シキミ
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シキミ | ||||||||||||||||
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分類 | ||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||
Illicium anisatum | ||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||
シキミ | ||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||
Japanese star anise |
シキミ(樒)は東北地方南部以南の山林に自生するシキミ科(かつてはモクレン科に分類されていた)の常緑高木である。有毒。仏事に用いるため寺院に植栽される。
地方によりシキビ、ハナノキ(カエデ科にも別にハナノキがある)などともいう。 学名にはリンネが命名したIllicium anisatumと、シーボルトが命名したIllicium religiosum Sieb. et Zucc.("religiosum"は「宗教的な」という意味)が存在するが、リンネのものが有効となっている。
目次 |
[編集] 特徴
常緑樹で、高さは10m程度となる。樹皮は暗い灰褐色になる。葉は、枝の先端に集まってつき、短い葉柄を持つ楕円形で、深緑色でつやがある。葉の質はやや厚く、何となく波打ったようになることが多い。 花は葉の付け根から一つずつ出て春に咲く。花びらは淡黄色で細長く、ややねじれたようになる。果実は扁平で周囲に8本の突起が出ている。上の面にすき間が開いて種子が出る。種子は褐色でつやがあり、小さいドングリを押しつぶしたような形をしている。
本州中部以南に分布し、海外では中国にまで分布する。
近縁のトウシキミ Illicium verum は果実を香辛料(スターアニス、八角(はっかく)または大茴香(だいういきょう)という)として用いる。
[編集] 伝承
シキミの語源は、実の形から「敷き実」、あるいは有毒なので「悪しき実」からといわれる。
古代にはサカキと同様に神事に用いられたといわれるが、その後仏事に用いるようになった。日蓮正宗などではシキミの枝葉を仏前に供える。また芳香があるため線香や抹香の材料に用いられた。一説によれば、毒性のあるこの植物を墓に供えることで、オオカミなどが墓を荒らすのを防いだのではないかという。
[編集] 毒性
植物体全体にアニサチンなどの有毒物質を含み、特に果実に多く、食べれば死亡する可能性がある程度に有毒である。実際、下記のように事故が多いため、シキミの果実は植物としては唯一、劇物(毒物及び劇物取締法を参照)に指定されている。
シキミの種子はややシイの実に似ている(なれていれば間違えない程度)ため、誤って食べて死亡した例がある。また、先述のトウシキミの果実(八角)がシキミの果実に非常によく似ているため、シキミの果実を誤って食べ中毒を起こす事故が多い。
[編集] その他の成分
1885年、エイクマンによってシキミの果実からシキミ酸(Shikimic acid)が発見された。この物質は、芳香族アミノ酸の前駆物質であり、タンニンの主要成分である没食子酸の前駆体でもある。
[編集] シキミ目
クロンキスト体系でシキミ科およびマツブサ科を含む。
APG植物分類体系ではアウストロバイレヤ目に含められ、モクレン目や単子葉植物などよりさらに早い段階で分化した一群であろうとされている。
[編集] シキミ科
シキミ属1属のみからなる。
[編集] シキミ属
- トウシキミ(スターアニス)