スラヴァ級ミサイル巡洋艦
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スラヴァ級ミサイル巡洋艦 | |
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ミサイル巡洋艦モスクワ(モスクヴァー(Москва)) | |
言語 | 表記 |
日本語 | スラヴァ級ミサイル巡洋艦 |
スラーヴァ級ミサイル巡洋艦 | |
ロシア語 | крейсера «1164 Слава» |
英語 | Slava Class Guided Missile Cruiser |
ロシア語 | Проект 1164 «Атлант» |
片仮名転写 | プロイェークト1164 アトラーント |
英語転写 | Project 1164 Atlant |
片仮名転写 | プロジェクト1164 アトラント |
スラヴァ級ミサイル巡洋艦(1164 スラーヴァ級ミサイル巡洋艦 крейсера «1164 Слава»)は、ロシア海軍の巡洋艦。1164号計画によって、通常動力を用いた軍艦として建造された。現在はロシアとウクライナによって運用されている。スラーヴァ(слава)という名はロシア語で「栄光」を意味する。ロシアでは、「航空母艦の撃滅者」の異名を得ていた。1番艦の名称が判明するまで、NATOではクラシナ級の名称を付けていた。
なお、本級のロシアでの名称は、プロイェークト1164 アトラーント(Проект 1164 «Атлант»)(Project 1164 ATLANT)である。なお、ロシアではミサイルとロケットの区別がされないため、「ロケット巡洋艦」と呼ばれている。
目次 |
[編集] 概要
本級は、「重原子力ミサイル巡洋艦キーロフ級の小型版」と見られる事が多いが、計画自体は、むしろキーロフ級よりも先になり、設計が始まったのは、1960年代後半で、当初は、大型対潜艦1134B(カーラ型)を拡大して対艦バージョンにした艦に過ぎず、対潜ミサイル「メチェーリ」(SS-N-14)を長距離対艦ミサイル「バザーリト」(4К80 Базальт:玄武岩;NATOコードネーム:SS-N-12 Sandbox)に換装した以外は、1134Bとほぼ同じ装備だった。
しかし4K80バザーリトミサイル(またはP-500バザーリト・コンプレックス;комплекс П-500 Базальт)に問題が発生したことと、1970年代には対潜任務艦の建造が最優先されたため、計画に大きな遅れが出た。そこで設計を一部変更し、艦隊防空ミサイルが、元の「シュトルム」(SA-N-3)から「フォールト」(SA-N-6) に換装される事になった。元々は、1134Bと同様に「シュトルム」の連装発射機は艦前部と後部に分散配置されていたのだが、VLS(垂直発射機)方式の「フォールト」は、艦後部に集中配置される事になり、空いた前部スペースには、AK-630 30mmガトリング砲とRBU-6000対潜ロケット発射機が載せられた。
このクラスは、すべてウクライナの61コムーナ造船所(ムィコラーイィヴ(ニコラーイェフ)北、第445海軍工廠)で建造された。ロシア海軍にとっては、手ごろな大きさの使いやすい艦であるようで、2005年現在、建造された全艦が運用中で、大艦隊の旗艦として重宝されている。
本級は、甲板上に多数の対艦ミサイルを並べた独特の外見となっているが、攻撃を受けた際に容易に誘爆するのではないかという指摘を西側軍事評論家から受けていた。 この点に関し、1991年、本級の「マルシャル・ウスチーノフ」がアメリカを訪問した際、アメリカ海軍の士官が、上記の点についてソ連側の士官に質問したが、返ってきた返答は、以下のようなものだった。
「ああ、心配要りませんよ。あんた方のミサイルがこのフネに飛んでくる前に、このミサイルが、あんた方に向かって飛んで行っていますから、ここ(ミサイル・ランチャー)は空っぽになっていますよ」
[編集] 性能諸元
- 基準排水量:10,000 t
- 満載排水量:11,280 t
- 全長:187 m
- 全幅:20.8 m
- 深さ:7.5 m
- 機関:COGAGガスタービン 110,000馬力、2軸推進
- M70巡航用タービン×2基:20,000馬力
- M8KFブースト用タービン×4基:90,000馬力
- 速度:34 Kn
- 航続距離:15 Knで9,000海里
- 兵装※()内はNATOコードネーム
- 電子装置
- MR-800(トップ・ベア)対空・対水上捜索レーダー 1基
- MR-750(トップ・スティア)3次元対空レーダー 1基
- パーム・フロント航海レーダー 1基
- トップ・ドーム S-300F用誘導レーダー 1基
- ポップ・グループ Osa-M用誘導レーダー 2基
- MR-184(カイト・スクリーチ) AK-130MR-184用射撃指揮レーダー 1基
