スイギュウ
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スイギュウ |
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分類 | ||||||||||||||||||
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Bubalus arnee |
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英名 |
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スイギュウ(水牛、water buffalo、Bubalus arnee)は偶蹄目ウシ科の大型哺乳類。インド、ネパール、ブータン、ベトナム、タイには野生種が生息しており、アジア、南米、北米、ヨーロッパなど広い地域で家畜として飼育されている。また、オーストラリア北部には家畜が野生化したものが生息している。
野生種は現在主に東南アジアに生息しているが、原産地は明らかでない。現在の野生種がもともとの野生種の末裔であるか、それとも以前家畜化されていたものが野生化したのかははっきりせず、あるいはそれらの混血であることも考えられる。
アジアの野生種の生息数は非常に少なくなっている。スイギュウは成長すると300kgから1200kgになり、一般的にオスは1000kg前後、メスは750kg前後であるが、体重は近縁にあっても大きく変動する。
目次 |
[編集] 人との関わり
スイギュウの乳は多くの人々が利用しており、脂肪分が多いためモッツァレラチーズの伝統的な材料となっている。スイギュウの肉(carabeefと呼ばれることもある)は地域によっては牛肉として流通しており、最も多くのスイギュウを飼育しているインドでは主要な輸出品目となっている。スイギュウの革は強靭で利用しやすく、靴やオートバイのヘルメットに使われている。また角は印鑑や三味線の駒に使われる。
[編集] アジア
アジアはスイギュウの原産地であり、現在でも世界の95%が生息している。多くのアジアの国でスイギュウは最も生息数の多いウシ科の動物であり、1992年時点でのアジア全体でのスイギュウの数は1億4100万頭と見積もられている。
スイギュウは粗末な食べ物で成長して肉や乳を得られるだけでなく、ウシよりも沼地での行動に適応しているため水田での労働力としても有用であり、経済的に非常に優れた動物である。スイギュウの乳に含まれる脂肪分は家畜の中で最も多く、この乳脂肪はギー(インドなどで料理に使われるバター状のもの)の主要な原料となる。
野生のスイギュウが生息する地域はほとんどなく、少数がインド、ネパール、ブータン、タイで見られる。スイギュウは平均1mほどの生き物の中で最も長い角を持っており、なかでも1955年に射殺されたスイギュウは4.24mもある角を有していた。この巨大な破壊兵器のため、野生ではトラなどの捕食者も成長した雄牛には滅多に襲いかからず、また怒らせたスイギュウは極めて危険な動物となる。スイギュウはふつう草原や沼沢地で見られ、群で行動している。
スイギュウ (Carabao) はフィリピンの国の動物とされている。
また、インドやチベットなどでは糞を乾燥させたものが燃料として使われている。ヒンドゥー教では瘤牛と違い、聖なる動物としてあがめられていない。
[編集] オーストラリア
スイギュウは19世紀初頭に荷物運搬用としてノーザンテリトリーに持ち込まれたが、すぐに逃げ出して野生化した。これらは狩猟の対象となり、狩猟地として有名なメルビル島には4000頭ほどの個体が生息している。スイギュウはアーネムランド半島やノーザンテリトリー北部でも見られる。ダーウィンからメルビル島や他のノーザンテリトリー北部へ飛行機を使っての狩猟旅行がよく行われている。政府は何度か根絶を試みたが成功していない。
スイギュウは主に淡水の沼や水路に住み着いており、雨季には生息域が非常に広範囲となる。また、遺伝的に孤立しているため、外見はインドネシアの原種とは変わりつつある。
[編集] 欧州・近東
スイギュウは北アフリカと近東には紀元600年ごろに持ち込まれた。ヨーロッパには十字軍の帰還と共にもたらされ、群はブルガリアやイタリアで見ることができる。アジアと同じように、中東や欧州のスイギュウは辺境の農村地で草を食べて生活している。スイギュウはタンパク源や役蓄、または家族の財産としての経済的役割をもっている。地域によっては毎年スイギュウのレースが開催されている。