ナショナル・トラスト
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ナショナル・トラスト(National Trust)とは歴史的建築物の保護を目的として英国において設立されたボランティア団体。正式名称は「歴史的名勝と自然的景勝地のためのナショナル・トラスト」(National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty) で一般にはナショナル・トラストと略される。
本組織による保護活動が著明となったことから、同様の趣旨を持って活動する運動、あるいは理念そのものを「ナショナル・トラスト」と称することもある。
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[編集] 歴史
- 1895年にオクタヴィア・ヒル(Octavia Hill)、サー・ロバート・ハンター(Sir Robert Hunter)、キャノン・ハードウィック・ラウンズレイ(Canon Hardwicke Rawnsley)によって設立された。組織が扱った最初の建築物および自然区はそれぞれアフリストン・クラーギー・ハウスとウィッケン・フェンであった。20世紀中頃になると貴族およびジェントリ層が農村に所有する邸宅であったカントリー・ハウスが、経済的な負担から維持できなくなるケースが増え、ナショナル・トラストもこれらの保護に力を注いだ。
- ピーターラビットの原作者であるビアトリクス・ポターが湖水地方の土地をナショナル・トラストに託した。
- ウィンストン・チャーチルが住んでいた家を未来へ残しておくためにナショナル・トラストに寄附した。
- 目的あるいは発想
- 自然や街並みや歴史的建造物など、「国民の(あるいは世界の)財産として次世代へ引き継ぎたいのだけれど所有権や法的・経済的な問題により維持が困難なもの」を守りこれを次世代へ引き継いでいくこと。
[編集] 著明な施設
2004年から05年にかけての期間にナショナル・トラスト施設を訪れた人の総数は5000万人を数えた。下のリストはその内で入場料を徴収するものの上位10施設である。
- ウェイク・ハースト・レイク・ガーデン — 420,831人
- ストーヘッド — 335,265人
- フォウンタインズ・アベイ — 299,728人
- ポレスデン・レイシー — 287,010人
- ワデスドン・マナ — 286,557人
- セント・マイケルズ・マウント — 206,557人
- ランハイドロック・ハウス — 205,867人
- チャートウェル — 184,078人
- シェフィールド・パーク・ガーデン — 169,952人
- コーフ・カースル — 168,377人
他にも著名な施設として
等があげられる。
[編集] 概要
英国政府の公的機関であるイングリッシュ・ネイチャーや、イングリッシュ・へリテッジらと協力して活動をすすめている。
- 対象
- 自然遺産
- 文化遺産
- 手段
[編集] イギリス以外の団体
組織の活動の成功によって、英語圏を中心とした世界各国にナショナル・トラストの名称を冠した保護団体が設立された 。以下の団体は互いに協力体制をとっており、ある国における団体の会員は他国のナショナル・トラスト施設への入場料が減額あるいは無料となる。
- The Barbados National Trust — バルバドス
- The Bermuda National Trust — バミューダ
- The Manx National Trust — マン島
- The National Trust for Historic Preservation — アメリカ合衆国
- The National Trust for Places of Historic Interest or Natural Beauty — イングランド、ウェールズ、北アイルランド
- The National Trust for Jersey — ジャージー島
- The National Trust for Scotland — スコットランド
- The National Trust of Australia — オーストラリア
- The National Trust of Fiji — フィジー
- The National Trust of Guernsey — ガーンジー島
- The New Zealand Historic Places Trust — ニュージーランド (建築物)
- The Queen Elizabeth II National Trust — ニュージーランド (その他)
類似組織としては次のものが挙げられる。
[編集] 日本における展開
- 1964年に古都鎌倉を乱開発から守るために、作家の大佛次郎が立ち上がり、鎌倉市民と共にナショナル・トラスト運動を展開したのが始まり。
- 彼が書いた新聞記事『破壊される自然』で、「ナショナル・トラスト」という名前・発想・活動が広く知られるようになった。
- 1968年に英国のナショナル・トラストに倣って観光資源保護財団(現財団法人日本ナショナルトラスト)が設立された。
- 1983年にナショナル・トラスト運動を全国的に連絡・協力する組織として、「ナショナル・トラストを進める全国の会」が結成された。
- 1992年には任意団体だった「ナショナル・トラストを進める全国の会」の設立趣旨・事業活動などを継承し、社団法人日本ナショナル・トラスト協会が設立された。
- 現在、全国各地に54の団体が活動をしている。
- 日本ナショナルトラスト保護資産第1号は、天心遺跡記念公園(旧日本美術院五浦研究所)。
[編集] 関連
- 緑のトラスト
[編集] 外部リンク
- National Trust - イギリス
- 財団法人日本ナショナルトラスト - 1968年12月設立の観光資源保護財団
- 社団法人日本ナショナルトラスト協会 - 日本のナショナルトラスト運動の普及啓発団体
- N.T.E.ジャパンクラブ - 英国と日本のナショナルトラスト活動を支援する団体
- 100平方メートル運動の森・トラスト - 北海道
- NPO法人蔵王のブナと水を守る会 - 宮城県
- トトロのふるさと財団ホーム - 埼玉県
- (財)佐倉緑の銀行 - 千葉県
- (財)鎌倉風致保存会 - 神奈川県
- 軽井沢ナショナルトラスト- 群馬県・長野県
- アファンの森 - 長野県
- 柿田川みどりのトラストオフィシャルページ - 静岡県
- (財)大阪みどりのトラスト協会 - 大阪府
- 岡山県郷土文化財団 - 岡山県
- (社)高知県生態系保護協会 - 高知県
- 臼杵デザイン会議 -大分県
- (N)エコシステム - 熊本県
- 財団法人阿蘇グリーンストック - 熊本県