- バス・ティルト AK-630用射撃指揮レーダー 3基
- フロント・ドア P-500用レーダー 1基
- ブル・ノーズ ソナー
- メア・テイル 可変深度ソナー
- 定員:476名
[編集] 同型艦
[編集] 126 モスクワ(Москва)
モスクヴァー(Москва)。旧名スラーヴァ(スラヴァ)。1976年起工。1979年進水。1982年竣工。ソ連黒海艦隊旗艦を勤め、東西冷戦終結宣言が行われた1989年の米ソ首脳マルタ会談においては、ソ連海軍より会談場所として提供されたが、結局、会談には使われなかった(ちなみに、アメリカ海軍が用意したのはミサイル巡洋艦ベルナップだったが、こちらも使われなかった)。ソ連崩壊時にはオーバーホール中であったが、その後のロシア・ウクライナ両国による「黒海艦隊分割・帰属問題」のあおりを受け、工事はストップ。1995年6月22日には、除籍された先代の対潜巡洋艦の名を襲名し、スラーヴァから改名された。1997年に両国の交渉が妥結し、晴れて正式にロシア海軍黒海艦隊所属となったが、予算不足でオーバーホール工事の方は一向に捗らず、この状況を見かねたモスクワ市は、工事費用の一部2000万ドルを寄付した事もあり、2000年にようやく現役復帰し、再び黒海艦隊旗艦に返り咲いた(この工事の際、艦橋前部のAK-630 30 ㎜ガトリング砲2基が撤去されている)。2003年のイラク戦争後には、大型対潜艦スミェトリーヴイ、警備艦プィトリーヴイと共にペルシャ湾海域に進出している。なお管理上は、第30艦艇師団の第11対潜艦旅団に編入されている(奇しくも、この旅団は、先代モスクワも属していた部隊である)。
[編集] 088 マールシャル・ウスチーノフ(Маршал Устинов)
1978年起工。1982年進水。1986年竣工。北方艦隊に編入されたが、1990年代半ばにサンクトペテルブルク市に回航され、オーバーホールを行った。だが予算難のためか、オーバーホール終了後しばらくバルト海に駐留しており、1998年に北方艦隊に復帰した。現在も同艦隊に所属し運用されている。1970年代後半にソ連国防大臣を勤めた「ウスチーノフ元帥」に由来する。
[編集] 108 ヴァリャーク(Варяг)
旧名はチェルヴォーナ・ウクライーナ(Червона Украина:赤いウクライナ)で、1996年に、建造が中止された先代の未成重航空巡洋艦(空母)の名を取って改名された。1979年起工。1983年進水。1989年竣工。太平洋艦隊に配備された。ソ連崩壊時にはカムチャツカ半島に駐留していたが、1995年にウラジオストクに回航され、太平洋艦隊旗艦となる。1996年7月のロシア海軍創設300周年記念観艦式においても、受閲部隊の「旗艦」を勤める。1999年に小規模な火災事故を起こし、ウラジオストクのダーリ・ザヴォートで修理。現在も運用されており、管理上、沿海州諸兵科連合小艦隊に編入されている。一時期、行動不能状態にあるのではないかと見られていたが、2002年の海上自衛隊創設50周年記念国際観艦式に参加したり、中華人民共和国をたびたび訪問したりと、比較的活発に行動している。外洋に出ない時は、ウラジオストク市の太平洋艦隊司令部ビルの前の埠頭に、ウダロイ級駆逐艦4隻と共に停泊している事が多い。
[編集] 000 ウクライナ(Україна)
「ウクライィーナ(Україна)」。予定名はアドミラール・フロータ・ローボフ(ローボフ海軍元帥)。1998年2月17日にウクライナへの受領がレオニード・クチマ大統領によって決断されたのに伴い、改名された。1984年起工。1990年進水。2001年にウクライナ海軍へ就航する予定であったが、予算不足のため、完成度95パーセントの最終艤装状態のまま放置されており、同海軍への就航は危ぶまれている。中華人民共和国やインドへの売却話も出ている。ロシアも、以前は本艦の取得に意欲を見せていたが、8,000t級の新型多用途フリゲイト・プロジェクト22350の計画が進められている為か、最近は全く関心が無くなった。
[編集] アドミラール・ゴルシュコーフ(Адмирал Горшков)
名称は、「ゴルシュコーフ海軍大将」の意味。冷戦終結に伴い、起工に至らず計画のみに終わった。
[編集] オクチャーブリスカヤ・リェヴォリューツィヤ(Октябрьская революция)
名称は、「十月革命」の意味。冷戦終結に伴い、起工に至らず計画のみに終わった。
[編集] 外部リンク
- Slava class data(英語)
- Krasina/Slava class(英語)
- Серия 1164 Слава(ロシア語)
- Moskva—Project no: 1164 Atlant(英語)
- Проект 1164 «Атлант» РАКЕТНЫЙ КРЕЙСЕР(ロシア語)
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