オスカー・フォン・ロイエンタール
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
オスカー・フォン・ロイエンタール(Oskar von Reuenthal)は、銀河英雄伝説の登場人物。
目次 |
[編集] 概要
ローエングラム陣営の主要提督の一人。ローエングラム朝銀河帝国では統帥本部総長となり、後にノイエ・ラントの総督も勤めるが、最後はローエングラム王朝に叛する道を辿る。
時系列上の初登場は、コミック版の惑星(カプチェランカ)上での白兵戦とされている。ラインハルトとの関連では、ヴァンフリート星域会戦後に軍務省でミッターマイヤーとともにラインハルト(とキルヒアイス)の姿を見かけた時が最初。
乗艦はトリスタン。副官はレッケンドルフ。主な幕僚はハンス・エドアルド・ベルゲングリューン/デュッタースドルフ/ゾンネンフェルス/シュラー/バルトハウザー等。
[編集] 略歴
帝国暦458年10月26日(道原かつみのコミック版より)、下級貴族の父親とマールバッハ伯爵家の3女レオノラとの間に生まれた。生後まもなく母親が自殺し、息子を逆恨みした父親から育児を半ば放棄される。16歳で士官学校に入学。卒業後帝国軍に入隊し、数々の功績を挙げるが、女性関係のトラブルから私的決闘を行って相手を負傷させ、降等処分を受けた事がある。その為、後に知り合った一年後輩のミッターマイヤーと同階級となり、戦闘上のパートナーとして共に昇進していく。
ローエングラム陣営への参加は、門閥貴族に謀殺されそうになったミッターマイヤー救出の為、ラインハルトに助力を求めた事がきっかけ。それ以来ラインハルトに(相克しつつ)忠誠を誓い、第4次ティアマト会戦(及びその前哨戦の惑星レグニッツァ上空戦)を初め、様々な武勲を立てていく。その後、帝国軍上層部の思惑と門閥貴族の策謀により同487年初頭のアスターテ会戦には参加出来なかったが、同会戦で元帥に昇進したラインハルトに再び呼集され、中将/艦隊司令官として元帥府に登用される。
同年のアムリッツァ会戦に至る対同盟侵攻作戦で武勲を挙げ、ミッターマイヤーと共に大将に昇進。翌488年のリップシュタット戦役ではミッターマイヤーとの共同作戦でレンテンベルク要塞を陥落させる等の功績を挙げて上級大将に昇進。同489~490年のラグナロック作戦ではヒルデガルト・フォン・マリーンドルフの提案でミッターマイヤーとともに同盟首都星ハイネセンを無条件降伏させる。
新帝国暦1年(帝国暦490年)、ローエングラム王朝成立時に元帥に昇進。統帥本部総長に任じられる。翌年、第二次ラグナロック作戦で同盟が消滅して帝国新領土となり、回廊の戦い後に新領土の総督に任じられる。これと前後して、ロイエンタールに恨みを抱いたハイドリッヒ・ラングの策謀で叛逆の疑いありとして一時拘束されたが、ラインハルトとの友誼が失われる事は無かった。だが、その後、地球教の策謀がキッカケとなって叛乱を起こし、第2次ランテマリオ会戦でミッターマイヤー及びビッテンフェルト/ワーレンと戦う。メックリンガーの後方かく乱により撤退するが、その途中でグリルパルツァーの裏切りが発生、死に至る負傷を負う。新帝国歴2年(宇宙歴800年)12月16日、新領土総督府オフィスにて死去。享年33。奇しくもヤン・ウェンリーと生没年が同じであった。死の直前、ヨブ・トリューニヒトを個人的な心情から殺害するが、これが後の歴史の展開に大きな影響を与えた可能性がある。
[編集] 能力
攻守にバランスのとれた優れた用兵家。無二の親友であるミッターマイヤーとともに「帝国軍の双璧」と呼ばれ、「智勇の均衡ではラインハルト、ヤンをも凌ぐ」とまで言われた名将。リップシュタット戦役ではメルカッツに押されて撤退したが、これは戦略的(或いはラインハルトを試すという政略的)な意図によるものとされている。
回廊の戦いでは自ら攻略作戦を上申して機雷源の突破に成功してヤン艦隊をかく乱し、さらに叛乱後の第2次ランテマリオ作戦では、ミッターマイヤー率いる帝国軍と互角に渡り合い、バイエルライン率いる分艦隊を壊滅寸前まで追い込んでいる。なお、この戦いはミッターマイヤーが優勢だったが、ミッターマイヤー自身は、それは自分にビッテンフェルトとワーレンという味方がいたから、と主張している。
白兵戦技にも優れており、リップシュタット戦役中のレンテンベルク要塞攻略戦ではミッターマイヤーと共にオフレッサー装甲擲弾兵総監との戦いを指揮する。後にラグナロック作戦では、シェーンコップとも装甲服なしで一騎打ちを行う。
[編集] 人柄
左右の瞳の色が違う「金銀妖瞳(ヘテロクロミア)」の持ち主。漁色家として知られるが、実際には幼少期に母に殺されかけた(愛人と同じ色をした瞳をナイフで刳り抜かれそうになり母は自殺、父からはなじられて育つ)トラウマから強い女性不信を抱えている。女性側から一方的に迫られ、関係を持っては捨てる事を繰り返し、それがもとで決闘騒ぎを起こした事もある。周囲から批判的な目で見られる事も少なくないが、酔った本人の独白から真相を知ったミッターマイヤーだけは同情的な思いを抱いている。
ラインハルトに対し、浅からぬ忠誠心と尊敬の念を有していたが、常にその心の底には乱世の雄としての野心と誇りが宿っていた。なお、「マイン・カイザー(我が皇帝)」をもっとも美しく発音したとされる。
地球教の策謀に嵌められたことを契機に叛乱を起こしているが、不本意な様子は無く、むしろ望んで叛乱を起こした様子が伺える。そのため、戦いの前、ミッターマイヤーや腹心の部下ベルゲングリューンが必死で説得したものの、止めることはできなかった。
グリルパルツァーに裏切られ負傷した際、軍医は入院加療を強く薦めたが、本人が拒んだ。艦隊の統率が瓦解する事を防ぐためというのが表向きの理由だが、ハイネセンに帰着後も入院加療していない事から、死にたがっていたのではないかという説がある。
ユリアン・ミンツは、ロイエンタールについて「創業よりも守成の人であった」と後年述懐しており、ロイエンタール本人の野心と気概とはやや異なる評を提示した。
セガサターン版ゲームでは、ある程度の確率でロイエンタールは門閥貴族連合に参加してしまう。
[編集] 家族
リップシュタット戦役終盤においてロイエンタールがリヒテンラーデの拘禁/処刑にあたった。その一族の女性の一人であるエルフリーデ・フォン・コールラウシュとの間に男児がおり、彼の死後はミッターマイヤーに引き取られた(フェリックス・ミッターマイヤー)。死の直前エルフリーデが赤子とともに現れるが、一族の恨みを晴らす機会を勧められたにも関わらず赤子を残しそのまま去っており、彼に対して単純ならざる感情を抱いていた事が提示されている。