ウォルフガング・ミッターマイヤー
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ウォルフガング・ミッターマイヤー(Wolfgang Mittermeyer)は、銀河英雄伝説の登場人物。本編終了のシーンに登場するのがミッターマイヤーとその家族であり、主人公のラインハルトに比類する重要人物と評されている。
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[編集] 概要
ローエングラム陣営の主要提督の一人で、キルヒアイスの死後、ラインハルトに最も信頼された若き勇将。獅子の泉の七元帥の一人で、その中でも首席元帥とされる。ローエングラム朝銀河帝国では宇宙艦隊司令長官となった。
ロイエンタールとは無二の親友で、二人で「帝国軍の双璧」と呼ばれ、艦隊指揮/白兵戦技とも卓越した実力を有している。
時系列上の初登場は、コミック版の惑星(カプチェランカ)上での白兵戦とされている。ラインハルトとの関連では、ヴァンフリート星域会戦後に軍務省でロイエンタールとともにラインハルト(とキルヒアイス)の姿を見かけた時が最初。
乗艦は人狼(ベイオ・ウルフ)。副官はアムスドルフ。幕僚はバイエルライン/ビューロー/ジンツァー/ドロイゼン/ディッケル等。
[編集] 略歴
帝国暦459年8月30日生まれ(道原かつみのコミック版より)。父は平民階級の造園業者。16歳で士官学校に入学。2年生(17歳)の夏休みに帰省した時、後に妻となるエヴァンゼリン(当時12歳)と出会っている。卒業後は少尉として任官。帝国暦480年にイゼルローンでロイエンタールと出会い、以降は無二の親友、そして軍事作戦においても共同で様々な武勲を挙げる。
24歳の時、19歳だったエヴァンゼリンと結婚。エヴァンゼリンへのプロポーズは7年がかりであり、プロポーズ自体の様子も、後に得る「疾風」の異名とはとてもかけ離れたものであったと評されている。
帝国暦486年3月、クロプシュトック事件が発生。討伐部隊のオプザーバーとして参加し、民間人を殺害したブラウンシュヴァイク公爵の縁者を軍規により銃殺。これにより門閥貴族の怒りを買い軍刑務所に監禁されるが、当時まだ知己を得ていなかったラインハルトにロイエンタールが救援を求め、釈放される。これ以後ミッターマイヤーとロイエンタールはラインハルトに忠誠を誓う。
ラインハルトの幕僚としての初の戦いは、同年の第4次ティアマト会戦(及びその前哨戦である惑星レグニッツァ上空戦)。その後、帝国軍上層部の思惑と門閥貴族の策謀により同487年初頭のアスターテ会戦には参加出来なかったが、同会戦で元帥に昇進したラインハルトに再び呼集され、中将/艦隊司令官として元帥府に登用される。
同年のアムリッツァ会戦に至る対同盟侵攻作戦で武勲を挙げ、ロイエンタールと共に大将に昇進。翌488年のリップシュタット戦役ではシュターデン提督の艦隊を撃破し、さらにロイエンタールとの共同作戦でレンテンベルク要塞を陥落させる等の功績を挙げて上級大将に昇進。同489~490年のラグナロック作戦ではヒルデガルト・フォン・マリーンドルフの提案でロイエンタールとともに同盟首都星ハイネセンを無条件降伏させる。
新帝国暦1年(帝国暦490年)、ローエングラム王朝成立時に元帥に昇進。宇宙艦隊司令長官に任じられる。作中には特に記述されていないが帝国軍史上初の平民出身の元帥とされている(キルヒアイスは死後)。以降も軍務にまい進したが、新帝国暦2年、ロイエンタールが帝国に叛したため、第2次ランテマリオ会戦及び追撃戦で戦い、ロイエンタールの幕僚であるグリルパルツァーの裏切りもあって勝利する(ただし本人は勝利者という評価を否定していた)。その直後、マリーンドルフ伯フランツが、ラインハルトと娘のヒルダとの結婚に伴って国務尚書の座から退く事を決意し、その後任になる事を推薦されたが、返答は保留している。
新帝国暦3年、崩御したラインハルトの遺言により、首席元帥となる事が決定するが、物語自体はその直前に終了している。
[編集] 能力
艦隊司令官としての能力は、新帝国ではラインハルトやロイエンタールに比類する。艦隊の高速移動に定評があり、追撃中の敵艦隊を追い越してしまうほどの用兵の速さから「疾風ウォルフ(ウォルフ・デア・シュトルム)」の異名を持つ。准将だった第6次イゼルローン攻防戦で、ロイエンタールと共に160隻の砲艦とミサイル艦を運用して同盟軍の前進を止めた功績を初め、各戦役でも合理的で迅速な戦術/戦略を得意としている。リップシュタット戦役では士官学校の教官だったシュターデンとアルテナ星域において対戦。理屈倒れのシュターデンを実戦で証明する。
白兵戦技も卓越しており、シェーンコップと互角に戦ったロイエンタールと拮抗した戦闘能力を有しているとされている。
動体視力が優れており、アニメ版では、高速ですれ違った自動車の中にアンネローゼやラングが乗っている事に気がついたエピソードがある。
[編集] 人柄
大変に清廉で公明正大な人物と評されており、同僚からも部下からも絶大な支持を得ている。その公正さゆえに軍紀に厳しく、特に軍隊による民間人への略奪や暴行には容赦ない処断を下すことで有名。その剛毅さから危うく門閥貴族に謀殺されそうになった。
基本的には陽性の性格だが、他の提督と同様、オーベルシュタインに対しては負の感情と意地の悪い論評を口にする事が多い。「あのオーベルシュタイン」という言い方はミッターマイヤーが言い始めたもの。ロイエンタールに対しては、オーベルシュタインに対するものとは逆に肯定的な思い入れを優先させる傾向があり、ロイエンタールの叛逆の際には、それを伝えたバイエルラインに八つ当たりしたり、原因を作ったラングを私的に殺害しようとするなど感情的な面も表しているが、それらは概ね大多数の読者の価値観に添った言動である為、ミッターマイヤーに対する批判には繋がっていない。
ロイエンタールの叛乱時に、ミッターマイヤーはラインハルトより討伐の勅命を受けた。その際ラインハルトは二人のこれまでの友誼を考慮し、命令の拒否権を与えたが、ミッターマイヤーは自らの手で友人を討つことを選ぶ。それは、自らの手で討ったほうが、後にラインハルトを恨まずに済むと悟った苦渋の選択であった。そしてロイエンタールと戦う事になるが、彼との友情は最後まで失われることはなかった。
[編集] 家族
ローエングラム陣営では珍しい妻帯者。妻は遠縁の親戚にあたるエヴァンゼリン。愛妻家であり、ロイエンタールの死後、彼の息子をフェリックスと名付けて引き取ると同時に、ロイエンタールの近侍を務めていた少年兵ハインリッヒ・ランベルツの保護者となった。