけ。
- キング・オブ・ザ・マウンテン・・・チャンピオンベルトを持ってハシゴを上り、天井に吊るしたら勝利といういわばラダー・マッチの逆バージョン。また、3カウントまたはギブアップを奪われると、3分間リング外に用意された檻の中で待機していなければならない。
- フル・メタル・メイヘム・・・テーブル、ハシゴ、イス、鎖の4つの公認凶器を使って戦う試合形式。
[編集] ROH
ROHは目立って高いレスリング技術で注目されているが、ホミサイドというハードコア系レスラーが存在する。ホミサイドはフォーク攻撃やテーブル葬を得意としている。また来日して大日本プロレスで2002年に行われていたワールド・エクストリーム・カップというリーグトーナメントに参戦し、そのブロック戦でジ・ウインガーと対戦、バルコニーから飛び降りてダイビングエルボーを見舞った事がある。
[編集] 日本の団体
日本では主にインディー団体で盛んにハードコアマッチが行われている。
[編集] ハッスル
ハッスルでは、FMW出身の金村キンタロー、田中将斗、黒田哲広の3人がハードコア要員として活躍中。ハードコアマッチのベルトである「ハッスル・ハードコア・ヒーロー(略称HHH)」が創設されたが、現在そのベルトは安田忠夫が奪ってそのベルトをオークションにかけると宣言して以来、姿を現していない。
[編集] 全日本プロレス
- 王道マットと呼ばれ、特殊な試合形式は滅多に行われない全日本プロレスだが、2004年2月の両国国技館興行で、NOSAWA論外、MAZADAの2人によるヒールユニット、「東京愚連隊」と本間朋晃、宮本和志の2人が全日在籍時に結成されたユニット、「ターメリックストーム」によるタッグマッチがこの形式で行われた。
[編集] レスラーにまつわるエピソード
- 本間は元大日本プロレス所属という事もあり、今でもたまにハードコア殺法を使う。
- 東京愚連隊はいつも大量の凶器が入ったゴミ箱を持参し、試合ではしょっちゅう持ち込んだ凶器を使用する。
- VOODOO-MURDERSのTARUも凶器を持ち込む場合が多い。これまでイス、鉄パイプ、ムチ、078(ナイフを束ねたカギ爪のような凶器)を持ち込んできており、078で曙を流血に追い込んだ事も。
[編集] 大日本プロレス
通称「デスマッチ団体」とも呼ばれる大日本プロレスでは、日本で最も盛んにハードコアやデスマッチが行われている団体で、BJW認定デスマッチヘビー級王座というデスマッチのベルトも存在する。
[編集] レスラーにまつわるエピソード
- 伊東竜二は数々の独特なデスマッチアイテムを製作して来ている。これまで蛍光灯でクモの巣を模った凶器、人間ねずみ取りを発案してきている。
- 一時期アメリカのインディ団体CZW勢のレスラー達が参戦し、大日本側のレスラー達と抗争を繰り広げた事があり、CZW撤退後現在、マッドマン・ポンド、MASADAを中心にして海外から参戦する外国人レスラーは主に「バカガイジン」と呼ばれる事がほとんど。これは、大日本プロレスに参戦する外国人選手のムーブは派手であったり、無茶で相手選手に多大なダメージを与える事で、観客に想定外のイメージを受け取とらせる事が多くなったからである。
- 2003年に後楽園ホールのリング上に二階建ての家(グレート小鹿の家という設定)を建設して家の中にあるものなら全て凶器として使用できるという前代未聞のデスマッチが行なわれた。出資者は当時・ソフト・オン・デマンド社長だった高橋がなり。試合が終わる頃には家は跡形もなく破壊されていた。
[編集] プロレスリングElDorado
- みちのくプロレス所属の双子タッグバラモンシュウ(佐藤秀)&バラモンケイ(佐藤恵)が凶器攻撃を得意としている。イスや竹刀を振り回したりする事が主だが、時には相手にゴミ箱を被せて襲ったり、挙げ句の果てには火のついた木製の板に相手をパワーボムで投げ込むなどの暴挙に走った事もある。