パイルドライバー
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パイルドライバー は、
- 杭打ち機のこと。いわゆる重機のひとつ。
- プロレス技の一種。本稿で述べる。
パイルドライバー(Pile driver)とはプロレス技の一種。日本語訳としては、脳天杭打ちが当てられる。重機のパイルドライバーで杭を打つようにして技をかけることからこの名がついた。派生技もいくつかの種類があり、それぞれに名前がついている。元祖には複数説があるが、ルー・テーズが開発した「テーズ式パイルドライバー」を“元祖”パイルドライバーとする説が有力である。総合格闘技では、美濃輪育久がパンクラスの試合でドリル・ア・ホール・のように抱え上げて、ツームストンのように前に落とす形で使用したことがある。
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[編集] 派生技
[編集] ドリル・ア・ホール・パイルドライバー
Drill a hole Pile driver
- いわゆる普通のパイルドライバー。相手の頭を両方の太ももではさみこみ、相手の胴の前で両手をクラッチして持ち上げ、そのまま脳天をマットにたたきつける。1950年代のアメリカのスターレスラー、バディ・ロジャースが決め技としてポピュラーになった。バディ・オースティンというプロレスラーは、この技で新人レスラーを2人殺している(ギミックではなく事実であり、それにより「キラー」と呼ばれた)。オースティンのパイルドライバーは、相手の頭を膝付近で固定、胴体をクラッチせず、タイツをつかんでいる。この形で落とした場合相手の体をコントロールすることが出来ず、非常に危険である。
[編集] ツームストーン・パイルドライバー
Tombstone Pile driver
- 墓石式脳天杭打ちとも。ボディスラムの要領で相手を抱え上げ、頭部をひざの間に挟みこむ。そのままジャンプして両膝を曲げた状態で落下し、膝をつくと同時に相手の脳天をマットにたたきつける。ドリル・ア・ホール・パイルドライバーとは相手の体の向きが逆になる。イギリスが発祥といわれ、ビル・ロビンソン、ダイナマイト・キッドなどの欧州系レスラーが得意にしていた。初代ブラックタイガーやジ・アンダーテイカーが代表的な使い手。アンドレ・ザ・ジャイアントもモンスター・ロシモフ時代に使用していたが、1972年にターザン・タイラーの首を折って以来みずから禁じ手とした。ルチャリブレでは「マルチネーテ」と呼んでおり、マットが硬いために頚椎を損傷する恐れがあるということで、全面的に禁止技に指定されている。アメリカでも団体によっては禁止技に指定されている。
[編集] ゴッチ式パイルドライバー
- 基本的にはドリル・ア・ホール・パイルドライバーと同一系統の技であるが、ドリル・ア・ホール~のほうが相手の胴を持って上げるのに比べ、ゴッチ式は相手の股間で両手をクラッチさせることに違いがある。その名称のとおり、カール・ゴッチが得意技としていた。また、ゴッチが現在とは相手の身体の向きが逆の形でかけている写真も残っている。現役選手では鈴木みのるが主な使い手。
[編集] テーズ式パイルドライバー
- 通常のパイルドライバーは相手の頭を両膝で挟み込むが、テーズ式は相手の胴を両手でクラッチして持ち上げ、単純にマットへと叩きつける。パワーボムの原型となった技であり、その名の通りルー・テーズが現役時代に使っていた。リバース・スラムとも呼ばれ、テーズ本人によればスタンプホールドの一種であり、パイルドライバーとは別の技だとしている。アントニオ猪木も同型の技をモンスターマンとの異種格闘技戦で使用している。
[編集] キタオ・ドリラー(リバース・ドリル・ア・ホール・パイルドライバー)
- 相手を一度肩に担ぎあげたあと、頭を下に向けて胴体を両腕で抱え込んで、尻餅をつくようにしながら落とす技。相手の身体の向きはツームストーン・パイルドライバーと同じで、落としかたはドリル・ア・ホール・パイルドライバーと同じになる。元横綱の北尾光覇がフィニッシュ・ホールドとして使用した。北尾の引退後は弟子筋に当たるTARUがTARUドリラーとして使用している。
- ストーン・コールド・スティーブ・オースチンも同型の技を一時期使用しており、蝶野正洋がWCW時代のスティーブ・オースチンにこの技をかけられ、頸椎を痛めている。後年ストーン・コールドもまたオーエン・ハートの同型のパイルドライバーにより頸椎に重傷を負った。天山広吉の必殺技であるTTDの原型はこの形であるが、危険すぎたためか現在は通常のツームストン式やみちのくドライバーIIに近い形になっている。
[編集] ハイジャック・パイルドライバー
- タッグの連携技。一人がパイルドライバーの体勢で抱え上げ、もう一人が相手の両足を掴んで叩きつける力を加える。通常のパイルドライバーにより速いスピードで力がこめられて叩きつけられる。元祖は山本小鉄と星野勘太郎の、ヤマハブラザーズ。エプロンやコーナーなどの段差を利用する。超獣コンビのこの技を喰らってジャイアント馬場が負傷し、連続試合出場記録が途切れた。ギミックではなく、場外で足腰に力が入らなくなった姿は茶の間に衝撃を与えた。これを機会に全日本プロレスでは禁止技となった(現在は不明)。
[編集] キン肉ドライバー
- 漫画『キン肉マン』の主人公・キン肉マンの技。両手で相手の足を掴んで股裂きしつつ、さらに相手の両脇をそれぞれ足で踏みつけながらマットに叩き付ける。作中では変形のツームスートン・パイルドライバーとされており、続編の『キン肉マンII世』では「疾風迅雷落とし」という別名もつけられた。
- 以上の体勢に持っていくことが難しいためか、同じキン肉マンの技であるキン肉バスターと違い、現実のレスラーが使用する例は見られない。
[編集] スクリュー・パイルドライバー
screw Pile driver
- 対戦型格闘ゲーム『ストリートファイター』シリーズに登場する、ザンギエフというプロレスキャラクターの必殺技。相手を抱えてジャンプし、きりもみ式に回転しながら落ちるもので、人間には真似のできるものではない。当然、現実の世界で使用できるレスラーは存在しない。
- なお、この技はアクションゲーム『ファイナルファイト』シリーズのキャラクター、マイク・ハガーも使用している。