サターンVロケット
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サターンVロケット(Saturn V)は、アメリカ航空宇宙局が開発・運用した大型ロケット。サターンロケットシリーズの後期型であり、主にアポロ計画やスカイラブ計画で使用された。
ヴェルナー・フォン・ブラウンを中心に、ボーイングやノース・アメリカンなどの航空機メーカーが参画して開発された。1967年から1973年にかけて13基が発射され、打ち上げ失敗例はない。
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[編集] 背景
1960年代において、アメリカ合衆国とソビエト連邦は宇宙開発競争を繰り広げていた。1961年5月25日に、ジョン・F・ケネディアメリカ合衆国大統領は、1960年代中に月への有人飛行を行うことを宣言し、これがアメリカの宇宙開発の優先目標となった。そのため、それを可能とする大型ロケットの開発が行われることとなった。
[編集] 構造
大型の三段式ロケットであり、そのほかに機械船がつけられている。エンジンは全て液体式となっている。
[編集] 第一段
一段目はS-ICと呼ばれる。液体酸素とケロシンを推進剤としており、F-1ロケットエンジンが5基装備されていた。一段目の下端には方向安定翼が4枚付けられている。製造は、ニューオリンズのボーイング社工場で行われた。
[編集] 第二段
二段目はS-IIと呼ばれる。液体酸素と液体水素を推進剤としており、J-2ロケットエンジンが5基装備されていた。なお、直径は一段目と同じ10.06mである。
[編集] 第三段
三段目はS-IVBと呼ばれる。J-2ロケットエンジンが1基装備されている。直径は二段目より絞り込まれ6.6mとなっている。
[編集] 組み立て
ロケット各段がアメリカ各地で製造された後、ケネディ宇宙センターへ集められ、そこで組み立てが行われる。一段目のS-ICはニューオリンズで製造されるため、船により輸送される。二段目のS-IIはカリフォルニア州に製造され、船舶によりパナマ運河を経由して輸送された。三段目のS-IVBなどはグッピー輸送機により輸送された。
ケネディ宇宙センターに到着した後は、組立て棟内において、移動式発射台の上に組み立てられた。
[編集] 打ち上げ概要
サターンVは主に月ロケットとして利用された。打ち上げはケネディ宇宙センターの第39発射場が用いられた。エンジンの噴射時間は平均で約20分間。アポロ6号とアポロ13号では、一部のエンジン噴射が不良であったが噴射時間を延長することにより、出力上、大きな問題とならなかった。
[編集] 一段目(S-IC)
一段目の噴射時間は約2.5分であり、ロケットを高度61km、速度8,600km/hまで加速させる。打ち上げ8.9秒前にエンジンが点火される。初めに中央エンジンが点火され、300ミリ秒後に他の4つのエンジンも点火する。打ち上げ後は、地上130mまで上昇したところで、姿勢および方向制御のためのロール運動とピッチ運動を開始する。打ち上げ135.5秒後には、加速度限界の問題から推力を減少させるために中央エンジンを停止させる。これは、推進剤消費に伴いロケットの質量が減少していることによるものである。第一段の推進剤残量がなくなり、エンジンは停止される。エンジン停止の600ミリ秒後に8基の逆噴射ロケットが作用し、一段目(S-IC)は分離され、地球に落下する。
[編集] 二段目(S-II)
二段目の噴射時間は約6分間であり、ロケットを高度185km、速度24,600 km/hまで加速させる。
一段目の分離後、二段目は小型のロケットエンジン8基を4秒間作動させる。この加速により、燃料および酸化剤をタンク下部に寄せ、エンジンに送り込む。一段目分離4秒後にJ-2ロケットエンジンに点火し、47秒後に上記の小型ロケットエンジンが設置されている一段目と二段目の接合リングも切り離す。
[編集] 三段目(S-IVB)
三段目の噴射時間は約2.5分間である。これにより、ロケットおよびその上部にある宇宙船は地球周回軌道に入ることとなる。
[編集] アポロ以後
当初、アポロ計画は20号まで計画されていたが、17号で打ち切られることになる。20号までのサターンVはすでに製造されており、アポロ18号用だったものはスカイラブの打上に使用された。19号と20号の機体は、ヒューストンのNASAジョンソン宇宙センターとフロリダのNASAケネディ宇宙センターに展示されている。