ウシ目
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ウシ目 Artiodactyla |
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ウシ目(うしもく)または偶蹄目(ぐうていもく)、偶蹄類(ぐうているい)(Artiodactyla) は、脊椎動物門 哺乳綱の一目。
ウマ目(奇蹄目)と共に、四肢の先端に蹄(ひづめ)をもつことが特徴である。ウシ目(偶蹄目)に属する動物とウマ目(奇蹄目)に属する動物を総称して、有蹄動物と呼ぶこともある。ウシ目(偶蹄目)とウマ目(奇蹄目)は、約6,000万年前に同じ祖先から分かれたとされるが、その後次第に衰退していったウマ目に対し、ウシ目は次第に勢力を伸ばしていった。現在では、カバ、イノシシ、ラクダ、キリン、ヤギなどの仲間を含む大きなグループに発展し、有蹄動物全体の約90%を占めている。
偶蹄目と呼ばれるように、ウシ目の特徴は、2つに割れた蹄である。これは第3指と第4指(中指と薬指)が変化したもので、主蹄(しゅてい)と呼ばれる。また、かかとにあたる部分に、副蹄(ふくてい)とよばれる小さな蹄がついているものもあり、岩場などでずり落ちないようになっている。
[編集] 反芻類
イノシシ亜目以外のウシ目の動物は、消化しにくい繊維分を消化するために、本来の胃(第4胃)のほかに、食道から第1~第3の胃を分化させて、合計4つの胃をもつ(ラクダ、キリンなどは、第3胃と第4胃の区別がはっきりしないため、3つとする場合もある)。これらの動物は、複胃または反芻胃と呼ばれるこれら複数の胃によって、一度食べた食物を吐き戻し、噛み返すという反芻(はんすう)を行う。これらの動物をまとめて反芻亜目(ウシ亜目、反芻類)とし、同じウシ目でも反芻をしない、現生のイノシシ類やカバ類を含む系統をイノシシ亜目(猪豚亜目)とし、系統的に両者の中間に位置すると考えられる、現生のラクダ類を含むグループを、ラクダ亜目(核脚亜目)として、それぞれ区別する。
反芻類の4つの胃のうち、第1胃には微生物が大量に住み、ここで摂取した食物の分解発酵をしている。この第1胃での微生物による分解と、反芻によって繰り返し咀嚼することによって、他の哺乳類が消化吸収できないセルロースなどを栄養として取り込むことができる。この強力な消化吸収能力が、ウシ目の動物が繁栄した一因とされている。
なお、ウマ類は胃を1つしかもたないが(単胃草食動物)、同じ目的のために盲腸を発達させ、ここで細菌を繁殖させて消化の助けとしている。
[編集] クジラの系統についての議論
クジラの仲間の先祖は、化石研究からは、顆節目に分類されていたメソニクス類、さらにさかのぼれば同じくトリイソドン類と考えられているが、最近の分子生物学的な研究からは、ウシ目から分化したとする説が出ている。これは、最近しばしば見られる、化石研究者と分子生物学者の意見が対立するケースの、典型的な例である。
[編集] 分類
- ウシ目 (偶蹄目, Artiodactyla)
- イノシシ亜目 (猪豚亜目, Suina)
- イノシシ科 (Suidae): ブタ、イノシシ
- カバ科 (Hippopotamidae): カバ、コビトカバ
- ペッカリー科 (Tayassuidae)
- ラクダ亜目 (核脚亜目, Tylopoda)
- ウシ亜目 (反芻亜目, Ruminantia)
- イノシシ亜目 (猪豚亜目, Suina)